浮き草の愛
京極瑛舟(きょうごく えいしゅう)と結婚して四年目、陸野亜眠(りくの あみん)は妊娠した。
手続きがよく分からず、彼女はたくさんの書類を持って区役所で妊娠届を出そうとした。
職員は彼女が持ってきた書類を見て、これらは必要ないと伝えようとしたが、ふと亜眠の持ってきた婚姻届受理証明書が偽物のように見えた。
亜眠は思わず目を瞬かせた。
「偽物?そんなはずないです」
「ここ、印刷がずれているし、色もおかしいですよ」
亜眠は諦めきれず、戸籍担当窓口の職員に確認してもらったが、答えは同じだった。
「この証明書は偽物です。それに、おっしゃった京極瑛舟さんは既婚で、配偶者の名前は陸野知綾(りくの ちあや)と記載されています……」
……知綾?
雷に打たれたように、亜眠の頭は真っ白になった。
知綾は彼女の異母姉であり、瑛舟の初恋の人だった。
かつて知綾は夢を追い、留学のために結婚式当日に式場から逃げ出し、瑛舟を無情にも置き去りにした。
知綾が逃げた後、両家の面子を守るため、亜眠は代わりに瑛舟と結婚した。
それなのに今、法律上の妻が知綾だというのか。
……