媒体の特性上、原作小説と漫画ではストーリーの消化速度に大きな差がある。『狼と香辛料』を読むとき、小説では経済理論の説明に数ページを費やせるが、漫画では図解や比喩で簡潔にまとめる必要がある。逆にアクションシーンは漫画の方が圧倒的に伝わりやすい。
キャラクター造形のアプローチも対照的だ。小説は内面描写に長け、『ようこそ
実力至上主義の教室へ』の綾小路の思考プロセスは文章だからこそ深く追体験できる。漫画は外見的特徴や仕草で個性を表現し、『SPY×FAMILY』のアーニャの表情の豊かさは絵ならではの強みだ。
改編時の取捨選択も興味深いポイント。小説のエピソードを漫画化する際、どうしても割愛される描写が出てくるが、逆にビジュアル化によって新たな発見が生まれることも多い。