性的不能者である夫を諦めた
私、江崎和穂(えざき かずほ)はアダルトグッズのネットショップを開いている。
百パーセント好評のランジェリー商品に、ある日ひとつだけ低評価がついた。【この色はダメ。夫が気に入らないって】
するとネット上の誰かが追及した。【それって……旦那さんのほうがダメなんじゃないの?】
購入者が追記した。【まさか!紫色に替えたら、夫が急に元気になったんだから!】
私は添付されていたライブ画像を開いた。
女性は頬を紅潮させ、恍惚とした表情で甘い吐息を漏らし、揺れる身体が快楽に震えていた。
カメラに背を向けた男性が彼女に覆いかぶさり、激しく腰を動かしている。片手は、女性が彼の肩に乗せた足をしっかりと掴んでいた。
その瞬間、私の指先がぴたりと止まった。
男性の手首に、半月型の傷跡があった。
あの年、篠原周平(しのはら しゅうへい)が私を庇って受けた傷、まさに同じ場所だ。
その時、彼は笑いながら言っていた。「傷が残ったほうがいいだろ?どこにいても、すぐ俺の手だって分かるから」
今年で、私は周平と結婚して八年目。
そして、私たちのセックスレスの結婚生活も、八年目を迎えていた。