人生最後の春になるかもしれないその時期、私は長谷川瑛太(はせがわ えいた)と頻繁に会うようになっていた。彼こそが、龍臣が私のためにあてがった相手だったからだ。それを受け入れさえすれば、せめて私が彼にとっての「正すべき過ち」ではなくなったことの証明になるかもしれない、と。その夜、龍臣は数週間ぶりに邸宅へ帰ってきた。書斎の暖炉の前に立ち、黒いシャツの袖を肘まで捲り上げた彼は、火のついていない葉巻を指先で弄んでいた。私に対して徹底して冷淡になったこの半年間でさえ、私の前では決して煙を吐かないというその習慣だけは変わっていなかった。「長谷川との交際はどうだ?」私を見ようともせず、龍臣が口を開いた。「何回会った?」「4回よ」「プロポーズはされたか?」私は思わず笑いそうになった。瑛太は私の秘密を守ってくれている友人に過ぎず、求婚者などではない。彼とは手すら繋いだことがないのだから。それでも、龍臣の声はひどく淡々としていて、まるで大型プロジェクトの最終確認でもしているかのようだった。「……もうすぐ、されるかもね」葉巻を弄んでいた龍臣の指が、ピタリと止まった。数ヶ月ぶりのまともな会話をここで終わらせたくなくて、私はかつて思い描いていた結婚式の情景を語り始めた。「もし式を挙げるなら、ガラス張りの天井から冬のアネモネをたくさん吊るしてほしいな。ダイヤも純白じゃなくて、蜂蜜色のオーバルカットがいい。式の後は、派手な演出なんていらない。古いブルーのオープンカーに乗って、海沿いをずっと走っていくの」細部を語れば語るほど、彼の表情はみるみる険しくなっていった。「……もういい。お前が自立した人生を歩む気になったのなら、それで十分だ」彼は葉巻をケースに投げ入れた。まるで、全身の力を振り絞らなければ、次の一言を口にできないとでもいうように。「ご両親はお前を俺に託した。俺は後見人だったんだ、結衣。その事実が消えることはない。この家には、いつでもお前の部屋を残しておくからな」私はドアの傍らに積まれた2つのダンボール箱に目をやった。服や本、両親が遺してくれた写真の数々は、すでに海外の脳神経腫瘍センターがある国へと発送済みだった。ここを発つことが誰にも気づかれないよう、部屋にはカモフラージュとして私物を少し残してあるだけだ。「部
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