彼の愛は、復讐という名の嘘だった
アシスタントの吉岡小雪(よしおか こゆき)が暴走運転で、私の妹をはねた。
私の婚約者で社長の有馬裕一郎(ありま ゆういちろう)は、私のことを可愛がってくれていた。
彼は、妹の恨みを晴らすために、小雪に復讐すると言い放った。
ところが彼は、私の課長の座を小雪に与え、「高く上った者ほど、落ちるときは惨めなものだ」と言い切った。
小雪に何億円のブレスレットを競り落とし、小雪の愛犬には高級マンションを犬小屋として買い与えた。
それもすべて復讐のためだと言い、私に「もう少し我慢してくれ」と繰り返す。
妹は事故の後遺症で頭蓋内出血を起こし、緊急手術が必要だった。
私は裕一郎に、長年預けっぱなしだった自分の給料を返してほしいと頼んだ。彼は承諾したが、小雪の承認を得ろと命じた。
ところが小雪は書類不備を理由に、私の申請をあっさり却下した。
ようやく書類を整えて再提出しようとすると、今度は「退社時間を過ぎたから、明日にしろ」と突き返された。
妹が息を引き取った後になってようやく、裕一郎から慰めの電話がかかってきた。
「琴里の手術は、数日待ってくれ。これもすべて、小雪への復讐のためだ。琴里の恨みを晴らしてやる。三日後は彼女の祝賀会だ。そこで与えたものを全部奪い去ってやる。それが終わったら、お前と結婚する。お前も琴里も、これで喜べるだろう」
だが私には、とっくに分かっていた。
復讐などという言葉は、裕一郎が小雪を可愛がるための、ただの言い訳にすぎない。
妹は死んだ。私と彼も、ここで終わりだ。