愛で縛り付けないで
村上和子(むらかみ かずこ)と千葉裕司(ちば ゆうじ)が結婚して五年目、彼女は白血病を発症した。
裕司は法外な金額を提示して骨髄ドナーを説得し、ようやく面会にこぎつけた。
だが相手は裕司を見るなり一目惚れし、約束を翻した。
金銭に加え、三ヶ月間恋人関係になることを要求してきた。
裕司は和子を救うため、やむなく条件を受け入れた。
三ヶ月間で98回もデートを重ねた。
毎回デートが終わると、裕司は病床の和子の前にひざまずき、手を握って誓った。「あの女とはただの演技だ。和子、俺が一生愛してるのはお前だけだ」
しかし99回目のデートの日、和子の元に裕司とその女の露骨なベッド写真が届いた。
写真の中で二人は裸で抱き合い、裕司の顔には情欲が溢れていた。彼女がずっと見かけなかった表情だった。