研究者の間では起源について多様な議論が飛び交っている。文献学的には、テキストの直接的証拠としては'At the Mountains of Madness'に描かれる生みの親たち、つまり古き者たち(Elder Things)が
ショゴスを設計・培養したという説明がもっとも明確だと考えられている。そこではショゴスは可塑的な原形質(protoplasm)で構成され、労働や建築といった目的で用いられたとされるが、やがて反乱し自律化するという筋立てが示される。
一方で比較文学や文化史の研究は、ショゴスの起源解釈を拡張する。進化論や細菌学の知見が当時の想像力に与えた影響、すなわち「生命の基礎物質」が操作・増殖される恐怖が反映されていると論じられることが多い。技術による大量生産や労働力管理への不安、そして人間が作り出したものが制御不能になるというフランケンシュタイン的モチーフも絡む。
私はこうした多層的な読みを面白いと思う。単に「作られた怪物」という一義に留めず、科学史・社会史・神話学の窓を通して起源像を並べることで、ショゴスという存在の怖さと示唆の深さが際立つからだ。