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第87話・名前を付けて

Author: 新矢識仁
last update publish date: 2026-07-25 09:19:18

「お待たせいたしました。書類を……あら」

 頭の上の伝令鳥を見てパサレが笑う。

「お前、本当にこの方のことを気に入ったのね」

「これが?」

「頭に乗るのは信頼しているからですよ」

「そうなの?」

 頭の上に手を伸ばすと、掌に頭をぐりぐりしてくる感触。

「では、ここにお名前と印を」

「大人しくしててね」

 ゆらゆら揺れている伝令鳥にそういうと、ぴたりと動きを止める。

「この気難しい子がこんなに好くなんて、本当に運命の相手に巡り合えたのね」

 書類を渡された。

「この鳥の名前をこの欄に書いてください」

「名前?」

「ええ。名前を与えて、主従の契約を結ぶ。そういうものでしょう?」

「名前……」

 まさか入手したその場で名前を付けなきゃいけないとは……。

「前の持ち主はどんな名前を付けてたんですか?」

「同じ名前を付けることはお勧めしません」

 何で? というぼくの顔に気付いたんだろう。パサレは真剣な目でこっちを見た。

「名前を与える、ということは、この子に対する全権を名付け親が得る、ということに他なりません。前の飼い主と同じ名でこの子を呼ぶと、この子は果たして自分がどちらに仕えてどちらを愛
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