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「エンナ嬢ッ! おかえ⋯⋯って、なんでアマがいんだよ!?」「んな事より、なんだよその格好は」 地下玄関へと迎えに来たケンは、昨日と打って変わって執事のようなスマートな服装をしており、いつもの"黄色のハイスマートグラス"を掛けていた。 髪型も全然違うし⋯⋯ホストっぽいというかなんというか⋯⋯「へっ、俺はな、エンナ嬢に雇ってもらったんだ。ゲームのプロなんていつまで続くか分からねぇんだからよ、次の人生も考えとかなきゃだろ? こんなすげぇ大豪邸でボディガードさせてもらえるなんて、いい機会じゃねぇか」 俺の問いに、余裕の表情で淡々と答えるこいつ。 なんだろうか、さっきまでと正反対の雰囲気に、どこか安堵する自分がいた。「って、俺の事はいんだよっ! アマがいるのはなんでなんだ!?」「転校の様子見で職員室に来てたアマとばったり会ったんだ、話せば長くなる。まぁいろいろあったんだよ。俺とお前がホテルで会ったあの状況みたいなもんだと思ってくれ」 その後の詳しい説明は代わりにスアがしてくれた。こいつはスアの言う事ならなんでも素直に聞く、俺より適任だ。申し訳ないが、こいつの面倒事はスアに任せよう。 そうして話し合ってる中、俺とエンナ先輩が先にリビングへ入ると⋯⋯「あ、おかえりなさい、ザイ先輩、エンナ先輩」 後光が差したあまりに天使すぎる姿に、一瞬誰か分からなかったが、神々しいほどの真っ白なメイド服に包まれたモアがいた。「えっと、似合って⋯⋯ますかね⋯⋯? ケン先輩が執事服していたので、あたしもしてみようかなと思いまして⋯⋯」 彼女の照れた顔は、あまりに破壊力が高すぎる。 しかし動じる事のないエンナ先輩は、すぐにモアへと近寄った。「モアさん、私の専属メイドにならない? 給料弾むわよ」 めちゃめちゃ動じとるやん⋯⋯「専属メイドですか? 私なんかに出来るでしょうか⋯⋯?」「あなたはその格好でいるだけでいいわ。どうせ他の家事は全部AIがしてくれるのだから」「⋯⋯それって専属メイドの意味ありますかね?」 困惑しているモアの傍へと俺は寄った。「エンナ先輩、残念ながらモアは、プロゲーミング事務所"Hanged Girl Gaming"の看板娘なんすよ。しかも経営してるのは彼女の父です」「そっかぁ。やっぱりスアちゃんを取るしか⋯⋯」「俺らの事務所潰そうとしな
「それで、何があったの?」 対面に座るエンナ先輩が心配そうに言う。 「学園内にヤツが入って来たんです。人型AIの"ProtoNeLT"が」 「それって昨日言ってた話だよね? ごめん、途中から眠くなっちゃってたんだよね⋯⋯また一から教えて貰えるかな?」 先輩、風呂入ってからふにゃふにゃしてたもんな⋯⋯ 俺はヤツに対して知ってる情報全てを、改めて車内で話した。 「ほ、本当なの!? "頭を食べて人間になるAI"がいるなんて⋯⋯」 「はい。俺らが殺されそうになったのも、ソイツが原因なんです。最初は警備員になったアイツが突然現れて、急に"銃殺されるのは好きか"とか言い始めて⋯⋯」 「よくそんなホテルの50階から逃げて来られたね⋯⋯。さすが喜志可くんとスアちゃん、私だったら絶対絶対ぜ~~~~ったい無理だよ⋯⋯」 その後、秘桜アマがなんでここにいたのかの話に切り替わった。 「それで、なんでお前はあんなとこにいたんだよ。アフターバンパクシティの病院にいたはずだろ?」 「昨日の最後にあったAI総理と日岡知事の対談後から、院内の雰囲気が妙におかしくなったのを感じて、抜け出してきたんだ。症状も一時的なものだったから、身体は動かしやすかったからね。きっと君たちも逃げただろうと思い、大会も無くなる可能性が高いと想定した。それで、登校日に設定されているこの日曜、転校の視察で急遽入れさせてもらったんだ」 「転校? 親の都合とかで、か?」 「いいや。喜志可ザイ、君に興味を持ったからだ。普段の生活でどういった事をすれば、あんな強さに辿り着いたのか、参考にさせてもらおうと思ってね。さっきも使っていた"波が連なる銃"、それを手に入れた過程も知りたい」 ⋯⋯え、俺に興味持っただけでわざわざ転校しようとしてんの⋯⋯? 三船コーチは一旦諦め、俺を観察する事に徹底したいというコイツ。 なんか変なのが来ようとしてるんだが⋯⋯ 「だとして何もわざわざ、夏休みの登校日に来る必要無かっただろうに」 「自分の中に衝動が走ったんだ、すぐ見に行った方がいいと。思い立ったら吉日と言うだろ? 夏休み明けから行くための、いいイメージにもなるじゃないか。それほど、僕の中に"あの天井の深海からの巨大銃"が響いたのさ」 謎にドヤ顔で言っているんだ
俺は即座にハイスマートグラスを銃のように構え、海銃へと成り変えた。 「⋯⋯ッ!」 撃った瞬間に色彩が輝き、小波(さざなみ)に包まれた弾丸がヤツの身体へと直撃する。 「な⋯⋯ッ!」 しかし、なんと"ヤツの真っ赤になった身体"にはびくともせず、何度撃っても効かないまま⋯⋯。 こっちを見向きもせず、ヤツは突き刺した生徒の頭を食い散らかし、ソイツの姿へと変異した。 『⋯⋯あれェ? 僕の首が無くなってるゥ? 僕は、僕は、"これからの存在"ってのに、ナレタッテコトォォォォォ???』 「きゃぁぁぁぁぁぁぁッ!?!??」 阿鼻叫喚に包まれたクラスからは、6ヵ所ある出口へとそれぞれが走って逃げていく。 残った俺たちの前に、目を360度回転させて狂っているアイツ。もはやクラスメイトの面影を一つも感じない。ただ姿が同じだけの、"壊れた何か"がそこにいるだけだった。 「⋯⋯ッ! スアッ! 俺たちも逃げるぞッ!! こいつにはこれが効かないッ!!」 「ザ⋯⋯ザイ⋯⋯足が⋯⋯足が動かなくて⋯⋯」 「は!?」 緊急事態に身体が強張ったのか、どうにも出来ないようだった。 「行って⋯⋯一人で行って⋯⋯」 「⋯⋯なにいって⋯⋯」 「早くッ!! 次のも来てるからッ!!」 スアの視線の先の出口には、"違うヤツ"がさらに来ているのが、見えているようだった。 どうやってもヤツを止める方法はない。あのホテルでは助けられたのに⋯⋯ ⋯⋯スアを見捨てる⋯⋯しかない⋯⋯? こんなに一緒に、どんな時も一緒に、これからも一緒に生きていきたいのに⋯⋯? スアを⋯⋯スアを⋯⋯俺は⋯⋯ 考える隙など無く、ヤツは"ハンマーのような大きな鈍器"を取り出し、なぜか俺の方へと向いて振りかぶった。 標的はスアではなく、俺だったのだ。 ダメだ⋯⋯俺が逃げればスアに⋯⋯ 「うわぁぁぁぁぁぁッ!!」 クラスに響く大きな叫び。その声の正体は俺ではない。 彼女が激しく叫んだ後、ピンクのハイスマートグラスを銃のように構えた。 刹那、あのハイスマートグラスから、"ピンクの鏡のような羽が4枚"生え始め、中央からは"新型人工衛星のような姿"が現れた。 放たれた一発がアイツに当たると、途端に赤色が剥がれていき、白色へと変わって動きを止めた。 ⋯⋯もしかして、今
まさかこんな事が出来る日が来るなんて⋯⋯ リムジンに乗って登校なんて、2次元でしか見た事が無い。 ってか、このリムジンってエンナ先輩のものなのかよ⋯⋯。俺はてっきり親のだと思ってたんだけど。 高校卒業祝いで新車になったこれを貰ったそうで、親はまた別の車を使っているらしい。 このリムジンはあまり使わないようにしているようで、やっぱり自分で何でも出来るようにしたいそうだ。 高校の時、エンナ先輩はいつも電車通学だったっけ。電車が止まったりした時だけリムジンで来てたんだっけか。 もちろん無人自動運転の最新型で、タッチパネルから選んで食べ物や飲み物までサービスしてくれる。これの面白いところは、ちょっと時間は掛かってしまうが、AIが目の前でライブキッチンのパフォーマンスなんてものまであるところだ。 もちろん、天王寺駅前から大阪都波裏学園なんて、車移動で20分もかからないため、使いたいなんて我儘は言わない。 「朝食は何でも遠慮せず選んでいいからね」 黒鮭定食を頼みながら、先輩は俺とスアに囁く。 「俺も黒鮭定食にしていいですか?」 「私も!」 「どうぞ~。美味しいわよ、黒鮭。私のおすすめ!」 数分で用意された黒鮭は焼きたてで、香ばしい匂いが漂ってくる。こんな良い鮭、食べた事ないぞ⋯⋯。 それに並ぶように置かれた白米と味噌汁と納豆は、どれも輝いている。 「ん~! 良い匂い! ずっと嗅いでられる~!」 スアは幸せそうな顔。 これは味わって食べたい⋯⋯けど、時間が無いからなぁ。 「「⋯⋯いただきます!」」 俺とスアはシンクロするように、黒鮭を一口。 ⋯⋯なんじゃこりゃぁ⋯⋯! 表面は炭火で焼いたようなカリっと深い味わい、そこから中に行くほど濃い旨味がぎっしり詰まっている。すぐに甘味もドンと口全体を覆ってきた。 ⋯⋯ダメだ、白米が止まらない! ⋯⋯美味すぎる! 「ふふ、気に入ったみたいね」 「先輩、この黒鮭とサーモンマグロが毎日欲しいです」 「え~、じゃぁ私と結婚しないとだね」 「ごほっごほっごほっ」 「き、喜志可くん!? 大丈夫!?」 「変な事、急に言わないでくださいよ⋯⋯!」 「(⋯⋯あながち、変な事でもないんだな~)」 こっそり言った先輩の言葉はあまり聞き取れなかった。 スアはという
「さっき車にいた時、パンツ見てたでしょ」 風呂から上がって牛乳を飲んでいるところ、エンナ先輩が隣にやってて、突然言われたのがこれ。 「⋯⋯まさか、んな事するわけないっすよ」 「私が気付いてないと思った?」 人生終わった。 この顔、何もかもバレてる。 落ち着いたところで、言うのを待っていたんだ。 「⋯⋯申し訳ありませんでした。今すぐ出て行きます」 「ふふ、な~にそれ。相変わらずだねぇ、喜志可くんは。あれは"重要な戦略"だよ? 対面でさ、若干見えてムラムラするくらいが、男の人には一番効果的でしょ。自社を気に入ってもらうには、時にはこういった事も大事だからね。それを喜志可くんにも試させてもらったってわけ」 「そんなの俺にしないでくださいよ⋯⋯"ハニートラップ"じゃないですか」 「え~? リラックス効果もあるみたいなんだけど、嫌だった?」 「それは⋯⋯」 実際、癒されたのかムラついたのか、混ざっていてよく分からなかった。 ⋯⋯そんなの口が裂けても言えない 「実は女の人もね、他の人が丈短いとさ、見えないかな~ってちょっと見ちゃうから、これは立派な研究結果の一つなんだよ。だから、喜志可くんは悪くないよ! ただし、盗撮とかはダメだからね?」 パンツちら見えがどれだけ素晴らしいのか、謎の力説を続ける先輩は、突然ミニドレスの裾をたくし上げ、中のパンツを見せつけてきた。 「ほら、見て。正解はただの見せパンでした~。パンツにしか見えなくて可愛いでしょ、薄ピンクのフリルが特にね」 喋りながら、なぜか先輩の顔がどんどん沸騰していく。 ⋯⋯あれって⋯⋯もしかして見せパンではないんじゃ⋯⋯ 「すぐに記憶って消せる? ねぇ、今すぐ消せる?」 真っ赤な顔で間近に迫ってくるエンナ先輩に、俺は「消しましたから!」と思わず叫んでしまった。 すると、一人がやってきて⋯⋯ 「あ、ザイと会長、そんなところで何やってるんですか?」 「な、なななな、なんでもないけど~?」 「会長がそんな焦るの、初めて見ましたけど?」 「い、いいから! 二人は早く食べてきなさ~いッ!!」 一体何の時間だったんだ⋯⋯。 エンナ先輩のあんな様子、俺も初めて見た。 先輩も焦ったりするんだな。どちらかといえば、いつも弄ばれる方だったんだけど⋯⋯。 ただ得
― 天王寺駅 赤と青に様変わりした駅全体と、あべのハルカスが視線を奪う。 もうどこに行ってもこんな状態になっていってる。 「喜志可くんッ!!」 「おわッ!?」 背後から抱き着いてきたのはエンナ先輩だった。 「うん、本物だね。よしよし」 「いや、赤ちゃんじゃないんですから」 言っても止まらず、抱き寄せて頭を撫で続けてくる。 なんか、なんか背中に柔らかい二つの感触が押し付けられて⋯⋯ 「いつまでされてんの」 しっかりとスアに怒られ、引っ張られてしまった。 「スアちゃん! どこも怪我してない!?」 「はい。さっき話した通り、ザイが守ってくれて、モアちゃんもいてくれたので」 「よく頑張ったね、喜志可くんも」 「いえ⋯⋯」 先輩の優しさに安堵していると、モアがこちらへと歩いてきた。 「あ、この子がモアさん?」 「⋯⋯水生(みなお)モアです。よろしく⋯⋯お願いします」 「うんうん、よろしくね! あら、もう一人は?」 ⋯⋯あれ、ケンがいないぞ。あいつどこ行ったんだ? 少し探し回っていると、天王寺駅の中へと入りそうなところを見つけた。 「おい! どこ行ってんだよッ!」 「見たらわかんだろ」 「なんでだよ、こっち来いよ」 「⋯⋯どう見ても、輪に入れそうな空気じゃねぇし」 「んな事ないって。あの人の家は"師斎トップホールディングス社長の豪邸"だ、もう二度と入れないかもしれないぞ?」 その後、ケンがゆっくりと帰ってきた。 「⋯⋯すんません、邪魔になりそうだったら出てくんで」 「そんなの気にしなくていいよ! その代わり、皆とは仲良く、ね?」 「⋯⋯うす」 そして、俺たちは"メタリックブルーのリムジン"へと乗り込んだ。 めちゃくちゃに広い車内、さっきのタクシーがなんだったんだと思うくらいに。 部活の時に乗せて貰った事があるけど、その時よりグレードアップした新車になってる。さすが師斎家はヤバすぎる。 「乗り心地は悪くない?」 「はい、最高です」 「そっかそっか。部活の時以来だよね、こうやって乗るのは。車は新しくなっちゃったけどね」 一番後方にエンナ先輩、スア、モアの女子3人。向かい合う形で、俺とケンが座った。 ここ、目のやり場に困るんだが⋯⋯。近い距離で対面に座った事によって、より強調さ