八年の結婚、儚く散っていく結婚八周年の記念日に、夫が子犬を一匹贈ってきた。
しかし、ICUから出てきた私は、彼に離婚協議書を差し出した。
夫の愛人は私の手を握りしめ、涙ながらに訴えた。
「紀藤夫人、全部私が勝手にしたことなんです。どうかこんな些細なことで紀藤社長に怒らないでください……」
夫は優しく彼女の涙を拭いながらも、私に眉をひそめた。
「わがままを言うな。君はもう三十歳だ。若い娘と張り合ってどうする」
目の前で寄り添う二人を見て、私は黙って背を向け、海外行きの飛行機に乗った。
──再び紀藤航(きとう わたる)と顔を合わせたのは、一か月後のことだった。