自分のことだ、と思った者がいるのだろう。 「その頃、私も深く聞きませんでした。王宮で学べるのだから良いことだと思って」 ヴェルナーの声には、少し苦みがあった。 「でも今思えば、あの子が何を担っていたのか、誰も記録していなかった。だから、誰も多すぎるとは気づかなかったのです」 ローゼンは笑みを保っている。 だが、その笑みは少し薄い。 「ヴェルナー伯爵夫人は、若い方にずいぶんお優しいのね」 「そうかもしれません」 ヴェルナーは穏やかに答えた。 「身内を疲れさせて初めて気づいたのですから、優しいというより遅かっただけですわ」 その返しに、クラリスは少しだけ目を伏せた。
Last Updated : 2026-08-24 Read more