君に捧げた一生、背負うは千行の涙
川村紗奈(かわむら さな)は、福井隼翔(ふくい はやと)にとって留学中四年間ずっと心の支えだった。
四年もの歳月が過ぎ、彼の愛はもうすっかり消え去ってしまっただろうと、彼女は思っていた。
しかし、彼が帰国するやいなや、大々的にプロポーズしてきたのだ。
誰もが紗奈のことを、隼翔が最も愛する女性だと口にした。
紗奈は感動し、ついに勇気を出して隼翔を受け入れた。
しかし、彼女は見てしまった。隼翔が、自分に隠れて、腹違いの妹である川村真奈(かわむら まな)と結婚しているところを。
紗奈は狂ったように理由を問い詰めた。
だが、隼翔は何事もないように答える。
「四年前、お前が何も言わずに消えた時、ずっとそばにいたのは真奈だったんだ。彼女はいま余命わずかで、結婚だけが唯一の願いなんだ。だから俺は、それを叶えてやるしかなかった」
その言葉に、紗奈はただ静かに微笑んだ。
彼が知らないのは、四年前、紗奈が彼のもとを去った理由も、彼女が不治の病を患っていたからだということ。
その後、紗奈の病気が再発し、隼翔に関するすべての記憶を失った。
しかし、隼翔はまるで狂ったように、何度も何度も彼女の部屋のドアを叩き続けた。