割と早い段階で気づいたことがある。
寝取りを扱う題材は、読者の感情を強く引っ張れる一方で、扱いを誤ると単純な刺激に堕してしまう危険がある。物語の倫理観を考えるなら、まず当事者の主体性と同意の有無を厳密に扱うべきだと感じる。行為そのものを描くときには、登場人物の動機や背景を丁寧に描き込み、誰が何を守ろうとしているのか、どのような代償を払うのかを見せることが重要だ。
私が物語を書き進めるときは、被害者、加害者、第三者という立場それぞれに時間を割く。こうすることで単なる悪役と善人の二元論に陥らず、読者がキャラクターの選択を理解しやすくなる。例えば古典の一例である'危険な関係'のように、操る側の遊戯性と壊される側の痛みを同時に示すと、倫理が単純な裁定で済まなくなる。
最後に、結末の扱い方も倫理表現には直結する。行為の結果に対する責任を軽視せず、和解や
懺悔、あるいはその不可能性までを描くことで、物語は読者に考える余地を与える。単なる快楽描写に走らず、痛みと選択の重みを丁寧に描くことが、寝取りというテーマを倫理的に扱う鍵だと思う。