ローゼンの声は柔らかい。 それでいて、毒を含んでいる。 「王宮は、正しさだけでは回りません。誰かが黙って引き受けるから、場が丸く収まることもある。誰かが笑って損をするから、家門同士の衝突を避けられることもある」 「はい」 「その黙って引き受ける美徳まで、あなたは値段をつけるおつもり?」 クラリスは、カップを置いた。 小さな音が鳴る。 「美徳に値段をつけるつもりはございません」 「では?」 「労働に、名前をつけるつもりです」 ローゼンの扇が止まった。 クラリスは続ける。 「黙って引き受けた方がいたなら、その方が何を引き受けたのか。どれほどの時間を使い、どれほどの
Last Updated : 2026-08-19 Read more