君への三通目の手紙は、遺書だった
久遠和人(くおん かずと)と篠原佳凜(しのはら かりん)は、幼い頃から犬猿の仲だった。
なのに運命のいたずらか、あの年、名家同士の政略結婚の適齢者は、この二人しか残っていなかった。
「俺は死んでも、お前なんかと結婚しない」和人は堂々とそう宣言した。
すると佳凜は、にやりと笑って言い放った。「へぇ、じゃあ私、絶対にあなたと結婚するわ。さっさと死んでちょうだい」
そして迎えた結婚式当日。
和人は、なんと式場に数十羽のニワトリを放ち、佳凜に恥をかかせようとした。
けれど佳凜は無表情のまま、その中の一羽をつかみ上げて、さらりと「ねぇ、あなた」と呼びかける。
その瞬間、和人は、いたずら心がすっと引いていった。
彼女がどうしても自分と結婚しようとする姿を見て、和人は嘲るように言った。
「お前、後悔するぞ」
結婚して三年。佳凜は、これで99回目、和人の不倫現場を押さえた。
そのとき、初めて本当に理解した。
和人の言う「後悔」とは、いったい何だったのかを。