子どもの頃に見た伝承本の頁をめくる感覚を思い出す。僕は開発者の発言を読んで、なるほどと膝を打った。
ガシャドクロのデザイン元ネタは、まさに日本の妖怪『がしゃどくろ』そのものだという点を公式に認めているからだ。伝承のがしゃどくろは巨大な人骨の塊で、飢饉や戦で亡くなった者たちの怨念が集まって生まれたとされる存在で、開発側はその“集積された骨のイメージ”と“不気味さの中にある圧迫感”をデザインに落とし込んだと語っている。
僕が面白いと感じたのは、単に伝説をなぞっただけではないところだ。発言の中で開発チームは、古典絵巻や埴輪の素朴な造形、さらに骸骨を描く江戸期の表現──たとえば『百鬼夜行絵巻』のような作品に見られる夥しい群れの表現法──からも着想を得たと明かしている。これが、ガシャドクロのフォルムにおける“重なり”や“多数感”を説明してくれる。単体の骸骨ではなく、骨が寄り集まって一体を作るというコンセプトは、まさに元ネタの妖怪観を現代的に解釈した結果だと僕は思う。
最後に、自分の目で見たときの印象について一言。骨のテクスチャや動きに宿る“遅さ”と“重さ”は、開発者が意図した通り伝承の恐ろしさを残しつつもゲーム的な魅力に昇華されている。そういう意味で、ルーツの尊重と新しい表現のバランスがうまく取れているデザインだと感じた。妖怪の元ネタがわかると、細部の演出ひとつひとつがもっと愛おしくなるんだよね。