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第496話
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永遠の毒薬 第510話
まさか、乃亜とその息子のことか？凌央は心の中で考えた。「パパ、綺麗なお姉さんの連絡先、見つかった？」璃音は話題を変えた。凌央は少し申し訳なさそうに答えた。「まだだよ」乃亜は本当に神秘的だ。連絡先を聞くのもこんなに手間がかかるなんて。でも、考えてみると、もし簡単に連絡先が手に入るなら、乃亜は毎日誰かに追い回されることになるだろう。「大丈夫、急いでないから！」璃音は少し恥ずかしそうに笑った。結局、パパも頑張ってくれてるからね。乃亜は紗希の検査を終えたばかりで、携帯が鳴った。「ボス、あの三歳の心臓病の子の家族が連絡先を求めてきました。どうしますか？」「教えない」乃亜は心の中で考えた、凌央がなぜ自分の連絡先を欲しがっているのだろう？もしかして、自分の正体を知ってしまったのか？「わかりました、今すぐ返信します」「今は手術を受けまない。手元の仕事が終わったら考える」「もし高額のオファーが来たらどうしますか？お金は大切ですよ」「その時は、状況を見て決める」「了解です！」「それから、美紀という人物を調べて！調べ終わったら、すぐに資料を送ってくれ！」乃亜は紗希から美紀という名前を聞いたばかりで、この人物に何か不審なものを感じていた。「了解しました！ボス、さようなら！」携帯を切った乃亜は、紗希の側に座り、軽くマッサージを始めた。長時間寝ていると体が痛くなるので、マッサージしてあげている。彼女の痛みを直接和らげることはできないけれど、少しでも楽にしてあげたい。紗希は乃亜の優しい眼差しを見て、ため息をついた。「乃亜、そんなに忙しいなら、私のことは放っておいて！体調が悪ければ医者に頼むし、さっきみたいなことがあったら、思い切り騒いでやる。次はあの人も来られなくなるさ」乃亜は紗希の腕を軽く押しながら、軽く笑った。「私は忙しくても、あなたのところには必ず来るよ。それに、あなたの体調が心配だから、他の誰かに治してもらうわけにはいかない！」さっきの竹田夫人の騒ぎは、誰かにそそのかされた結果だと分かる。誰かが裏で紗希を追い込もうとしている。それを絶対に許すわけにはいかない。「じゃあ、井上堅達に会社の一部を任せてみて。彼はここ2年間ずっと私のアシスタントで、仕事の能力も高い」乃亜は微笑
永遠の毒薬 第509話
「うん？」凌央は少し複雑な表情で、声を引き伸ばした。璃音の両親が見つかったことで、彼女は親のもとに戻されることになるのだろうか？それとも、もう二度と会えなくなるのか？「璃音の両親は榕城で働いている」辰巳は続けて言った。「会わせてみるか？ついでに親子鑑定をしてもいいか？」凌央は深く息を吸い、少し考えてから答えた。「考えさせてくれ」彼は璃音を3年間育ててきた。だから、もし彼女が離れなければならないとなると、どうしても辛い。どうするべきか、よく考えないと。「わかった、急いで考えてくれ！」辰巳はあくびをしながら言った。「まあ、何もなければ電話を切るからな。次はこんな早く電話しないでくれよ！」夢の中で、ほぼ乃亜に追いつきかけていた。でも、凌央の電話一本でその夢はすぐに壊れてしまった。本当に腹が立つ！凌央は軽く鼻で笑いながら、電話を切った。辰巳......あいつ、俺よりよっぽど気性が荒いな。凌央は携帯を握りしめ、辰巳が言った言葉を反芻していた。璃音の両親が榕城にいる。もし璃音が彼らと再会したら、彼らは璃音を迎えに来るだろうか？「凌央様、璃音ちゃんの今日の食事メニューをご確認ください」突然の声に、凌央は思考を戻し、目を下に向けると、栄養士がタブレットを差し出していた。そこには璃音の食事メニューが書かれている。最近、璃音の食事は栄養士が担当しており、璃音の顔が少しふっくらしてきたのが見て取れる。その丸顔がとても可愛らしく見える。栄養士はこっそり凌央の顔を見た。なんてかっこいいんだろう、この人。ただその顔を見ているだけで、足元がふらつきそうになる。でも、彼みたいな男は、女性に囲まれているだろうな。私この高給な仕事を失いたくないから、ただ見ているだけで、何も考えてはいけない。それでも、毎日この顔を見るだけで、気分が良くなる。「わかった、準備しておいて。ついでに俺の分も頼む」凌央はメニューを見終わると、淡々と告げた。「はい、すぐに準備します！」栄養士はタブレットを受け取ると、すぐに立ち去った。凌央はしばらく周囲を見渡していたが、ふと煙草が吸いたくなった。最近、煙草の欲求が強くなっている。しかし、璃音の体調を考えると、やはり彼女に副流煙を吸わせたくない。そう思
永遠の毒薬 第508話
両親の命令だから。直人が結婚しないわけにはいかない。直人は返事もせず、振り向きもせずにそのまま歩き去った。彼に舞衣と結婚させることなど、あり得ない。湧太はその背中を見つめ、腹が立って息が詰まる思いをした。「直人！待て！」と叫んだ。この野郎、本当に腹が立つ。直人は外に出ると、携帯を取り出し、凌央に電話をかけた。凌央はすぐに電話を受け、冷たい声で言った。「何か用か？」朝から電話をかけてくるなんて、何かおかしい。「植田政宗と宗一は双子か？」直人は本題にすぐに入った。凌央は一瞬黙った後、「政宗のことは知っているが、宗一については知らない」と答えた。実は、昨日の夜、辰巳からその名前を聞いたばかりだった。「宗一は政宗とそっくりだって言われている」「その件、調査を進める」凌央は言った。直人が電話をかけなくても、調査を続けるつもりだった。「それと、お前と元妻の関係はどうだ？」直人は乃亜のことを思い出し、彼女の医術が本当に優れていることを病院で聞いた。もし凌央と乃亜の関係が良ければ、彼女に璃音の手術を頼むことができるかもしれないと思った。「他に言いたいことがあるのか？」凌央は乃亜の名前を聞かれたくなかった。「もう行くよ」凌央はそれ以上話を続けたくない様子だったので、直人もそれ以上は何も言わなかった。人と人の出会いは、やはり縁が大切だ。縁がなければ、どんなに努力しても出会えない。凌央は病室の横に座り、璃音の小さな手を握りしめ、色々なことを考えていた。どうしてみんな、彼と乃亜の関係ばかり気にするんだろう。「パパ、何をそんなに考えているの？」璃音の柔らかな声が耳に届く。凌央はその思考を切り替え、優しく病床の璃音を見つめた。「璃音、どうした？」「パパ、前に言ってた、あの綺麗なお姉さんの連絡先、調べてくれるって言ってたよね？」璃音は、病床に寝ている間、あの綺麗なお姉さんのことを思い出していた。優しく話してくれた顔が忘れられない。凌央は唇を噛みながら言った。「調べているけど、すぐには無理だよ」辰巳に頼んで調査したが、あの女性の足取りは完全に消されていて、何もつかめなかった。彼女はプライバシーを徹底的に守っていた。「えー！」璃音の小さな顔が一気にしょんぼりとした。「でも、私はそのお姉さんに会いた
永遠の毒薬 第507話
「舞衣、もしかして、あの人が誰か分かってるのか？」舞衣の父は舞衣が頭を振ったり、眉をひそめたりしているのを見て、彼女が何かを思い出したと感じた。舞衣は首を横に振った。「いいえ」母親が亡くなった時、直人は桜坂家の婿として葬儀を仕切った。その時、周りの人々はみんな彼が義理堅くて良い婿だと言っていた。彼のような男性と結婚できるなんて、どれだけ幸運なことかと言われていた。舞衣も昔は幸運で幸せだと思っていたし、ずっと彼と一緒に人生を歩むつもりだった。しかし、あの日、直人が婚約解消を言い出した瞬間から、彼が見せているほど無害な人間ではないと感じていた。もしかしたら、彼の裏の顔は、彼女が思っている以上に冷酷かもしれない。「直人との関係はどうだ？結婚について何か言っていたか？」舞衣の父は直人が家に来ていないことに気づき、その態度の変化に気づいた。舞衣はため息をつきながら答えた。「まあまあですね。結婚のことは、仕事が落ち着いてから考えたいです」彼女は、直人が婚約解消を提案したことを父親には言いたくなかった。そんなこと、絶対に考えていないからだ。あんなこと、言えない。「もし君が直人と結婚すれば、仕事しなくても大丈夫だろう。直人なら君を養えるさ」舞衣の父は渡辺家の財力をよく知っていた。湧太は長年政治に携わっていたが、渡辺夫人の実家は非常に裕福で、直人は早くから母親の家業を引き継いでいた。渡辺家はただの金持ちではない。桜坂家が渡辺家と縁を結ぶ理由も、経済的な背景が大きかった。「私は自分で決めます」舞衣はそう言って、箸を置いた。「お腹いっぱいですから。父さん、ゆっくり食べてください」舞衣の父は彼女を見て、少しおかしいと感じた。しかし、どこが変わったのかはうまく言葉にできなかった。舞衣は部屋に戻り、直人に電話をかけた。すぐに直人が電話を取った。「直人、会おう」「いいよ、オフィスに来て」直人はあっさり答え、舞衣は少し驚いた。電話を切ると、彼女は深呼吸をした。電話の向こうでは、直人が携帯電話を握り、指先に煙草を挟み、煙が立ち上っていた。その時、突然電話が鳴った。直人は画面を見てから、電話を取った。「直人様、調べがつきました」「うん？」相手が言ったことのほとんどは直人には入っていなかった。ただ、ひとつの名前だ
永遠の毒薬 第506話
ただ彼女は、自分の夫を宝物のように思っていただけだ。「彼の携帯で、あの二人のチャット履歴を見たの！」噂話は信じなかったけど、目の前で見たら、どうして信じられないの？「それなら、どうしてそのチャット履歴を見せたと思う？それとも、前から彼はいつも履歴を見せてくれてたの？」乃亜はストレートに言った。女性は一瞬、驚いた。そんな可能性を考えたことがなかった。チャット履歴を見たとき、すぐに怒って病院に駆けつけたけど、どうしてそうなったのか、じっくり考える余裕はなかった。「私は盛世の副社長だから、商談は必ず一緒にしてる！決して二人きりで会うことはないわ！」乃亜は、誰かが仕組んだのではないかと考えていた。竹田夫人は乃亜の顔を見つめた。その顔はとても美しく、まるで天から降りてきた仙女のようで、目は澄んでいて、嘘をついているようには見えなかった。乃亜はもちろん、嘘をついていない。彼女が紗希と商談をする時は必ず誰かを同伴している。それが自分を守るためであり、また今のように理屈では説明できない状況を防ぐためだ。「竹田夫人が信じないなら、竹田社長に直接電話して来てもらおうか？きっと嘘はつけないと思うけど」乃亜は自信満々だった。竹田社長が来れば、絶対に嘘をつけないだろう。「いいえ、先に帰って確認してみる」竹田夫人は乃亜の強い態度に心を動かされ、彼女の言葉を信じることにした。その後、竹田夫人が去った後、乃亜は紗希の手を取り、優しく言った。「私がいるから、あなたが困ることは絶対にないよ」紗希は涙が溢れそうになり、頷いた。二人はしばらく黙っていた。その頃、別の場所で。舞衣は朝食を食べながら、優雅で品のあるお嬢様のように振舞っていた。口元には微笑みが浮かび、今日はとてもご機嫌のようだ。舞衣の父は彼女の様子を見て、思わず尋ねた。「朝から何がそんなに嬉しいの？」舞衣はすぐに微笑みを引っ込め、姿勢を正して、敬意を込めて「お父さん」と呼んだ。舞衣の父は彼女の表情が不自然に変わったのを見て、心が少し沈んだ。「舞衣、まだ俺を責めているのか？」舞衣はお椀とお箸を置き、背筋を伸ばして答えた。「一番責めるべきなのはお母さんです。でもお母さんはもういません。私はあなたを責めたりしません。結局、あなたはどの男も犯すべき誤りを犯しただけです」
永遠の毒薬 第505話
乃亜は拓海の唇に触れたその瞬間、携帯の着信音が鳴り響いた。彼女は深呼吸をして、体を起こして携帯を取った。拓海の顔には一瞬、失望の表情が浮かんだが、すぐにそれは隠れてしまった。乃亜が電話に出ると、紗希の介護士が焦った声で言った。「久遠さん、すぐに来てください！病室で女性が騒いでいるんです！」乃亜は表情を険しくして言った。「すぐ行くわ。呼び鈴を押して、誰かに助けてもらって！」「わかりました！」介護士は急いで答えた。乃亜は電話を切り、拓海に向き直り、軽く抱きしめた。「拓海、今病院に行かないといけないから、朝ごはんは後で食べるね。本当にごめんなさい」拓海は彼女が食べることを楽しみにしていたが、彼女は一口も食べずに出かけてしまった。心の中で申し訳なく思っていた。拓海は紗希が彼女にとってどれほど大切な存在かを理解していたので、急いで手を取って外へ向かう。「行こう、送っていくよ！」「拓海、私は自分で行けるよ。晴嵐を迎えに行かなきゃ。保育園に送ってあげて。それから道中で、『学校ではいたずらしないように』って言ってね。もし何かしたら怒るから！」と言って、一瞬、拓海のバッグに気づき、続けた。「彼のパソコンと携帯を取って、絵本を二冊買って、バッグに入れてあげて」昨日のようなことは二度とあってはいけない。「わかった、任せて」拓海は彼女の言葉にうなずき、了承した。「じゃあ行ってくるね。あなたも急いで晴嵐を迎えに行って。学校に送ってあげて。明日、裁判があるから、今日は資料整理があるの。遅くなるかもしれないわ」乃亜はさらに言った。「料理ができたら、晴嵐と先に食べて、私は気にしないで」拓海が待ってくれることはわかっていたが、いつ帰るかわからないのに、彼を空腹のまま待たせるのは申し訳ないと思っていた。「わかった、晴嵐と先に食べるよ」拓海は彼女の手をしっかり握りながら、心の中で嬉しさを感じていた。実際、こうして過ごせるなら、一生このままでもいいと思った。二人は駐車場に到着し、それぞれ車に乗り込んで走り出した。乃亜が病室に到着すると、介護士が急いで迎えに来て、安堵の表情を浮かべた。「久遠さん、やっと来てくれました！」「あなたは外に出ていて、ここは私に任せて」乃亜は介護士に指示し、紗希の元へ歩み寄った。最初、乃亜は紗希を見舞い
