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甘い誘惑

甘い誘惑

本書は、さまざまな長さの「美味しい」物語を20編以上収録したコンピレーション作品。しかも、ジャンルは一つにとどまりません。 ある時は人狼や人魚の物語。またある時は、学園ロマンス、ヴァンパイア・ロマンス、スポーツ・ロマンス。そして気づけば、変態魔王と気が強くて勝気な人間の戦士による物語(BL)を読んでいるかも! ワクワクしませんか? 次の物語がどんなジャンルなのか、どれほど濃厚で引き込まれる展開なのかは、読んでみるまでのお楽しみ! ただし……次の3つだけは、間違いなく保証します。 * **度肝を抜かれるようなどんでん返し** * **胸がすくような、見事な復讐劇** * **そして何より……思わず顔が赤くなるような甘いシーン!**
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思い出は、思い出のままに​

思い出は、思い出のままに​

接待を終えて帰宅した夫・広地誠(ひろち まこと)の襟元に、薄いオレンジ色の口紅の跡がついていた。 ​ 彼の秘書・大柴舞(おおしば まい)が好んで使っている色だ。 ​ 彼は何でもないことのようにそれを拭い、言い訳をした。 ​ 「接待で彼女が俺の代わりに酒を飲んでくれた。酔っ払って少しはしゃいでたから、その時にうっかりついたんだろう」 ​ 私・広地紗夜(ひろち さよ)は頷き、甲斐甲斐しく酔いざましのしじみ汁を差し出した。 ​ 舞が酒に酔って暴れる姿は見たことがある。誰かれ構わず抱きつき、誠の名前を呼び続けて離さないのだ。 ​ これまでは、そのたびに私は誠に詰め寄ってきた。 ​ 酔って誰の顔も分からなくなっているのに、誠の名前だけを呼ぶなんて、そんな酔い方があるものか。 ​ けれど今、私が何の反応も見せず、静かにしているのが気に食わないのか、誠は思わず問い返してきた。 ​ 「何だその態度は。説明しただろ。いつまで不機嫌そうな顔をしてるんだ?」 ​
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春風と雪は時期が違う

春風と雪は時期が違う

「時田さん、一週間後、本当に偽装死サービスをご利用になるのですね?」 「はい」 「その際、時田さんのすべての身分情報は抹消されます。新しい身分で、新たな生活を再スタートされることになります……」 「分かりました。お願いします!」 時田年乃(ときた としの)は三条成那(さんじょう せいな)と結婚して三年。その三年間、彼にすっかり振り回され、尽くしてきた。 しかし、彼の初恋が帰国したことで、彼に対する愛情はとうに尽きていた。 年乃は偽装死によって彼のそばから逃げ出すことを選んだ。 だが、成那は決して彼女を手放すつもりはなかった。 彼女が逃げれば、彼は必ず追いかける。 「年乃、お願いだ……行かないでくれ!」 「三条、私はもう、チャンスを与えたのよ……」
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チョロい彼女

チョロい彼女

記念日に、私は長谷川陸夫(はせがわ りくお)の大好物ばかりを食卓に並べた。 なのに、彼はまた約束を破った。 沈黙の後、私は慣れた手つきで、彼の高嶺の花、高坂沙耶(こうざか さや)のインスタを開いた。 【とある人を大絶賛!私が「電球が切れちゃった」って一言言っただけで、彼女そっちのけで飛んできてくれたの!】 【彼女より友達優先とか、マジ神対応じゃん?これからもそのままでいてね!】 投稿された写真には、椅子の上に立って、天井の電球を取り替える陸夫の姿が写っていた。 沙耶は両手で彼のを脚を支え、その顔は、彼の太ももの内側に、さりげなく顔を擦り寄せていた。 陸夫はそれを避けるでもなく、口元には淡い笑みさえ浮かべていた。 あまりに目に焼き付く光景だったけど、私はもう、以前のように泣き叫んだりしなかった。 ただ静かに「いいね」を押し、彼に別れのメッセージを送った。 けれど陸夫は、それを全く信じていないようだった。 「どうせ拗ねてるだけだろ。数日ほっとけば、俺がちょっと指を鳴らせば、すぐ機嫌直して尻尾振って戻ってくるさ」 でも、彼は知らなかった。 私が今まで簡単に機嫌を直したのは、ただ彼を愛していたから。 これからはもう、二度と彼の思い通りにはならない。
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届かない悔しい思い

届かない悔しい思い

父さんは闇金の返済のために、私を田舎へ売った。 兄さんが山を越え谷を越え、ようやく私を見つけ出した時、私は買い手の虐待によってすでに聴力を失っていた。 母さんと兄さんは、私に最高の補聴器を買うために、昼夜を問わず働き続けた。 しかし、新しい補聴器をつけた初日、私はアニメに夢中になり、心臓発作で倒れた母さんの助けを求める声に気づかなかった。 兄さんは補聴器を床に叩きつけて壊し、母さんの遺影の前で私を三日三晩、土下座させた。 私は高熱を出し、売られた日の悪夢を見てうなされた。 「父さん、やめて……」 それを聞いた兄さんは、私の髪を掴んで引きずり、車のトランクに押し込んだ。 兄さんの声は、氷のように冷たかった。 「俺と母さんが死ぬ気で養ってやったのに、お前が母さんを殺したんだ!あのクズにそっくりだな! 夢の中でまであいつを呼ぶのか!車の中で反省しろ!」 私が弁解しようと口を開いた瞬間、トランクのドアが力任せに閉められた。 暗闇が私を包み込み、空気が薄れていく。
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鳥と魚の居場所は違う

鳥と魚の居場所は違う

「信子、君の一言さえあれば、俺は今すぐこの婚約パーティーをキャンセルする」 監視カメラの画面の前で、千葉美月(ちば みつき)は涙を必死でこらえ、張り裂けるような苦痛に襲われていた。 愛し合っていたはずの婚約者が、婚約式の前日にこんな言葉を口にするとは夢にも思わなかった。 そして堀江宏樹(ほりえ ひろき)が約束した通り、婚約パーティー当日、信子の「私に付き合って」の一言で、彼はあっさりと婚約パーティーをキャンセルした。 美月も完全に彼への攻略を諦め、システムに向かって言った。「攻略対象を変更します」 彼女を裏切ったのは宏樹だった。 しかし後に彼女が本当に攻略対象を変えた時、彼女の前で必死に「捨てないで」と哀願したのも宏樹だった。
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恋人呪い

恋人呪い

旦那と結婚した後、私の体重はどんどん増えていった。 一日に五食食べてもお腹が空いているような気がした。 だが、健康診断を受けたら全て正常だった。 ネットでライブ配信してネットユーザーに助けを求めた。 ある人がこのように言った。「いつもお腹が空いて満たされないなら、あなたの旦那さんが恋人呪いをしているんかも」 「恋人呪いって、一方が減れば他方が増え、妻を抑えて愛人を盛んにするものだ」
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ひとすじの想い

ひとすじの想い

鬼の少年・流(りゅう)は常に他の鬼に殺されそうになりながら戦って生きのびてきた。流は10歳くらいの子供の鬼だった。 親はおらず、ずっと一人だった。流の腕には文字が書かれている。 襲ってくる鬼の中には流と同じように体に字が書かれている者がいた。 山の中で大ケガをして倒れた時、人間の少女に助けられた。 10歳くらいに見えるその少女・水緒は山奥の村で暮らしていた。 流は水緒の家で暮らし始める。 ある日、流の父に仕えている保科と名乗る鬼が現れ、流が狙われる理由を教えてくれた。 死ぬまで命を狙われ続けると聞かされ、一度は水緒の安全のためにと離れたものの、どうしても忘れることが出来なかった。
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割り勘夫に、大富豪の娘という正体を明かす

割り勘夫に、大富豪の娘という正体を明かす

それは、私の娘の内田奈々(うちだ なな)百日祝いの席でのことだった。 夫の内田彰人(うちだ あきと)が連れてきた女性秘書・藤堂紬(とうどう つむぎ)が、平然と彼の腕に手を絡ませながら言う。 「ねえ、見て見て、彰人。ネイル変えたんだ。それに、あなたが買ってくれたダイヤの時計もつけてきたの。 それと、何だか喉が乾いちゃった。でも、ここには私が飲みたいものがないの。彰人、ちょっと買ってきてくれない?」 その場にいた内田家の親族たちは、驚いて彰人を見つめる。 しかし彰人は何ひとつ文句を言わず、紬のために飲み物を買いに席を立った。 その瞬間、私の心の中で何かがぷつりと切れた。 自分の何年も着古した服と、ガサガサになった自分の手を見つめる。 紬のために飲み物を買って帰ってきた彰人が、冷たい声で私に言った。 「妻は夫の顔っていうだろ?それなのに……なんだ?お前のその冴えない様子は。 外で働いて稼ぐわけでもないし、俺の世間体も気にしてくれない。この家に何の役にも立ってないじゃないか。 まあ、そういうことだから、明日から生活費は全て折半にしよう。お前に金を使うくらいなら、投資に回した方が断然いいからな。その方が有意義な使い方だろ?」 私は何も言い返さず、ただ静かに「わかった」と答えた。 そしてそのまま、兄の加藤琉生(かとう るい)に電話をかけた。 「お兄ちゃん、彰人の会社への出資を引き揚げて。 私、もう離婚することにしたから」
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すれ違う風の向こうに

すれ違う風の向こうに

深沢祈人(ふかざわ きひと)の愛人になって八年。ようやく彼はトップ俳優にまで登りつめた。 だが、萩野朝香(おぎの あさか)という恋人としての存在を公表すると約束していたはずの記者会見で、祈人が発表したのは、別の女優・秋野夜音(あきの よね)との交際だった。 「朝香、俺の立場が安定したら、必ずお前と結婚する」 朝香は静かに微笑み、首を横に振った。「もういいよ」と、その声は優しくも、どこか遠かった。 後日、祈人が長文コメントで公開プロポーズをし、涙ながらに「俺と結婚してくれ」と頼んだときも、朝香は同じように微笑みながら首を振った。 十八歳の朝香は、十八歳の祈人と結婚したいと思っていた。 だが、二十八歳になった医師の朝香は、もはや二十八歳のトップ俳優・祈人と結婚する気にはなれなかった。
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