最近読んだ中で一番胸に刺さったのは、'Seiken no World Break'の雪菜とアレクを扱った『白い忘却の底で』という作品だ。記憶を失いながらもアレクの存在だけを無意識に求める雪菜の描写が、切なさと希望の間で揺れる。作者は過去の断片を繋ぎながら、二人の絆が記憶を超えたところにあることを丁寧に描いていた。特にアレクが雪菜の記憶が戻らない可能性を受け入れる場面では、諦めではなく『新しい愛』を選択する姿勢に涙が止まらなかった。戦闘シーンと静かな情感の対比も秀逸で、同作の世界観を深堀りしながらオリジナルの恋愛テーマを昇華させていた。
150語以上の長編だったが、一気に読み切ってしまった。記憶喪失ものによくある安易な解決策を回避し、キャラクター本来の強さを活かしたラストが特に印象的だった。雪菜が剣を握る指に宿る『肌の記憶』や、アレクの防具に刻まれた彼女の傷跡といった細部のモチーフが、全体を通して見事に回収されていた。ファンフィクションでありながら、原作のテーマである『前世と現世の絆』をさらに発展させた傑作だ。