物語を分解する癖がある僕は、寝取りものを評価する際に体系的なチェックリストを作っている。まず第一に『描写の目的』。寝取りが単なるショック効果やフェティシズムに終始していないか、あるいは関係性の崩壊や欲望の複雑さを語るための必然性があるかを見極める。次に『合意と力関係』。登場人物同士の同意の有無、社会的・経済的な力の差、強制性の有無は倫理的評価に直結する。
続いて『感情の透明性』を重視する。キャラクターがなぜそう振る舞うのか、心の動きが丁寧に描かれているか。ここが薄いと単なる刺激描写になってしまう。描写技法も無視できない要素で、視点の取り方、語り手の信頼性、時間操作(フラッシュバックや回想)の使い方が作品の受け止め方を大きく左右する。
最後に文化的文脈と責任について考える。寝取りが描かれる背景には時代や社会の性倫理観が反映されるので、それらを踏まえた解釈が必要だ。『クズの
本懐』のような作品では、個々の欲望と社会的規範のずれが主題に結びついており、その読み取りの深さが批評の価値を決める。こうした複数の観点を掛け合わせて、公平で説得力のある評価を心がけている。