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告白

作者: みゃー
last update 公開日: 2025-12-22 20:09:45

リムジンの車内。

車窓に映る、降り出した雨に濡れて淡く幻想的に輝く街の灯。

後部シートの智也と大成と運転席とを隔てる黒のガラスにより作られた、まるで智也と大成二人だけのような静かな秘めやかな空間。

ずっと智也の身体に触れつづける大成の肩から感じる熱。

それら全てが智也を更に酔わせるようにすら感じる。

智也は、そんな心と身体の昂ぶりを隠すように窓を見詰め続けた。

だがそこに、大成の静かな声がした。

「鈴木さん。君は明日からAJの本社で働いてくれ」

「えっ?!」

智也は、自分の聞き間違いかと耳を疑いながら大成に視線を向けた。

しかし、間違いでは無かった。

「鈴木さんが仕事がやりやすいよう、その才能を充分発揮出来るよう、AJのホテル建設のプロジェクトチームをAJ本社に作った。君専用の部屋も用意したし、必要な数、いくらでもAJの人間を君に付けるし、明日から送り迎えの車も君に付けるから電車通勤の必要はない。君がさっき一緒に来た部長とゼイン側には、私の部下からすでにその旨は伝えて了承は得ている」

あまりに突然で壮大な提案に、智也は思考が追いつかず混乱した。

「あっ……その……」

だが大成は智也を見詰めて、諭すように、まるで懇願するかのように言った。

「鈴木さん。AJには、君の才能が必要だ。そして、智也……私には……君自身が必要だ」

「?!」

その言葉から身も心も焼くような熱を感じ、智也は言葉が出ないまま体を硬直させた。

すると大成は智也と視線を交わらせながら、智也の様子を伺うように、座席のシートに置かれていた智也の右手を上からゆっくり大成の左手で覆い握り、囁いた。

「俺は、君と離れ離れになったあの時からこの7年間、1日も君を忘れられなかった。そしてこの7年間、毎日君に対して後悔し続けた」

大成の指に更に力が込められ、智也の手を強く握る。

大成の懺悔はつづいた。

「本当にすまなかった。頼む、もう一度、君とやり直すチャンスを私に与えてくれないか?」

「智也……」

大成の喉がかすかに震えた。

「あの頃の俺は若すぎて、本当に愚かだった……自分がどれほどお前を好きだったのかさえ、分かっていなかったんだ」

智也のまつ毛がわずかに揺れる。

「俺、あの頃は強がってばかりで……お前が近づくたびに心臓が壊れそうなくらい跳ねてたのに、平気なふりをして、わざと傷つくようなことばかり言って……」

大成は伏し目になり、赤くなった目元を隠す。

「どれだけ酷い言葉だったか、俺は知ってる。お前が離れていって、ようやく分かったんだ……悪いのはお前じゃない。あの時の俺が、お前に相応しくなかっただけだって」

智也の動きが止まる。

大成は顔を上げ、濡れたように熱い瞳でまっすぐ智也を射抜いた。

「お前、知らないだろ……俺がどれほど後悔したか。お前のSNSが更新されるたびに見に行って、誰かと笑ってる写真を見るたびに胸が張り裂けそうで……夜になるといつも考えてた。“もしあの時”俺が逃げずに手を握っていたら……全部違っていたんじゃないかって」

喉が上下し、彼はほとんど懇願するように絞り出す。

「智也……俺はただ“ごめん”と言って許してほしいわけじゃない。あの頃、お前に背負わせたものを……全部、少しずつ返していきたいんだ」

長い息を吸い込み、胸の奥に溜まった何年分もの痛みを押さえつけるように続ける。

「今の俺たちは、あの頃とは違う。もし……もしお前が少しでも許してくれるなら、やり直すための時間をくれないか。壊したものを全部、今度こそ俺が直す。俺たち……もう一度、最初から始められないかな?」

それを聞いた智也の驚きと混乱はあまりに激しく、すぐに答えなど出せなかった。

ただ呆然と大成を見詰めた。

するとそこに、ゆっくりと大成の顔が智也の唇に近付いた。

そして……

そっと、大成の唇が智也のそれに重なった。

甘く湿った熱が、触れた瞬間に智也の全身へ奔った。

思考は一瞬で焼き切れ、真っ白になった。

逃げる隙も、拒む余裕も奪われる。

やがて、大成の唇はただ触れるだけではなく、智也の呼吸ごと奪うように深く、甘く、じわりと押し広げてくる。

「ふぅっ……」

智也が、湧き上がる愉悦に、口付けしたままの唇の合間から甘く切ない吐息を漏らした。

すると大成は、智也の体を強く抱き締めさらに激しく口付けし、大成の舌が、恍惚とし開きかけていた智也の唇を察知し口内に忍びこみ、智也のそれを捕らえた。

大成の舌先が智也のそれにかすかに触れた瞬間、智也の背筋が跳ね上がり、身体の奥が熱く溶け崩れた。

(な、に……これ……)

胸の奥が痺れ、脚の力が抜け、指先まで熱に侵される。

微かな吐息さえ奪われ、大成の欲を帯びた呼吸が耳元で震えるたび、理性はひと欠片ずつ溶けていった。

残ったのは本能だけ。

求められている――

そんな錯覚を抱くだけで、智也の体温はさらに上がり、唇は無意識に甘く震えた。

大成の指が後頭部を包み込むように添えられ、逃げ道を塞ぐ。

深く、甘く、容赦なく。

溺れるほどの熱で、智也は完全に絡め取られていった。

 やがて、車がゆっくりと智也の家の前に停まった。

けれど、その瞬間になっても、智也はまだ大成の腕の中に閉じ込められていた。

唇と舌は絡み、息は乱れ、もう自分が誰なのかさえ忘れてしまいそうだった。

「……お客様、到着しました」

運転手の声が仕切り越しに響く。

現実に引き戻すような、その言葉が車内の空気を切り裂いた。

(……帰らなきゃ。降りるべきだ)

そう思っても、身体はまったく動かなかった。

大成がゆっくりと、前方の黒い仕切りガラスを下ろすボタンの上に指を持ってきた。

車内は一瞬にして、静寂が張りつめる。

大成は身をかがめ、智也の耳元に唇を寄せた。

微かにその耳朶を甘く噛み、熱を帯びた声で囁く。

「君の選択を、俺は尊重する」

低く、抑えた声。

その奥には、堪えきれない熱が滲んでいた。

「さあ……家に帰るのか、それとも……俺と一緒に来るのか」

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