登場人物の心の奥を掘るとき、まず大切なのは決して単純化しないことだ。
下衆に見える行為をただ非難で塗り潰すのではなく、その行為が生まれる背景や瞬間的な衝動を描くことで、読者の同情を引き出せる。私はよく'ブレイキング・バッド'のウォルター・ホワイトを思い出す。彼の
利己的で残酷な選択は非難に値するが、同時に恐怖や絶望、家族への執着が細やかに積み重なっている。作家はこうした積み重ねを小さな決断の連続として見せ、読者に「もし自分だったら」と考えさせる余地を与える。
また、言葉遣いや細かい後悔の描写も有効だ。下衆な行為の直後に見せる微かな動揺、罪悪感の兆候、過去の失敗に由来するトラウマが断片的に差し挟まれると、人間らしさが滲む。私はこうしたレイヤーを重ねることで、完全な悪役ではなく、壊れやすい人間として読者が共鳴できると感じる。結局、共感は行為そのものではなく、その行為を生む内面を理解することで生まれるのだと考えている。