土曜日の午後、私は焼き菓子を六種類も皿に並べてから、さすがに少し張り切りすぎたと気づいた。 紅茶のサブレに、焦がしバターのフィナンシェ。薄く切ったレモンケーキと、小さなマドレーヌ。そこまではよかったのに、甘いものばかりでは飽きるかもしれないとチーズのクッキーを足し、最後に、自分が食べたかったという理由だけでチョコレートのパウンドケーキまで加えてしまった。 母の店で選んでいるときは、どれも少しずつに見えたのだ。ところが家の皿に移した途端、それぞれが急に存在感を主張し始めた。 風邪はすっかりよくなり、木曜日から学校にも戻っている。食欲も元どおりだとはいえ、これは回復の証拠としては度が過ぎている気がした。「……何人来るんだ?」 リビングの入り口で足を止めた怜央さんが、テーブルと私を交互に見た。 制服ではなく、薄い灰色のシャツに黒いパンツという格好だった。家では何度も見ているはずなのに、わざわざお茶に誘ったせいで、今日は来客を迎えたような気分になる。そのくせ彼はこの家の住人なので、私が出し忘れたコースターを迷いなく棚から取り出した。「二人だけですけど。何か問題でも?」「問題というか、俺の知らないところで美月さんたちの分も用意したのかと思って。二人とも夕方まで戻らないだろう」「全部食べなきゃいけないわけじゃないから。好きなのを選べるようにしただけ」「それなら、袋のまま残しておいてもよかったんじゃないか」 正論だったので、私はポットの蓋を直すふりをした。 看病のお礼にお茶をいれる。それだけの約束だったはずなのに、いざ準備を始めると、少ないと思われたくないし、好みに合わないものばかりでも嫌だった。迷ったものを全部買った結果が、この小さな菓子売り場である。「怜央さんが何を好きなのか、よく分からなかったんだもん。甘いものは食べるけど、自分から選んでるところ、あんまり見たことなかったし」 彼は皿に目を落とし、今度はひとつずつ確かめるように眺めた。「それで、これだけ選んだのか」「言い方に気をつけて。いま私、自分でも少し反省してるから」「いや。ありがとう」
ปรับปรุงล่าสุด : 2026-10-07 อ่านเพิ่มเติม