時を歪めた男と運命を変えた女私の夫は世界トップクラスの科学者で、私はただの平凡な主婦だ。
その日、彼が十年の歳月を費やして研究してきたタイムマシンが、ついに成功した。
彼は息子を連れて過去へ戻り、若くして亡くなった初恋の人のもとへ向かうという。
出発前、息子は私に白い目を向けて言った。「ママなんてただの家政婦だよ。パパに見合うのは晴海さんだけよ」
夫は冷たく言い放った。「深水知夏(ふかみ ちなつ)、僕は二度と戻らない。この家も寄付した。早く出て行ってくれ」
私は鼻で笑った。「あんたたち、後悔しないでね」
私はこっそり二人のあとを追って実験室へ向かった。機械が作動する最後の瞬間、光に向かって手を伸ばした。
父子は知る由もない。この十年間、私が待ちわびていたのはまさにこの瞬間だということを!