来世はもう、あなたの妹にならない
偽のお嬢様として高橋家から追放されて六年、私、高橋心結(たかはし みゆ)は売血で命をつないできた。
数枚の紙幣を手にし、医師に連絡して薬を受け取ろうとしたその時、膝をボディガードに思い切り蹴り上げられた。
両膝を地面につくと同時に、一人の貴婦人が理性を失ったような絶叫が耳を突いた。
「この恩知らずが!まだこんな所にいたの?彩花を殺す気?」
強烈な平手打ちを食らい、私はようやく悟った。目の前にいるのは、愛娘である高橋彩花(たかはし あやか)のために輸血用の血液をかき集めている母、高橋陽子(たかはし ようこ)なのだと。
傍らで見ていた兄、高橋智玄(たかはし ともはる)は、取り乱す母を一瞥するなり、即座にボディガードへ私をつまみ出すよう命じた。
彼は私を見下ろし、私が握りしめている紙幣を見て鼻で笑った。
「数年経っても、その性根は変わっていないようだな。たかだか数千円の見栄のために血まで売るとは。
半月後、彩花は海外へ留学する。そうすればもう家族の寵愛を独占する必要もなくなるし、お前も彼女をいじめることはできなくなる。
その時が来たら、俺がお父さんとお母さんに事情を説明してお前を家に連れ戻してやる。お前は変わらず、この家の『お嬢様』だ」
「家……お嬢様……?」私はうわごとのように呟き、最後には首を振って笑い出した。
ALS(筋萎縮性側索硬化症)の進行はあまりに早すぎる。あと一ヶ月も持たないだろう。
それに、彼が苦学生だった彩花のために私を「偽のお嬢様」だと告発したあの時、私に家などとうになくなっていたのだ。