円満離婚の裏側
藤宮修也(ふじみや・しゅうや)と結婚して四年目。
女優として頂点に立つ藤宮紗良(ふじみや・さら)は、無名に近い若手女優・水野優花(みずの・ゆうか)に主演の座を奪われた。
しかも優花は、悪びれることもなく笑って言い放った。
「奥さんだからって、何?私が何か言えば、修也さんはだいたい私の言うとおりだし。
それにね……今、妊活中なの」
半年後、紗良は三度目となる最優秀主演女優賞を受賞していた。
その夜、修也は優花を連れて家に戻ってきた。流産した優花を、この家で静養させるつもりだという。
紗良は取り乱さなかった。
涙を見せることも、声を荒らげることもなく、ただ静かに離婚届へ署名した。
そして優花に言った。
「修也のSNSに入って。三十日後に投稿されるよう設定して。
内容は――『俺たちは円満に離婚した』」
「……約束だよ、紗良さん。ちゃんと守ってね」
「ええ。望みどおりにしてあげる」
三十日後、紗良はフランスへと飛び、修也とのすべての繋がりを、自らの手で断ち切った。