チャンスは3回しかない
夫は、私を愛していない。娘のことも、もっと愛していない。
娘が生まれてから、もう六年が経つ。それなのに、夫は一度も娘を抱きしめたことがない。
医者は言った。彼は「感情障害」だと。ただ、人並みに愛し方を知らないだけだと。
けれど、あの人——彼の初恋の人が戻ってきた日、夫は珍しく、私たちに微笑みかけたのだった。
そして、信じられないことに、娘にプレゼントまで買って帰ってきた。
私は、やっと心を開いてくれたのだと思った。これから少しずつ、父親になってくれるのだと。
そう思っていた。
でも——
その夜、娘と一緒に見てしまった。夫のスマホのロック画面に設定された写真を。
画面に映っていたのは、満面の笑みを浮かべた夫。片腕には前歯の抜けた女の子を抱え、もう片方の手では、彼の初恋の手をしっかりと握っていた。
娘は、そっと私の手を握りしめた。潤んだ瞳が、何かを訴えるように震えていた。
「ママ……もう、出て行こうか?でも……パパに、あと三回だけチャンスをあげてもいい?」
「その三回で、パパがやっぱり私たちを選んでくれなかったら……そしたら、一緒に行こうね」