意外とシンプルな視覚表現が強烈に効くことに気づいたことがある。描写の焦点を“身体の線”に絞ると、ただ立っているだけの場面が象徴性を帯びる。
例えば、視界に映る肩幅や肩の傾き、足の位置を細かく描く。影が映す輪郭や、靴底と地面の接触の描写で重みを伝える。服の襟が風で張る、ボタンがきしむといった小さな動きを添えれば、静止している“存在感”が増す。私はこうした細部を繋いで、読者の頭に一枚の絵を焼き付ける手法を好む。
比喩を重ねるのも有効だ。たとえば巨木の幹や城壁に喩えて“不動”を示すと、人物の立ち方が単なる姿勢を超えて象徴的に響く。『風の谷のナウシカ』のある場面のように、自然や背景との対比を使えば、
仁王立ちが物語上の主張に変わる。最後は視点人物の反応文を短く挟んで、圧の強さを余韻として残すのが自分の常套手段だ。