制作でしばしば向き合うのは、
呆けの“質感”をどう音に落とし込むかということだ。まず最初にやるのは、音の輪郭を曖昧にすること。例えば高域をゆっくりローリングオフしていったり、ピッチに微細な揺らぎを与えて安定感を削ぐ。これだけで聴き手の注意は常に少し外れ、ぼんやりとした感覚が生まれる。
次に使うのは“余白”と“間”のコントロールだ。鍵盤やパッドの音を短く切って余韻を残したり、逆再生や遅延を重ねて時間軸を曖昧にすると、思考の断片が飛び飛びになる印象を作れる。リバーブはただ広げるだけでなく、微妙に変化するプリディレイやフィルターの自動化で意図的に焦点をぼかす。
参考にする作品は、たとえばゲームの'信じられないほど静かな空気感'を持つことが多い'ヘルメットのようなサウンド'を生み出した'タイトなサウンドトラック'(例として'先行作品'を想起するが)だ。集音素材は日常音を低域で潰したり、アナログ機材のノイズを混ぜると人間の記憶の曖昧さに寄り添いやすい。最終的には、聴く人が自分の記憶や想像で補完していける余地を残すことが大事だと感じている。