地図を広げて考えると、
ミツハシの物語が描く重要な場所はいくつもの層を持っていて、それぞれが物語の機能を分担していることが見えてくる。
僕がまず注目するのは沿岸の港湾地域だ。ここは交易と情報のハブであり、登場人物たちの出会いや別れ、新しい価値観の衝突が起こる舞台になっている。海と陸の交差点としてのダイナミズムが、物語の外向きな動機付けを生み、主人公の旅立ちや他地域との対立に説得力を与えている。
次に内陸の王都や行政中心地が物語の政治的・社会的な重心を担っている。権力構造や法、世論といった要素はここで可視化され、登場人物の選択が物語全体に波及する。最後に山岳地帯や古代の遺跡のような場所が精神的な核となっていて、過去の秘密や血縁、個人の成長に直結する謎や試練を提供している。こうした地域分けを意識すると、舞台装置としての地理がストーリーをどう支えているかがよく分かる。参考までに、風景描写の迫力が物語に深みを与える点では、'風の谷のナウシカ'の地域表現が思い起こされるけれど、ミツハシは交易・政治・聖域が互いに作用し合う構造が巧みだと感じる。