あなたがくれた指輪は、もう約束じゃない
二十七歳の誕生日、その日。
私はサイドテーブルで、陽翔がこっそり隠していたちょっと高めのレディースリングを見つけた。
――もしかして、プロポーズのとき指輪をくれなかったこと、今さらだけど埋め合わせしようとしてるのかな。
そんな期待を胸に、一晩中そわそわして待った。
でも翌朝、彼は「急に出張が入ったんだ」とだけ言って、他県へ行ってしまった。
そのすぐあと。
橘が更新したSNSには、花火を背に手を繋いで並ぶふたりの姿が写っていて、彼女の指にはあの指輪が光っていた。
【十八のときの約束、やっと叶ったね。ぐるっと回っても、ずっとあなたはそばにいてくれた】
――そんなキャプション付きで。
私は、そっと目尻の涙を拭った。
……どれだけ真っすぐな愛も、時間には敵わないのかもしれない。