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冬の偽り、春の息吹

冬の偽り、春の息吹

By:  るるCompleted
Language: Japanese
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周防京介という親友の兄と、相川詩織は秘密の恋愛関係を7年続けてきた。 彼が近々政略結婚を控えるという噂が駆け巡っていたが、結婚相手は詩織ではなかった。 詩織が急いで京介がいるはずの個室へ駆けつけ、まさにドアを開けようとした瞬間、彼の親友の声が聞こえてきた。 「京介、これで念願叶ったんだな。ついに本命が帰ってきて、両家もこの政略結婚を後押ししてるんだからな。 今日がお前にとって最高の日だろう。あの身代わりの女って、そろそろ捨てる頃合いだろ。 お前も大概ひどい男だよな、代わりを見つけるために、妹の親友にまで手を出すなんて......」

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Chapter 1

第1話

周防京介(すおう きょうすけ)という親友の兄と、相川詩織(あいかわ しおり)は秘密の恋愛関係を7年続けてきた。

彼が近々政略結婚を控えるという噂が駆け巡っていたが、結婚相手は詩織ではなかった。

詩織が急いで京介がいるはずの個室へ駆けつけ、まさにドアを開けようとした瞬間、彼の親友の声が聞こえてきた。

「京介、これで念願が叶ったんだな。ついに本命が帰ってきて、両家もこの政略結婚を後押ししてるんだからな。

今日がお前にとって最高の日だろう。あの身代わりの女って、そろそろ捨てる頃合いだろ。

お前も大概ひどい男だよな、代わりを見つけるために、妹の親友にまで手を出すなんて......」

その言葉を耳にした途端、詩織は全身がこわばり、まるで頭から冷水を浴びせられたようだった。

ドア越しでは彼の表情は見えないが、声に滲むそっけなさははっきりと聞き取れた。

「まあ、待ってやれ。あの子は俺にベタ惚れで、俺なしじゃいられないんだ。

真相を素直に打ち明けたら、ショックで泣き崩れるだろうからな。

もう少し時間を置いてからにするさ」

二人は七年間、人目を忍んで付き合ってきた。彼は詩織を溺愛し、大切にしてくれたが、ただ一つ、関係を公にすることだけは頑なに拒んだ。

最初、彼は笑ってこう言った。

「詩織、待ってくれ。妹の美緒(みお)に親友に手を出したって知られたら、殺されるぞ」

その後、詩織が大学を卒業し、彼の秘書になると、彼はまた言った。

「詩織、もう少し待ってほしい。社内恋愛は何かと都合が悪い。君にあらぬ噂を立てられたくないんだ」

彼女はその言い訳をことごとく信じてきた。そして、京介の秘密の彼女として、長年日陰の存在であったのだ。

しかし今、自分の耳で本当の理由を聞いてしまったのだ。公にしなかったのは、それらとは全く関係がなかった。

それは単に、彼が一度も彼女を好きではなかったから。

それは単に、最初から彼は彼女を身代わりとして見ていたから。

中の人が出てくる気配を察し、彼女はよろめきながら走り去り、慌ててその場を後にした。

別荘に駆け戻った詩織は京介の「秘密の部屋」へと向かった。

そこは以前、彼女がどんなに甘えても、好奇心を示しても、彼が決して入室を許さなかった部屋だった。

今、彼女はその部屋のドアを勢いよく押し開けた。

机の上には、数十冊のアルバムが置かれていた。彼女は歩み寄り、手に取ってページをめくると、そこにはすべて、一人の女性の写真が収められていた。

顔立ちは彼女と七、八分通り似ているが、彼女ではなかった。

おそらく、彼の「本命」、そして間もなく彼と結婚する望月グループの令嬢、望月清華(もちづき せいか)なのだろう。

引き出しの中には、分厚い航空券の束が入っていた。その数、実に千枚以上。

航空券の日付を確かめると、衝撃的な事実が明らかになった。京介が詩織と一緒にいたこの七年間、ほぼ毎週海外へ飛んでいたことを。

誰に会いに行っていたのかは、考えるまでもない。

彼女の立ち入りを禁じた部屋には、なんと、京介が別の女性に捧げる愛が満ち溢れていたのだ。

詩織の目は赤くなり、涙が溢れそうになった。しばらくして、彼女は自嘲気味に笑った。

自分の愚かさを、間抜けさを、そして何よりも、この茶番を笑った。

七年間の愛は、最初から最後まで、ただのまやかしに過ぎなかったのだ。

その時、突然携帯電話の着信音が鳴った。父親からの電話だった。

「詩織、例の政略結婚の話はどうなってる?

大学に入ってからずっとそちらへ行ったきりだし……

彼氏がいるのは父さんも知っているが、もう何年も経つだろう?

だというのに、一度も連れて来てくれなかった。

父さんが選んだ相手は、本当にいい人なんだぞ……」

父はいつものように、くどくどと説得を続けた。

しかし今回、彼の話が終わる前に、詩織は声を詰まらせながら遮った。

「お父さん、ごめんなさい。私、地元に戻って政略結婚することにする」

突然の承諾に父親はしばらく呆然としていたが、やがて娘がついに折れたことを理解した。

「お、お前、本気で言ってるのか?」

「うん、本気よ。今回戻ったら、ずっと北都にいるつもり。もう二度とこっちには来ないから」

父親は嬉しさのあまり「そうか、そうか」と繰り返し、安心したように娘を気遣う言葉を添えてから電話を切った。

詩織は、先ほど散らかした物を一つ一つ元通りにし、静かに部屋を出た。

リビングまで来たところで、突然玄関のドアが開き、七年間愛し続けた男の顔が現れた。

京介は、彼女の赤くなった目元を見ると、慌てて手に持っていたジュエリーボックスを彼女の前に差し出し、優しい声でなだめた。

「やっぱり泣くと思ってた。政略結婚の記事、見たんだろう?」

「あの結婚話は嘘だ。ただの提携のための芝居で、しばらく演技をするだけだ。望月と結婚するつもりはない」

彼の優しい眼差しが注がれた。しかし、その言葉は一文字も彼女の心には届かなかった。

詩織はとっくに真相を知っていた。だから今、彼の言葉が嘘であることも、当然わかっていた。

彼女はプレゼントをそばのテーブルに無造作に置き、きわめて落ち着いた様子で頷いた。

「わかったわ」

京介の政略結婚が本当か嘘か、彼女にとってはもうどうでもいいことだ。それより、彼女自身の政略結婚は現実なのだ。
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