生まれ変った私は彼を捨てた
結婚式の3日前、閉所恐怖症を患う結城湊(ゆうき みなと)の元カノが、私の車を山道の断崖絶壁に追い詰めた。
時速100キロの猛スピードで、12回も激しく追突してきた。
湊が警察官と共に駆けつけた時、私はひしゃげた運転席からレスキュー隊によってこじ開けられ、救出されようとしていた。
だが、彼は塗装が少し剥げただけの限定スポーツカーへと向かい、全身を震わせる桜井結衣(さくらい ゆい)を抱きしめた。
「湊、凛さんの額から血が出ている。急いで病院へ運んで縫合しないと」
湊は私を乗せた担架を手で制止し、血のにじむ私の額と痣だらけの腕をちらりと見て言った。
「ただの掠り傷だ。結衣は閉所恐怖症なんだ。こんな人里離れた山奥では彼女の状況の方が危険だ。先に彼女を病院へ運べ」
置き去りにされそうになった私は、最後の力を振り絞り、彼のズボンの裾を死に物狂いで掴んだ。
彼は眉をひそめ、私の指を強引に引き剥がした。
「結衣はわざとやったんじゃない。発作が起きただけだ。お前は弁護士なんだから、不可抗力という言葉くらい理解できるだろう。いい加減にしろ」
そう言うと、彼はアシスタントから和解合意書を受け取り、力が抜けた私の手首を掴んで、無理やり拇印を押させた。
「後から別の救急車が来る。もう少し我慢しろ」