傷だらけの再会結婚三年目、私のボディガードを務める佐藤健人(さとう けんと)が、雨の中で私に傘を差しかける動画がバズった。
ネット上では瞬く間に、「クールな護衛」と「ツンデレお嬢様」というカップリングが尊いと祭り上げられた。
ネット特定班の執念は凄まじく、私の十年前の動画まで掘り起こされてしまった。
動画の中の私はハイヒールをぶら下げ、なりふり構わずD国の空港を疾走している。
友人の森田千雪(もりた ちゆき)が冷やかす。「嘘でしょ、結衣(ゆい)。本当に帰国してあの貧乏人に告白する気?あいつのどこがいいのよ」
手ブレの激しい映像には、私のあどけない顔が映り、その目元や眉間には二十歳の頃特有の無鉄砲さが溢れていた。
「健人が好きなの。彼は、私の愛全てを捧げる価値がある人よ」
その夜、動画を見た健人が錯乱状態で私の部屋に押し入ってきた。
「君が僕を愛していたなんて……僕はてっきり……いや、僕たちはこんな結末になるはずじゃなかった……」
私は上着を羽織り、その場に立ち尽くしたまま何も言わない。
その時、背後から嘲るような笑い声が響き、熱を帯びた手のひらが私の腰を強く掴んだ。
「佐藤さん。俺の目の前で、俺の妻と昔話に花を咲かせるなんて……俺が死んでると思ってんのか?」