Alle Kapitel von 転生聖女の幸福譚~悪役令嬢を救うため、断罪劇で恋人宣言してしまいました~ : Kapitel 11 – Kapitel 20

34 Kapitel

死亡フラグかもしれない

あのあと私たちは、露店を覗いて、クレープを半分こして、流行りのお菓子を買って……ときおり、まるで本物の姉妹みたいに手をつないで歩いた。それがなんだか嬉しくて、気付けばもう夕方。まずい、寮の門限!と焦った私に、ローザ様はさらりと微笑んで言った。「ふふ、今日は我が家に泊まるのよ。学園の寮には、もう連絡してあるわ」そうして、両手いっぱいの戦利品を抱えて公爵家に戻ったのだった。「そういえば、ローザ様とジュリアン殿下って、幼馴染なんですよね」ふわふわのネグリジェに身を包み、ローザ様の広いベッドに横になりながら、ふと思いついて尋ねてみる。「あら、殿下から聞いたの?」「はい。以前、ローザ様が呼びに来てくださったときに」「ふふ、そうね。年も近いし、“ご学友”ってところかしら。 気づいたときには、よく王城で一緒に遊んでいたわ。 ……まぁ、婚約者候補の素行を見極める狙いもあったんでしょうけど」「婚約者候補……」その言葉に、私はどきりとした。「その……ローザ様は、王太子妃になりたいと、思っていらっしゃるんですか?」我ながらおかしな質問だった。けれどローザ様は、長いまつげをゆっくり瞬かせて、小さく首を傾げる。「そうねぇ……そこに私と殿下の意志が関係あるのかどうかを考えたことはあるけれど……実際にどうしたいのかは、あまり考えてこなかったわね」「ローザ様……」「ふふ、あなたも同じでしょ、聖女様?」「いえ。私は神殿のイベントも、学園行きも、できる限りのことをして拒みましたよ。無駄でしたけど」「ええ!? 本当に? やだ、リリィってば、真面目かと思ったら、意外とじゃじゃ馬だったのね」「……その言い方。ローザ様も、意外と破天荒ですよね」「うふふっ。そう言ってもらえて嬉しいわ」「嬉しいんですか?」「ええ。両親以外に、初めて言われたもの」「……殿下には言われたこと、ないんですか?」「あ、あったかもしれないわね。小さい頃は、今より自由に接していたし」「……殿下の片思い、か……」「ん? どうしたの、リリィ?」(……殿下は、私になんて見向きもしなかった。 ここからどうしたら、私とローザ様が“恋のライバル”になるっていうのよ?)ゲームでは、まずすべての攻略対象との個別イベントをこなしたあと、全員が私に好意を抱いた状態で“全員合同イベント”が発生する。
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-09-20
Mehr lesen

攻略対象者2 ライナー・ヴァン・アルデンと、死なない準備

 訓練後、選抜の発表があった。 もちろん、私は選ばれていた。ローザ様も一緒に。 (……まぁ、そうよね。嬉しいような、怖いような)  今回の訓練は、魔導理学科との合同演習。 いかなる外圧下でも防御膜を維持するための、実践的な応用訓練だ。 これが“あのイベント”につながるという確証はまだないけれど、 そのつもりで動かないと、命に関わる。  ゲームでは、火竜が暴走する中、私が必死に結界を張って耐えていると――  もう駄目だ、というそのときに、ライナーが現れて火竜を鎮圧するという流れだった。  彼はもしかしたら、演習の補助として駆り出されていたのかもしれない。 あるいは、騒ぎを聞きつけて駆けつけた、という展開も考えられる。 (……いずれにせよ、今回は私が“死なない”ように動かなくちゃ)   私は図書館にこもり、火竜に関する記録をあさり始めた。 (気性は荒く、怒りに任せて我を忘れ、主以外のすべてを焼き尽くす―― そんな恐ろしいもの、なんで授業に使うのよ) (え、ちょっと待って。熱風だけで屍の山って……!?) (自分より強いと認めた相手を“主”とする、か。 ……ゲーム内で火竜を鎮めたライナーは、まさか火竜に“主”と認められた?) (ともかく、問題は“気絶”よ。結界を張る前に意識を失ったら即アウト)  私は神殿で学ん
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-09-22
Mehr lesen

火竜イベント、確定

 それから数日、私は時間を見つけては、光の結界を試すようになった。  朝の訓練棟の裏手は空気が澄んでいて好きだ。 まだ誰もいない時間。 今日も何とか感覚を掴もうと、一人練習にいそしんでいる。  ……とはいっても、全く何の手がかりもないから、結局は防御膜の訓練になってしまっているけれど。  わかっている。 たぶん、イベント以外で結界を作れるようになることは、ない。 それでも、何かしていないと落ち着かないのだ。  せめて気持ちだけでも整えようと、静かな空間で魔力をゆっくり巡らせていた——  ……はずだった。  「またここか」  背後から声がして、思わず肩が跳ねる。 振り返らなくても分かる。少しだけ高めの声。 「ライ……アルデン先輩」 「聖女殿は朝から防御訓練か」 「はい。……ちょっと感覚を確かめておきたくて」 「お前、もう十分すぎるほどだろ。何を目指してんだ」  以前よりずいぶん砕けた口調。 その飾り気のない問いに、一瞬、言葉が詰まった。 (な、何を目指してって…… 生存……?) 「……いえ、まだまだ改善の余地があると思っているだけです」 「真面目だな」  そう言いなが
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-09-23
Mehr lesen

火竜の試練

(いや、まぁクラヴァール先輩の時も、ある意味原因はローザ様だったけどね!) 視線を感じたのか、ローザ様が振り返る。「どうしたの、リリィ。朝から真剣ね?」「ええ、今日は暑くなりそうだなと思って」「えぇ?なぁに、それ?」 できる限りの対策はした。 熱による気絶を少しでも防ぐための護符。 聖女の力は危機的状況でこそ発揮される。 この“ぎりぎり”のバランスを保って、なるべく覚醒の確率を上げるのが今日の目標だ。(絶対、死なない) ノートの端に「午後=確定」と書き込み、線を引いた。 それでようやく、心の準備が整った。 ◇ 午後、訓練場の門が開く。 空気が熱を帯び、焦げた匂いが漂ってくる。 封印の檻の向こうで、赤い鱗がわずかに光った。 これが――火竜。 封印されて動けないけれど、その内側で燃え続ける魔力炉のような存在だという。(ローザ様の“圧”みたいなものね。 抑えているのに、どうしても漏れ出してしまう感じ) 訓練場全体が張りつめていた。 中央の大きな封印陣の中で、火竜が鎖に繋がれたまま低く息を吐く。 そのたびに結界面が揺れ、空気がかすかに焦げる。「封印下とはいえ、竜の魔力は圧倒的だ。 呼吸ひとつで“圧”が変わる。 その揺れの中で防御を維持できるか―― それを確かめるのが本日の訓練だ」 講師の声が響き、生徒たちは順に前へ進んだ。(……やっぱり……“火竜暴走イベント”だわ) 竜を抑えている魔法陣が崩れ、火竜が暴れだす―― “原因”はローザリア・フォン・クロイツ。 ゲームでは、”彼女が封印の魔法陣に細工をした”とイベントの後に明らかになる。 それは、彼女が断罪される際の罪の一つだ。 もちろん、現実の彼女がそんなことをするとは思っていない。 思ってはいないけれど――イベントは、起こる。 何かが起きるのなら、そばで確かめないと。 私は彼女の一歩うしろに立ち、慎重に呼吸を合わせた。 この訓練の理屈は単純だ。 火竜の“圧”に耐えられる者だけが、前へ進める。 私は薄く防御膜を張り、息を整えた。 前列の生徒たちは数歩進んだだけで膝をつき、次々と下がっていく。(ここからが本番ね) ローザ様が歩を進める。 波のように強まる圧に合わせて、膜の形をわずかに揺らして受け流すその動きは、まるで圧の向きが“見えている”かの
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-09-25
Mehr lesen

火竜の試練②

 熱風が頬を切り裂き、視界が揺れた。 壊れた封印陣の中心で火竜が暴れ、鎖を引きちぎらんばかりに身を捩る。(……暴走してる……!) 次の瞬間、咆哮が訓練場を裂き、 教師たちが張った結界は、触れた途端に焼け落ちた。「え……!??」(ゲームより激しい!?) ――おかしい。 ゲームでは、こんな序盤に教師の結界は崩れなかった。 炎が四方に散り、逃げ道が一瞬で塞がれる。 焦げた匂いが広がり、生徒たちの叫びがあちこちで上がった。(火竜が完全に我を忘れてる……! ローザ様が、怒らせたから!?) 逃げ場のない訓練場。 純粋な光の結界以外は竜の炎の前には焼き尽くされてしまう。 分かってる。 ここでそれができるのは、私だけ。 でも、まさかこんなに切羽詰まった状況だなんて。(早く……!早く結界を張らないと……!!) 焦れば焦るほど体の奥で魔力がうずき、制御がきかない。 何度も練習したというのに糸口すらつかめなかった結界。 こんな状況でもなお、発動の気配すらない。 降りかかる火の粉で、私の金の髪から焦げたにおいがする。 けれどそんなことに構っている暇がないくらい、私は焦っていた。 ゲームでは、命の危機が訪れて――ようやく結界が発動する。(それじゃ、遅いわ!) 自分が死にたくない、苦しみたくないってことばかり考えていたけど、違う。 逃げ惑う生徒たちを目の端に捉えながら、肌が焼ける感覚に歯を食いしばった。(みんな――みんな、無事でいて!!) 火の粉で制服が焦げる。 熱と恐怖で息がうまく吸えない。 助けを求める生徒たちの声が、耳の奥で反響する。(お願い…
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-09-28
Mehr lesen

騎士との恋愛イベントも、一応回収されました

 医務室に着いた途端、血相を変えた教師達に医療棟送りにされた私達は、検査やら治療やら事情聴取やらを受け―― ようやく落ち着いてベッドに腰を下ろせた。 ――ふと思い出して袖から護符を取り出してみる。「あら、それ、もしかして冷却魔法?」 ローザ様が覗き込んで尋ねた。「あ、はい、そうなんです、火竜が少し怖くて……」「ふふ、持っていて良かったわね。 それがあったから、火竜の炎に耐えられたのね」「え……?」「私も自分にかかる熱気は闇魔法で逃してたんだけど。それでもこのありさまよ」 ……確かに、そうだ。 あまりに必死で気づかなかったけれど、準備していたことが役に立っていたんだ。「……ん?待ってローザ様、結構火竜に近づいてましたよね?」 あれだけの熱を何処に……と疑問に思ったその時。『ぎゃー!!噴水が沸騰してる!!!』 ……外から悲鳴が聞こえた。(え、まさか……) ローザ様をまじまじと見つめてしまう。 ローザ様は悪戯っぽく目を細めた。「うふふ、内緒にしておいてね?あと、クラヴァ―ル先輩にはしっかりお礼をしておいたほうがいいわよ?」 どこから突っ込んでいいのかわからないけれど、 もしかしたら、いやもしかしなくても、クラヴァ―ル先輩は命の恩人のようだ。「あ、あと、アルデン先輩にもついでに」(ついでかい!) 正直声を出す元気もなかったので、心の中でだけ突っ込んでおいた。 ――あんなに火竜が暴れまわったというのに、大きなケガをした生徒はほとんどいなかったらしい。私も自己治癒力が強いので、ひと眠りすればほとんど回復するだろう。 とは言え大量の魔力を消費した私とローザ様は、午後の授業は全て休んで医療棟
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-10-01
Mehr lesen

【番外編】下位互換イベントと手合わせ(ローザ視点)

 昼下がりの廊下。 書類に目を通していると、やけにざわめきが大きくなる。「聖女様が……!」「騎士様が抱き上げて……!」 なにそれ、どういう状況?(……今度は何をやらかしたのかしら?) この学園に来てからというもの、あの子のまわりだけ現象の密度が高い。 火竜の暴走もそうだった。 まぁ、引き起こしたのは私なんだけど。(あの時は、本当によくやったわ。 光は、扱うのが難しいのよ。 なのに、ちょっとコツを掴んだら、すぐに結界をあんな規模で展開してしまうなんて) ――その光の軌跡を、私はまだ掌に覚えている。 光は扱えない私にとって、それは――少し、感動的ですらあった。(光以外の属性は全部あるのに、ね) 噂の出所をたどって中庭を抜けると、医務室の前に人だかりができていた。(……見に行く気はなかったのに) 扉のすき間から覗くと、彼女がベッドに座って頬を真っ赤にしている。 その隣には、あの騎士――ライナー・ヴァン・アルデン。 あの真面目さで、また全力で何かしたのだろう。 たぶん彼も、リリエルと同じ、”この世界の特別な人”だ。(でもきっと、リリエルが主人公で、彼は……なんだろう?リリエルほどには特別じゃない気がするわ)「……どうしてあそこにいるのが私じゃないのかしら」 誰にともなくそう呟いて、静かに踵を返す。 怒っているわけじゃない。 ただ、胸の奥に言葉にならないもやが残る。 わかってる。 私の”特別”は、たぶん、彼らとは違う種類だ。 窓の外、夕陽が校舎を照らす。(……まあいいわ。いざというときにリリィの力になれるのは、私よね) 書類を抱え直し
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-10-02
Mehr lesen

楽しい休暇の予感

「そういえば、リリィは休暇はどうするの?」 ――フォークの先で触れただけで崩れるチョコレートケーキが、舌の上で静かに溶けていく。 その甘さの余韻にうっとりしていた私に、ローザ様が問いかけてきた。「あぁ、えっと……」 学園はもうすぐ冬期休暇だ。 二週間近い休みに入るため、寮も閉鎖される。 ほとんどの生徒は実家へ戻る……はずなのだけれど。「ご実家は遠いだろう? 年末の光継祭のこともあるから、王家に滞在しないかと誘っているのだが」 隣でジュリアン殿下が、カップの縁に軽く口を寄せた。 何気ない動作なのに、不思議と場が整えられる。 ――そう。 なんと私は今、ジュリアン殿下の私室でティータイムを楽しんでいる。 発端は、ローザ様とライナーの手合わせ。 闇魔法を駆使してライナーを圧倒したローザ様は「あなたたち、見てしまいましたわね?」 なんて悪役さながらに笑いながら、お茶会に誘ってきたのだ。「とっておきのスイーツをご馳走するから黙っておくように」とのことらしい。 まったく、私が言いふらすなんて微塵も思ってもいないでしょうに――(可愛い人なのよね。ギャップ萌えってこういうことを言うのかしら) そして「私にも声をかけてくれるなんて嬉しいな。しかしご令嬢の私室に入るわけにはいかないから、私の応接室でどうだろう?」という、これまた本当に嬉しそうな殿下の提案により、今に至る。 ローザ様が用意した宝石みたいなケーキに、ジュリアン殿下が用意した「王室とっておき」の香り高いお茶 は、一口で緊張を塗り替えてしまうほどの味わいで。 最初はケーキどころではなかったのに、口の中でほどけた瞬間、全てがどうでもよくなった。 ――うん、権力ってすごい。 それ以上に、私の順応力もだいぶすごい。「あら、リリィ、王家に滞在するのは嫌なの?」 興味深そうに私を覗き込んで言うローザ様
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-10-03
Mehr lesen

いざ、クロイツ領へ

 出発の日―― 朝早く、日が昇る前に公爵家の馬車に乗り込んだ。 王都から馬車で8時間ほどのクロイツ領。 さすがに疲れるだろうなと思っていたけれど、さすがというかなんというか、馬車にも魔法がかけられていて、すこぶる乗り心地が良い。 途中、お昼を食べるために小さな街へ寄ったきりで、 あとはひたすら南へと走る。「さっきのパン、美味しかったなぁ……」 どこまでも同じ景色が続く平地を眺めながら、思わずそんな独り言がこぼれた。「あら、お昼のサンドイッチ、気に入った?」「はい……!パンの香りがすごく良くて……」「あれはクロイツ小麦のパンよ。 王都にも卸しているから、旅の途中でも手に入るの」「へぇぇ…… あれ?でも、王都では食べたことが無いような……」「学園ではなかなか出ないわねぇ。 でも、王宮でもクロイツ小麦を使っているのよ」「そうなんですか!じゃあジュリアン殿下も クロイツ小麦で育ってるんですね!」「ふふ、そうね。 というか、殿下が気に入られたから、 王宮で使われるようになったのよね。 クロイツ領の海の香りがするんですって」「ふぁぁ…… 殿下、詩人ですねぇ……」「クロイツ領は海風が適度に乾燥していて、小麦がよく育つの。 領地に近づくほど香りが強くなってきて…… 私もあの香りが好きなのよ」 そう言ってローザ様は懐かし気に目を細める。(殿下とローザ様は、同じ香りが好きなのね) そう考えるとなんだか微笑ましくて―― 潮の気配を探すように、そっと、空気を吸い込んだ。  ――海沿いの街道を進み、気づけばクロイツ領の境を越えて
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-10-05
Mehr lesen

熱の行く先

 次の日の朝。  噂のパンケーキを食べたあと、馬車で保養地にやってきた。 湯気があちこちで立ちのぼり、岩場の間を小道がのびている。かすかに硫黄が混じった風が、ちょっと懐かしい。  “温泉”は、私の知っているものとは少し違った。 ごつごつした岩場に溜まった湯が、  赤 → 金 → 青のグラデーションに色づき、  表面では小さな気泡がぽこぽこと弾けている。「うわぁ……なんて幻想的なの」 小さな色温泉が点々と続き、湯気で揺らめくその光景は、まるで別世界だ。「ふふ、不思議でしょう?  このあたりはこういう高温の泉が多いの。  浸かるなら下の湯治場のほうね」 ローザ様が言ったそばから、しゅわっ!っと横で小さな温泉が勢いよく湧き上がり、思わず跳ねた。「わぁあっ!?」「ふふ、間欠泉ね。ここでは日常よ」 観光客でにぎわう遊歩道には、間欠泉を待ち構える子供たちの声が響いていて、なんだか微笑ましい。「ん? あれは……?」 泉の脇に、大きな何かが打ち上げられている。(え……骨……よね?)「ああ、鹿ね。時々落ちてしまう子がいるみたい」「……げっ、そんなに熱いんですか」「ええ。温泉によっては、落ちたら数分で死に至るみたいよ。  人間は落ちてないから安心して?」 それは……安心していいのだろうか。   一応柵はあるものの、そんなに厳重なものとも思えない。  「昨日新しく湧き出たという温泉もこの辺りのはずなんだけど……」 ローザ様が周囲を見回しながら歩いていた、その時だった。 ぽつ、ぽつ、と微かな音が岩場の奥から立ち昇る。  さっきまで静かだった一角が、脈を打つようにふくらんだ。「ん? ローザ様、あれ……」「……ええ、少し活発ね」 落ち着いたローザ様の声とは対照的に、  周囲の観光客がざわつき始める。「見て! あそ
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-10-06
Mehr lesen
ZURÜCK
1234
CODE SCANNEN, UM IN DER APP ZU LESEN
DMCA.com Protection Status