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帰ってきなさい

作者: 影畑凛星
last update 公開日: 2026-09-14 22:49:51

「そうだ……」

香子が突然、顔を上げた。

「家に連絡しなくては」

何も告げずにパーティー会場を出てきてしまった。もう夜も遅い。このまま帰らないわけにはいかないだろう。

「連絡するなら、今夜は帰らないって伝えたほうがいい」

「はい。そうします」

「スマートフォンは?」

勇樹に尋ねられ、香子は少し困ったように首を振った。

「持っていません」

「……え?」

「携帯電話は持たせてもらっていないので」

あまりにも当たり前のように答える香子に、勇樹は言葉を失った。

「ずっと?」

「はい」

成人した女性が、家族の許可なしには自由に連絡を取る手段すらない。

勇樹の表情が曇る。

「……だからか」

「何がですか?」

「いや、何でもない」

何年捜しても香子にたどり着けなかった理由が、少し分かった気がした。

勇樹はホテルの電話を使えるよう手配した。

しばらくして、香子は教えられた番号を押す。

数回の呼び出し音のあと、久恵が電話に出た。

『もしもし?』

「お義母様。香子です」

『香子!?』

久恵の声が一変した。

『あなた、今までどこにいたの!』

香子はびくりと肩を震わせた。

「申し訳ありません。今夜は――」

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