Beranda / 恋愛 / 黒と白の重音 / 青の章 1.群青

Share

黒と白の重音
黒と白の重音
Penulis: 神木セイユ

青の章 1.群青

Penulis: 神木セイユ
last update Terakhir Diperbarui: 2025-08-06 12:00:47

雑居ビルの中にある黒ノ森楽器店は、少量の管楽器とギター、ベース、ドラム……そしてメジャー音楽の楽譜を中心に扱っている。中・高生御用達の店舗でもあり、多くのミュージシャンの卵達で賑わっている。

年配の客が来ない訳では無いが、売り物が安価で量産型も多く、ベテラン勢がこぞって来店する店に比べると質は劣る。店舗のレビューはそこそこで、入門者には気兼ねなく入りやすい店、ということらしい。

閉店の二十時直前。

エスカレーターを折り返し帰宅足の同世代とは逆に、店舗を目指す一人の少女がいた。

白い肌に目の覚めるような青色の髪。純白のブラウスに波打つように流れる、水面の様な輝きを放つストレートヘアは周囲の視線を虜にする程美しい。

少女の名は水野 霧香。

だが偽名だ。

そもそも彼女が周囲の視線を釘付けにする事も、男女問わず虜にしようとも何らおかしい事では無い。

霧香はヴァンパイアだ。

周囲の視線に気付いた霧香は、そっと口元にマスクをかけ、気配を消す様にその美貌を隠す。

楽しげに帰路に着く同世代の高校生達は、楽器を抱えた男子。そして、お喋りに花を咲かせる女子のグループで溢れかえっている。

その女性達の半数が、今ショーケースの鍵を確認している二十歳前後の若い男性店員が目当てである。

「お疲れ様。契約書取りに来たよ」

霧香が声をかけると、彼……泉《いずみ》 蓮《れん》は長めの前髪を手櫛でかき上げて顔を上げる。

「今から ? もう店終わるんだけど」

霧香に負けず劣らず、男性客でも思わず振り返ってしまう程に蓮もクールな顔立ちをしている。

「わたし二時間前にも来たんだよ ? でも、とてもじゃないけど……あんたをバックヤードに連れてったらファンの子達に刺されるわ」

溜め息混じりに言う霧香の冗談に、彼は否定するでもなく「そうだね」と笑って返す。

バックヤードに霧香を通すと、蓮はいくつかの書類を机に広げた。

「まず、これが統括から発行された『人間界での活動許可証』だから。必ず携帯して」

「蓮も ? いつも持ってるの ? 」

「ああ。前に一度空き巣にあってさ。パスポートとかと纏めて置いた所を丸ごと盗られたんだよな。人間からしたらただの玩具にしか見えないだろうけど、俺たちにとっては金より大事なものだから」

「分かった」

蓮と霧香は同胞だ。家系こそ違えど、同じく人間界に行くとあって、統括者は霧香のお目付けに蓮を当てがったのだ。

「次は『血成飲料の配達依頼書の確認書類』。これは許可が出てるし、住所も確認しておいて。家に届くから」

他数枚、纏めて封筒に入れていく。

「新居はどうなの ? 」

「シャドウ君が色々してくれてる。素っ気ないんだけど、几帳面でね」

「使い魔は素っ気ないくらいでちょうどいいんだ。猫にして正解だったろ ? 犬は干渉しすぎる」

「それは分からないけど……猫なせいか、ツンデレなんだよね」

そこへもう一人の男性店員が戸締りを終えて戻ってきた。

「あ、霧ちゃん。来てたの ? 」

こっちはこっちで……店主は狙って雇っているのでは ? と疑問を持たれてもおかしくない程の男前だ。蓮がクールなのに対し、この男は甘いマスクで物腰も柔和な印象を受ける。

「こんばんは、ハラン。今日は書類受け取りに来たの」

「そっか。ヴァンパイアは人間界の出入り制限厳しいからね」

二人の状況を知る、このリ · ハランも人間では無い。本人曰く天使……と言う事だけ明かされている。李と名乗るからには韓国出身かと聞かれればそれも怪しいもので、この三人全員が人間界で生活する上での身分証に過ぎない。

現に霧香は日本人と西洋人のハーフの様に見えるし、青い髪も地毛である。蓮は黒髪ではあるが、やはり得体の知れない妖艶さがあるし、ハランに至っては最早中性的過ぎて人種の判断も難しい。

だが、それが女性の心を惹き付けてやまないようだ。ここにはハランのファンも多く出入りしている。

「生活はどう ? 資金繰り大変じゃない ? うちでバイトしない ? 」

「あ、それなんだけど、今ネットで音楽活動してて……」

「あ、そっか。観てるよ。ベースのやつでしょ ? 」

「絶賛炎上中のやつな」

「いや、そんなつもりじゃなかったのに。相手が意地悪するから……」

霧香がKIRIとして活動してる動画は瞬く間に有名動画として若者を中心に周知された。だが、手元だけを映した動画なために、男か女か、年齢は、住まいは……とにかく詮索が多く、霧香も頭を抱えていた。

更にはアンチも多く「実際弾いてるのはオジサン」「こんなの他の配信者の方が上」等と悪質な煽りやコメントを送って来る者も多かった。

「所詮、再生回数の伸びないクリエイターの腹いせさ」

「俺達も対バンライブとか初めに出た時、キツかったよな。誰アレ ? みたいな空気」

二人は天使と悪魔と言う間柄ながら、同じバンドで活動している。

「でも、まともなメッセージとかファンレターもあるだろ ? 」

「ファンはまぁ、いいんだけど。なんか気になるメッセージくれる人は居て……」

「へぇ……。どんな奴 ? 」

霧香の話を遮るように、蓮は眉を寄せてハランをシッシッっと追い飛ばす。

「そんなのいいから。

とりあえず書類な。無くすなよ。もう遅いから帰れ」

面倒そうに話を切り上げる蓮に、ハランは少し意外そうに霧香と蓮を見る。

「もう夜遅いよ ? 用意された住まいって郊外でしょ ? 送ってやればいいのに」

「必要ないだろ。襲われても魔法でどうにか出来るんだから」

「そーゆー……人間界で無闇に魔法を使うなって書類だろ ? それ」

これには蓮もぐうの音も出ないようで、ムスッとしたまま席を外した。

「俺が送るよ。と言っても徒歩だけどね」

「えぇ ? そんな悪いよ」

「夜道は危ないから」

「そう……かな ? じゃあ、お願いしようかな」

「荷物取ってくる」

□□□□□□□□□□□□

「あいつ素直じゃ無いんだよ。俺、黙ってれば良かったかもね」

確かに天邪鬼な蓮のことだから、ハランが何も言わなければ霧香を家まで送ったかもしれない。

「蓮は最近小言多い ! 」

「心配なんだろ。同胞だから余計に。人間界には音楽がやりたくて来たの ? 」

「……聞いてないの ? 」

「何も ??? 」

キョトンとして霧香を見下ろすハランは、嘘をついているようには見えなかった。

霧香は少し考えると、歩幅を緩めて話し出す。

「堕天使になると、悪魔として地獄に堕ちるじゃない ? わたしの場合はヴァンパイアにさせられたんだけど……」

「ごめん、失礼な質問だったらあれなんだけど……なんで堕天したの ? 」

「……ふふ。内緒」

ハランは特に気を悪くもせず、続きの話を待つ。

「でも、『水の天使』だったから、ヴァンパイアになっても魔法は水魔法が使えちゃうわけで。

それがね、前例がないんだって」

「水の天使が堕天する事が ? 」

「うん。地獄に水は無い。飲水が極めて少ない。

だから、わたしがヴァンパイア領土に居ても、戦争の引き金になりうるって。

それで体良く人間界に追い出されたの。わたし、家族なんていないし……ヴァンパイア領土にも帰る家無いの」

「そう……。複雑な理由だね」

天使は人間界への行き来にそれほど制限がないが、悪魔の類は別だ。それでも霧香は地獄に置いてはおけなかったのだ。

「でも、今はこれで良かったかなって」

「地獄にいるより ? 」

「うん。食べ物も美味しいし、人間の文化面白いから」

楽観的な霧香の言葉に、ハランの表情も和らぐ。

霧香とハランは蓮を通して楽器店で知り合った。天使とはいえ、同じく人外同士ともあれば、打ち解けるのにそう時間はかからなかった。

「わたしん家、ここ」

足を止めたのは、住宅地の奥にある雑木林の前だった。

「へぇ。これは空き巣の心配はないね」

ハランから視るとしっかり屋敷が建ってはいるが、人間はこの屋敷を視認できない魔法がかかってる。

「これがまた音楽やるには丁度いいんだ。音が漏れないから」

「配信、次も観るよ」

「ありがと」

「ねぇ、聞いていい ? さっきの気になるメールくれる人の事」

蓮は別としても、ハランはただ面倒見がいいのか、それとも霧香に気があるのか定かでは無いのが周囲の印象だ。

「あ、そうそう。

その人ね、VTuberも実写もどっちも上げてる人でSAIって言う人。

知ってる ? 」

「ギタリストの ? 色白の奴だよね ? 」

「え !? 」

ハランは、さも知っていて当然の如く頷いた。

「知ってるの !? 」

「知ってる知ってる」

「ハラン、リスナーなの ? 」

「あははは ! 違うよ ! うちの客なんだよ」

「えぇーっ !!?」

「そういえば最近来るの減ったな。あいつ人見知りでさ、どこのバンドでも上手くいかないみたいで。

ネット配信とか性に合うんだろうな」

「そ、そうなんだ……」

急にたじろぐ素振りを見せる霧香を、ハランは面白いものを見るように観察する。

「霧ちゃんはリスナーなの ? 」

「え ? うーん。ちょっと違うかな ? 」

「 ? 」

霧香はSAIとのやり取りをハランに話す。何がきっかけで、何に悩んでいるのか。

そして出たハランの答え。

「俺、仲を取り持とうか ? 連絡つくよ。

明日にでも会ってみたら ? 」

「うえぇっ !!? きゅっ…… !! 急にそんなSAIに会うとか !! き、緊張する !! 」

「大丈夫だって。危険なタイプの人間じゃないし、蓮にも……いや、あいつは関係ないか。

でもせっかくだし、会ってみれば ? 」

「うぅ。うん。わかった。

はぁぁぁ〜今から緊張する !! 」

霧香も人気配信者であることは間違いないのだがピンキリの世界だ。

SAIは霧香よりずっと上にいる存在である。

ハランによる急激なブッキングに、霧香はふわふわとした様子で屋敷に帰って行った。

その姿を見て、ハランは声を殺す様にして笑いながら自分も家路に向かった。

Lanjutkan membaca buku ini secara gratis
Pindai kode untuk mengunduh Aplikasi

Bab terbaru

  • 黒と白の重音   6.白縹 - 3

     彩と再び待ち合わせ。 先程と同じカフェである。 着替えを済ませて先に到着していた彩に恵也が話し込む。「そんでさ〜キリの服見た時、モリリン固まっててさぁ〜」「そうか……」 最初こそ汗だくだった彩だが、少し仕事モードに切り替わって来たようだ。更には道すがら、霧香とミミにゃんのツーショットがネットに上がると、すぐに咲の用意した差し金だと気付いた。 人脈があるのだろう。借りを作れるぐらいに。有名モデルがたまたま同日、会議だったとしてもスケジュールを前倒しで来いと指図出来るとは……藤白 咲と言う人間はかなりヤリ手なんだろうと把握する。 故に『これから会わせたい人』とはどんな人間なのか興味深くもあった。「既製品を着てくる人は多いだろうけど、完全に改造しまくった形だからね〜。 お姉さん、元のワンピースの写真見てビックリしちゃった ! 」「跡形も無いっすもんね」「それで兎子の清水って人は…… ? 機嫌を損ねましたか ? 」「諦めきれない感じかな ? 本当は「もういいか」って空気が出てたけど、ミミにゃんが来て仲良くしてたから気が変わった……みたいな。 焦りが出たんじゃない ? あの子人気だし、大事な広告塔だからね。私生活で仲のいい有名人同士は話題になるし、霧香さんの外見なら彼女が褒めても遜色が無いものね。 しかも……その彼女まで兎子との契約を悩んでるって、すぐそばで話されちゃって……」「あのブランド、評価低いんすね。趣味があれだから……客が少ないのかと思ってたわ俺」「ロリータ系ショップで本当に人気なブランドはもっと賑わってるわよ。 さぁ ! お姉さん、紹介したい人がいるの。行きましょ。 タクシー♪タクシー♪」「お姉さん ! 前見て ! 」 ベチョ !「はぅ !! 」

  • 黒と白の重音   5.白縹 - 2

    「うわぁ !! お話中、すみません !! もしかしてモノクロのキリさんですか ? そうですよね ? フォロワーのミミにゃんです ! 」 名前の通り、猫耳姿がトレードマークのこの少女は霧香より更に年下の中学二年。なかなかの美少女である。「あ……ミミにゃんさん !? 初めまして ! キリです ! 」「ヤダー ! 現実世界でお会い出来るとは思ってませんでした ! 」「わたしも、まさかここで会えるなんて ! 嬉しいです ! 」 彩と出会った日、霧香がインスタに上げた一番最初のロリータ写真を見て、最初にフォローしてきた有名モデルである。 読者モデルながら天性の明るさとウォーキングの実力は瞬く間に爆破的人気を集め、今やバラエティにも引っ張りダコ。 それがこの女子中学生にミミにゃんだ。「今日は商談ですか ? 清水さんと ? 」「あ……うん。まあ、マネージャーがお話を聞いたみたいで」 何とも言えない。 まさか今の今、その商談を蹴ろうとしている瞬間とは。 だが次の一言が決定打となる。「そんな事より ! そのワンピース、新色ですか ? 超可愛いです ! モノクロさんのイメージにピッタリですね !! それ、わたしも欲しいなぁ〜。 清水さん、キリさんと写真撮ってもいいですか ? インスタに載せます ! 」「え……。 あ、ああ。もちろんいいよ〜 ! 歓迎だよ〜」「やった〜 ! キリさん、ここの観葉植物の所にしましょうよ ! 」 この時の悪魔のような微笑みを、実の悪魔の霧香も見逃さない。ついでにデリカシー0な癖に、変に勘がいい恵也も見逃さない。「うふふー。可愛い女の子が二人 ! いいわね〜。最高 ! お姉さんが撮ってあげる ! 」 咲が席を立つ。 清水が

  • 黒と白の重音   4.白縹 - 1

    「なるほど……なるほどね」 先に彩の考えを咲に話しておくことにした。 咲は立ち止まると、霧香の全身を見る。「一応ね。お姉さんプロだから。みんなの曲は全部聴いてきたのよ。動画も。 リーダーの意向は霧香さんも恵也さんも同意って事なのね ? 」「はい。サイもこんな事になるなら、最初から清水さんって人と会う予定を受けない方が良かったかもって悩んでました」 不安そうにする霧香に、咲は力コブを作るポーズを決める。「よし ! お姉さんに任せて ! 霧香さん、今の服。写真に撮ってもいい ? 」「えと……大丈夫だと思いますけど……」 咲は持っていたタンブラーを霧香に持たせ、カフェの店先で写真を撮る。 大人雰囲気のテラス背景と、甘い服装の霧香はミスマッチな様で妙に引き立つ。 それを恵也のスマホに送り、恵也からの発信で「仕事中の一息」としてSNS にあげる。そしてその写真の違うポーズの物も霧香が自分のインスタにあげた。 その間、咲は誰かにメッセージを送っていた。「どうするんですか ? 」「ふふ。重い石があったら、お姉さんは迷わず重機を使うの ! 便利で強くて、手っ取り早いなら使うべきだと思うんだ ! さぁ行こう」 □□□ 兎子アパレル公司のフロントに行くと、すぐ側のラウンジから一人の男が近付いてきた。 背が高い狐顔の男で、なんとも掴み所の無さそうな印象だ。「清水 森人です。お待ちしておりましたぁ〜」「初めまして、モノクロームスカイの水野 霧香です。リーダーのサイは本日体調不良でして、わたしたちが代理となります。よろしくお願いいたします」「ドラム担当の稲野 恵也です。よろしくお願いいたします」 清水は目を細めると霧香と恵也を見下ろす。「よろしく〜。若いのにしっかりしてていいね」 そして、本来いないはず

  • 黒と白の重音   3.陽光 - 3

     兎子アパレル公司 本社ビル付近。 三人は咲とカフェで待ち合わせをした。「あ〜いい天気。海行きてぇなぁ」 恵也は客が少ないのをいいことにダラリともたれて、空を見上げ、だらしなく口を開けている。「ほんと。オープンカフェって初めて来たけど気持ちいいね」「へぇ。初めてかぁ。女の子ってこーゆー店好きなのかと思ってたわ」「まぁた女の子で括られた ! ケイそれ良くないよ」「ゴメンて。って言うかよぉ………………サイ大丈夫 ? 」 二人が彩をチラ見する。 汗ダク。 白いシャツの背中が既に変色。 気温は20度前後だ。 暑いわけでもないだろう。「咲さんって、樹里さんの知り合いなんだろ ? だったらおばさんなんじゃないの ? 」「サイの女性の認識範囲、九十代でも女性だよ。アウト 」「マジかよ ! 」「…………」「おーい。……ダメだこりゃ。喋りもしねぇ」 二人の間に不安が押し寄せる。 これは彩はいないものとして考えないといけないかもしれないと。なんなら喋らないなら、いない方が余程自然とまでありうる。 その時、カッカッと鳴るヒールの音が近付いて来た。「お待たせ〜 ! モノクロームスカイのゲソ組ね ? かぁわいい ! 」「あ、はい。初めまして水野 霧香です、ベースとチェロ担当です ! 」「知ってるよ〜KIRIちゃん」 スレンダーで二十代後半程の女性だ。 全身白いスーツにアイボリーのパンプス。 ローポニーを三つ編みに纏めた髪が清潔感のある印象だ。「ここデザート美味しいよねぇ。昼過ぎで店の中は混んできたわー。お姉さんもなにか飲み物頼んでからと思ってさ〜」 そう言い、サイの横の空いた椅子に向かうが、軽快な音を

  • 黒と白の重音   2.陽光 - 2

    「で、今日はアパレルの人と会うんだっけ ? 彩が行くの ? 相手男性 ? 女性だったらどうするの ? 」 ハランが不安そうに聞いてくる。「一応、電話してきた奴は男らしいんだけど、サイとキリと俺が行くことになった。 でもあいつ、ノり気じゃないんだよね」 初めは見目を考えて霧香と蓮を考えた彩であったが、クール系の蓮にトーク力は期待しなかったのである。 そして、相手がリアルクローズ──所謂、普通使いの洋服を推して来る話が本当ならば、バンド内で一番耽美と程遠い恵也を連れていこうという試しでもあった。「そういえば樹里さんはなんて言ってたの ? 」「何も知らないらしい上に、六十万のシーリングライトの話された」 蓮の怪しい話に全員食いつく !「何それ詳しく」「ははは、誰が買うんだよ」「怖っ ! 聞きたい ! 」「実は、そのシーリングライトは……」 シャドウは食洗機のスイッチを押すと、猫型に戻り欠伸をしながら窓際で寝転ぶ。 人間は何故、くだらない物体を買わされたりするのかと呆れ返って寝た。 □□□□□□□ 樹里の事である。抜かり無く彩に直接意向を聞き、人材を派遣してくれた。「じゃあ、樹里さんの知り合いが同行するの ? 」 彩の部屋へ今日の一日の服を取りに来た霧香と恵也は、同時にスケジュールを確認していた。 清水 森人と会う前に、別な人間に会うと彩が言うのだ。「そう。名前は藤白 咲さん。職業はインフルエンサーマーケティング会社の代表。樹里さんの紹介。あの人本当に顔広いよな。 俺としてはこっちが本命」 インフルエンサーマーケティング会社は、インフルエンサーを探してる企業とインフルエンサーになりたい人間をマッチングさせる仲介業者である。 更に藤白 咲と言えばボカロPや歌い手界隈のマッチングから始めたベテランで、ミュージシャンとしてはこれ以上ない適役である。「清水 森人とは通話でのやり取りを

  • 黒と白の重音   白の章 1.陽光 - 1

     朝。 恵也がリビングに来ると、今日は霧香が先に起きていた。 霧香、蓮、ハランが並んで朝食を取っている。未だテーブルの定位置は決まっていない。 彩は食べ終わったところで皿を洗って食洗機に入れるところだ。「霧ちゃん、今日も可愛いね」「んー」「お前、残すならソーセージ俺に頂戴」「んー」「霧ちゃん、ソーセージ嫌いなの ? 」「んーん」「寝起きで入んねぇだけだろ」「んー」 恵也は頭を抱えて三人を眺める。「いや……これ駄目だろ……」「んー、ケイおはよ」「駄目だろ『んー』じゃ ! なんも、ときめかねぇよ ! なんだよオフレコくっそ友達じゃん ! 兄弟じゃん ! 」 恵也はバグってる。「そんな朝からイチャイチャ設定出来るわけないじゃん。あれはパフォーマンスだよ ? ケイ」 あくまでパフォーマンスと言い切る霧香。「いやいや、割とハランはやってたぞ !? 蓮もそんな食いかけのソーセージよく食えんな ! 齧った痕ついてんじゃん ! 」「最近は彩が歯磨きさせてるから大丈夫だろ」「娘か !! 普通歯磨きは自発的にするの ! 大人は ! お前らって俺、本当に意味わかんない」「サイ、おはよう」 やっとリビングに戻った彩に、霧香が声をかける。そして霧香の顔を一目見ると、気まずい顔で深く溜息をついた。「おい、どうしたサイ。今度はお前が喧嘩か ? 」「いや……違う。うん。おはよ」 彩はそのまま部屋に戻って行った。「なんだありゃ。何か気に触ることでもしたのか ? 」 恵也の問いに霧香は首を振る。「ううん。何か悩んでるみたいだね。凄く動揺してたし」「え ? 怒ってなかった ? なんで悩みだとか言いきれんの ?

Bab Lainnya
Jelajahi dan baca novel bagus secara gratis
Akses gratis ke berbagai novel bagus di aplikasi GoodNovel. Unduh buku yang kamu suka dan baca di mana saja & kapan saja.
Baca buku gratis di Aplikasi
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status