月のように、風のように
私は高橋誠(たかばし まこと)と3年間、密かに付き合っていた。
会社ではただの上下関係だったが、家に帰ると彼は私を激しく弄んだ。
ある日、彼がなにやら嬉しそうに結婚の手続きをネットで調べているのを見つけた。私も、もうすぐ夫婦になれるんだ、と期待に胸を膨らませていた。なのに、彼が若い女の子を車に乗せて、市役所に入っていくのを目撃してしまった。
「もう籍も入れたんだし、ちゃんとけじめつけないとね」
「そうだな。まあ、でも彼女を俺のそばに置いておくのも悪くはないが!」
皆が笑顔の中、私は涙が溢れ出て、幼馴染に電話をかけた。
「私のこと、お嫁さんにしてくれるって言ったじゃない?」
その後、誠が結婚した日は、私が結婚した日でもあった。
私と桜井佑樹(さくらい ゆうき)の結婚写真を見て、誠は目を赤くした。式場で彼の妻を放り出し、車で私を迎えに来たのだ。
でも、残念。私はもう新婚の夫と甘い夜を過ごしてたんだから。