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第47話。

Auteur: 愛月花音
last update Dernière mise à jour: 2025-05-13 17:16:14

「では、レイナ。これを証拠する手立てはあるのか?」

「そ、それは……」

「それは私達が証言します。聖皇である私もその現場を見ておりました。確かに、聖女様は暗殺者に襲われて怪我を……」

「聖皇。お主が、この聖女と手を組んでいないと分かるまでは証言とは認めぬ」

「うっ……」

 必死に聖皇はレイナを庇おうとするが、レイヴァンはバッサリと切り捨てた。

 それもそのはずだろう。1番怪しい共犯者なのだから。

「他にも証拠ならあるぞ。決定的にこの偽聖女が企んでいたと分かる証拠がな」

 クリスは。勿体ぶった言い方で証言してきた。顔つきは勝ち誇ったようにニヤリと笑っている。

「……申してみよ」

「あぁ、ではそうさせてもらう」

 レイヴァンの言葉にクリスは右手をかざす。そうすると右手から細長く鍵に形をした杖が出現する。先の部分には水晶玉が乗っていた。

 その水晶玉は宙に浮かぶと、左手のところに移動して行くと光り出した。黄金の輝きを増すと声が聞こえてきた。そして水晶玉が立体的な人の形を映し出した。

『いい? 捕まったらこの『虹色のダイヤ』の指輪を見せるのよ。そしてサファード公爵家の令嬢がやったって言うの』

『でも……もしそうなったら俺は死刑に』

『大丈夫よ。あの女のせいにして婚約破棄になれば、全て私のモノ。あんたを助けることなんて簡単だわ。だから、私のために捕まりなさい』

『は、はい……聖女様』

 これは……レイナと暗殺者の取引現場だ。

(凄い……どうやって?)

 そこで取引現場を見ているかのような錯覚を起こさせる。人も声も確かにレイナと暗殺者だ。

「こ、これは何なの!?」

「この水晶には真実を映す鏡のような役割がある。そして世界の、どんなところでも映して映像として見ることができる。貴様達の取引やしてきたことは、この水晶で全て見ていたし、記録もされている。どうだ? これでも言い逃れをするつもりか?」

「……くっ」

 クリスの言葉にレイナは反論ができないのか歯を食いしばっていた。

(よし、このままレイヴァン様に……)

 エルザはそう思った。しかし、その時だった。アハハッと突然レイナが笑い出した。

「ハハッ……だから何だって言うの? そんな証明したって、私の『魅了』に比べたら何の意味もないわ」

 嘲笑うように何かを取り出した。。それは、赤色の魔法石だった。

「これは何か知っている? 聖皇庁
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