通りすがりのさよなら小山湊(こやま みなと)の車の後部座席に、白いストッキングが落ちていた。それは、彼の部下の陣内直美(じんない なおみ)のものだと、すぐにわかった。
湊がバックミラー越しに、ちらりと私のことを見た。
「昨日はどしゃ降りだっただろ。残業してた部下を二人、家まで送ったんだ。二人とも全身ずぶぬれで、だから……」
「信じてるよ」
私は湊の言葉をさえぎった。
この色のストッキングは、直美のお気に入りだ。
直美と湊があまりに親密なせいで、私はこれまで何度も泣いて、ケンカをくり返してきた。ついには、「死ぬ」とまで言って、彼を追い詰めたこともある。
最終的に湊が折れてくれて、両家の親の前で誓ったのだ。もう二度と、直美とは個人的に会わない、と。