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6-1 おまじない

작가: 文月 澪
last update 최신 업데이트: 2025-08-11 16:00:03

 私はふわふわする頭を、なんとか働かせようとするけれど、殿下の顔が間近にあって、蕩けるような笑みを浮かべている。それがまた美しくて、見惚れてしまった。

 そうする間にも、殿下に妖しい手つきで耳を触られ、ぞくりと背が粟立つ。

「ん……っ」

 思わず零れる声に、殿下は気を良くする。

「リージュ、可愛い。とんだ邪魔が入ったけど、もう大丈夫。明後日には婚約も発表されるし、僕が守るから。そうだ、もういっその事、王宮に住めば良いよ。うん、それが良い」

 突然の提案にも、私は反応できない。そんな事、無理に決まってる。婚約発表もされていない令嬢を囲ったとなれば、殿下の進退にも関わってしまう。どうにか反対しようと口を開きかけると、また塞がれた。

 熱い舌が口内を蹂躙し、唾液が銀糸を引いて溢れ、浮上しかかった理性は溶かされ堕ちていく。その隙に殿下が指示を出した。

「ネフィ」

 そう呼べば、私のメイドは無言でこうべを垂れる。何故メイドの名前までご存知なのだろう。殿下にしてみれば、末端の者なのに。回らない頭では、そんな思考も泡となって消えた。

「すぐに準備を。部屋はもう用意してある。必要な物はこちらでも準備するから、大事な物だけ持ってくるように。急げ」

 殿下の声は緊迫していた。

 それはネフィにも伝わったのだろう、カーテシーをすると早々に部屋を後にする。

 ――待って。

 そう手を伸ばそうとしても、殿下に絡め取られた。指に口付けを落とし、上目遣いで私を見つめる。

「リージュ。ダメだよ。この指輪はこっち」

 右手の薬指から指輪を抜き取ると、改めて左手の薬指に嵌め、その上から口付ける。するとピリッとした小さな痛みが走った。それと同時に手が熱を持つ。ちらりと見ると、薄い桃色の花の模様が浮かび上がっていた。

「うん。ちゃんと機能してるね。ほら見て。僕の花紋が浮かんでるでしょ? ︎︎これは古いおまじないだよ。むかしむかし、まだ魔法がこの世界にあった頃の遺物。これで君は僕の伴侶になった。僕にも、君の印を頂戴」

 そう言って左手を差し出す殿下。そこにはダイヤこそ付いていないけれど、私の物と同じ幻瞳迦げんとうかの指輪があった。どうすればいいのか分からず、殿下を見つめると瞳を細め教えてくれる。

「指輪に口付けて。ただそれだけ。大丈夫、何も怖い事は無いよ」

 私は言われるがまま、殿下の指輪に口付ける。すると、さっきと同じように、手の甲に花の模様が浮き出た。私のとは違い百合の花だ。それは私の花紋。貴族は誕生花を自身の花紋として身分の証明に使う。勿論、重複する事もあるけれど、それぞれ意匠が異なり、同じ物は二つとない。

 その百合の花を見て、殿下は破顔する。

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