離婚まであと30日、なのに彼が情緒バグってきた
如月透子(きさらぎ とうこ)が新井蓮司(あらい れんじ)と結婚して二年――
その二年間、彼女は彼の専属家政婦のように働き詰めだった。尽くして、尽くして、尽くしきって、心なんてすり減る暇もなく、ただただ塵にまみれていた。
そしてその二年が、彼への最後の愛情をすっかり削り取った。
初恋の女が帰国したとき、すべては終わった。
紙一枚の離婚届。それで二人は他人になった。
「蓮司……もし、愛なんてなかったら、あんたのこと……もう一度でも見ると思う?」
蓮司はあっさりと離婚届にサインした。
彼にはわかっていた――透子は自分を骨の髄まで愛していた。だからこそ、離れるわけがないって。
涙ながらに後悔して、きっと戻ってくる。そう信じていた。
……なのに。
彼女は本当に、彼をもう愛していなかった。
それから、昔のことが次々と明るみに出た。
真実が暴かれたとき――誤解していたのは、彼のほうだったと気づいた。
動揺した。後悔した。謝罪して、やり直したいと縋った。
でも、透子はもう迷惑そうに一蹴して、SNSで堂々と婿を募集し始めた。
蓮司は嫉妬に狂った。発狂するほどに、どうしようもないほどに。
やり直したい、そう思った。
けれど今回は……彼女に近づくことすら、できなかった。