「それは、少しではありません」 クラリスの声は、静かだった。 怒鳴ったわけではない。 責め立てたわけでもない。 ただ、事実を机の上へ置いた。 それだけで、ミレーヌは言葉を失った。 応接室に沈黙が落ちる。 窓の外では、庭の噴水が涼しげな音を立てていた。 けれど室内の空気は、まるで冬の朝のように張りつめている。 ジュリアス・ヴァレンティアは、不機嫌そうに眉を寄せた。 「クラリス。今は言葉遊びをしている場合ではない」 「言葉遊びではございません」 クラリスは、まっすぐ王太子を見た。 「ミレーヌが“少し”とおっしゃったものは、すべて王宮の実務でございます」
Last Updated : 2026-08-13 Read more