「愛には牙がある。噛みつくのだ」
(スティーヴン・キング『スタンド・バイ・ミー』〈恐怖の四季 秋冬編〉)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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「あれ、さっきの実況で映ってた倉庫じゃないかな」 ちょっと広めの空き地。動くものはないっぽい。街灯が寂しげだ。 「さっきの実況、やっぱり同じ画面のまんま。うん、あの倉庫でいいみたい」 停めるの? やめとこーよ。降りるの? 絶対ダメだって。降りた人が最初にやられるって思ってると、車の中にもうナンカが潜り込んでて、最初に車の中の人やられて逃げ道なくなって全滅なシチュだから。そうじゃなかったら、降りた途端倉庫からナンカが信じられない数出て来て、みんながやられる中必死で逃げ回って、一人だけ助かったと思ってほっとしたところを土の中とか、木の上とか思わぬ角度から襲われてどのみち全滅なシチュだから。でも、降りるのね。はい? ウチだけ? 「ウチは動画撮らなきゃ。運転もあるし」 「セイラは、ゴマすらなきゃ」 なに言ってんの、あんたたち。とくにセイラ。 結局ウチか。一応武器って、なにこのホーキ。古い枯葉が積もってるから掃いてけって? ショージキいらない。で、なんでカレー☆パンマンの被り物すんの? どっから出て来た? 「レイカ小顔だし、暗くて見えにくいから」 なるほどって被っては見たけれど暑苦しいし見えにくい。ルームミラーにカレー☆パンマンの顔。悪くないね。 懐中電灯持って外。なんか変な臭いしてる。しめった落ち葉が靴にくっついてくる。ウエアブルカメラを探せっていわれてもね、暗くてよくわからないよ。 「もちょっと、左のほうじゃないかな。あ、カレー☆パンマンとホーキ映った。右右、そっち左。そう、そのまま前」 あてずっぽうにそこらじゅうを足ではらってたら、何か蹴った。ころころって。 「レイカ、どうした?」 「何か蹴っちゃったみたい」 「なんで蹴る? それ拾って」 どれ? 見えないよ。ん? なんかにつまづいた。すり鉢だ。ほっとこ。カメラ、カメラはっと。これ? 黒い目玉おやじみたいなやつ。 「それ! それだよ。レイカ。だから、蹴らなくていいから。手で持ってきて」 はいはい。 なんか音した。後ろで。やばいやつかも。ウチ、チョッカン信じてるから
森の中の真っ暗な道をゆっくりと進んで行く。明かりと言ったらヘッドライトだけ。「入れたものの」「ナニすればいいの?」 しばらく行くと、受付の札が立ってるのが見えた。「ちょっと様子見て来るよ」 車を脇に停めてカリンが一人で出て行った。二人きりになるとセイラはカバンからノートパソコン出して、いつもの真っ赤な画面表示させた。それからセイラはスマフォとパソコンで忙しそう。つまんないからウチはシートに横になってたら、「ちょっと! レイカ。やめてよ怖がらすの」 どしたの?「ミラー見たら、消えてるから」「寝転んでただけだよ」「もう」 変なの。 カリンやっと帰って来た。どうしたの? 顔色悪い。「何か分かった?」「収穫なし。『R』のほうはどう?」「だめだね。システム障害の情報だけ。マップも見られなくなってる」「スレッターは?」「こっちは運営へのヒボーチュウショーばっか」「実況は?」「動画のリンクは死んでるっポイ」 やっぱ帰ろ。ここなんだか気分よくない。「あ、ゴメン、PCの位置情報許可してなかった」 セイラ、会社のSEさんみたい。複雑怪奇なパソコン世界の全知全能者。そーいう仕事してるの? ウチ、それさえ聞いてあげてなかった。「F5っと。でた。やっぱりエリア内だと見れるんだ、生実況」 セイラがノートパソコンの手元のちっさい四角い所をこちょこちょいじって操作してる。マウスなくてよくそんなことできるよ。パソコンから声だけ聞こえて来た。〈システム障害の間隙を襲って、我が隊はAH地点を進攻しています。ミッションナンバーは何になるんすかね。後で運営にナンバーつけさせよう。そもそもヤツラの落ち度なんだし〉「カリン、あれ!」 すり鉢男たちがヘッドライトの光を横切って行った。ひょっとして、今実況してた人たち? すぐ暗闇の中に消えちゃったけど驚いた顔してた。ここ本当は車で入る場所でないのかも。 画面を眺めてたセイラ言った。「この
トリマ、ウチらは0時になる前にカリンの車にのって、現地に行ってみることにした。途中でヤオマンBPCってファミレスに寄ってご飯食べようってなったんだけど。なんで? さっき食べなかったっけ。ここでも、カリンとセイラはお肉をモリモリ。ウチはなんだか食べそびれちゃった。もったいなかったけど、残しちゃってカリンにほとんど食べてもらった。 セイラのマンションの前の道に車停めてセイラの準備待ち。 「おまたせー」 セイラが戻ってきた。荷物取りに寄ったの。 「セイラ、何持ってるの?」 「ん? これ? セイラのゴマスリセット。スリコギの絵柄なめネコなんだ。カワイっしょ」 本格スリ鉢とスリコギセット(5400円)、スリコギに「なめてっと、すりつぶすぞ」って書いてある。 「なんで持ってるの?」 「これないとさ、やばい」 なんで? セイラ助手席にすっぽり収まって、彼女さんみたい。すり鉢抱えてなければのハナシ。 「大丈夫かな。いきなり行って」 『R』(どっぷりだね。こう言うようになっちゃ)に参加するにはいろいろメンドーな手続き(血の団結式とか?)がいって、今夜ってわけにはいかないから、ウチらはオシノビってことらしい。カリンが、 「こっちは辻沢の住人だから、『すみませーん、道に迷っちゃってー』で、とーす」 「住人が道に迷うムジュン」 ってセイラ。 「うっさい、黙れ笑」 宮木野神社前。境内に誰もいなさそう。ジーって虫の声だけしてる。 「たしか、ここがスタート地点のはずだけど」 「『R』見てみよ。何か出てるかも」 「あれ、SIMカード差せっておこられた。レイカどしたのこれ」 ガラケーに差したまんまだった。はい。ガラケー。 「イマドキ、ガラケーって。なんで?」 「だって、そのスマフォ反応悪くって」 「え? それまずいな」 セイラ、あっというまにSIMカード入れ替えちゃった。すごい。 「ぜんぜんフツーに動くよ。接触かな」 どぃうこと? 「まだ
スレッター、例の『スレーヤー・R』ユーザ専用SNS、ちょっと分かったことがあるから見て欲しいって、カリンが。やだなって思ったけど、この間、バス停でカリンが言った「シオネとココロのため」ってのが気になってて。 「ココロやシオネをあんなにした奴がまだのうのうと生きてると思うとね」 「なんで生きてるって思うの?」 「殺したヴァンパイアが死なない限り、ココロやシオネはあのまんまだから」 「それとゲームと何の関係が?」 「そいつがゲーム運営にかかわってる気がするの」 また、気がするなの? パソコンの画面、真っ赤で目が痛い。動画やってる。この間の連中みたいのが暗がりでスリコギ振り回してる。誰と戦ってるの? みんな仲間みたいだけど。あ、万歳した。 〈ミッションレベル1。初の改・ドラキュラ殲滅、成功。このゲームに比べれば、他のARゲームなんかクソでしょ。リアル戦闘感ハンパない。仕留めた時がめっちゃ良き。俺氏、興奮しすぎ? 次は、カーミラ・亜種。第七ヘルシング隊でした〉 〈カケダシガンバレー〉〈みんな知ってるぞ〉〈そのために高額課金に耐えたんだろーが〉〈PT名がオモすぎー〉〈氏ぬなー〉〈いや、むしろ氏んで来い!〉 だって。 「この人たち何やってるの?」 「多分『スレイヤー・R』。リアルサバゲーだよ」 「『スレイヤー・R』?」 「『V』とは違って『R』はゲーマーが実際にフィールドに出てプレーするゲームなんだ」 中の人たち本当に面白いのかな? リアルって言うけどごっこ感強い気がする。 「すごく接近して撮ってるんだね。誰が撮ってるの?」 「ゲーマー自身が身に着けるカメラで撮ってるから」 「ウエアラブルカメラ。ゴリプロっていうやつ。ヤオマンでも売ってるよ」 「これって、どっかのテーマパークでやってるの?」 「何言ってんの? レイカは。辻沢だよ。辻沢町全域がフィールド」 「この間、こいつらに遭ったじゃん。すり鉢被った奴ら」 おこられた。しょぼん。 「他に聞きたいことある?」 ないけど、ない
台所からカリンの声は聞こえない。お母さんのすすり泣きの合間に聞こえてくる、 「……優良企業の正社員に……そろそろ、いい人見つけて……お付き合いしてる人は」 みたいなこと、ウチもママによく言われたよ。 セイラは、カリンのPC立ち上げて真っ赤な画面ずっと見てる。カリンの部屋初めて。壁に大きなお札貼ってある。霊媒師さんからもらったのかな。 他にすることなくて、カリンの本棚物色。『ネコの医学』、『動物学大全』、『動物医療の最前線』、『獣医のこころえ』。ずいぶん難しそーな本読んでる。ウチ、難しい本読むと頭の中でせせらぎの音がサラサラサラってずっとしてるから、頭に入ってこない。 『女バスな人にも分かる! 経営学入門』だって。 これなら読めそう。 あ、これはー、うしし。 『ココロとカリンの交換日記No.1』。 表紙、めっちゃデコってあってココロの字で「夢」。ココロ、こういうオトメ好きだった。何書いてあるんだろ。 カリンが部屋に入ってきた。やば。カリンは壁のお札を目にすると舌打ちして剥がし、ゴミ箱に放り込んだ。ナイスシュート。カリンこわい顔。 「麦茶しかなかった」 お盆にコップ3つ。ウチ、いらないです。 「レイカ。そのノート、見てもいいよ」 こういうのなんて言うんだっけ。ジゴショーダク? なんか、トーサツした気分。カリンたらウチの横来てノートを開いて。だから、ゴメンって。 「ちがうんだ。見て欲しかった。ココロが何をしたかったか。あんなにならなかったら、今頃、どんなになってたか」 わかった見るよ。そんなに急かさなくっても。 「ココロとウチの夢の実現ノート」 カリンがノートのページを指して、 「『No.1』の最初のページ。『カリンの夢、獣医さん。ココロの夢、ネコカフェ。二人の夢、ネコにゃんリゾート(仮称)の経営』。乙女でしょ、ココロ。ウチ、獣医さんなんて夢、持ってなかったんだ。でも、ココロと一緒だったらウチもやってみようって」 そうだったんだ。全然知らなかった。 ノートの内容、全然乙女じゃなかった。バスケノートみ
ミワちゃんとナナミは、またまた用事があるって先に帰っちゃった。取り残されたウチらはカラオケ行ったけど、すぐ飽きちゃって『この花』の主題歌みんなで歌ってお開きにした。泣けた。 「レイカ。あのね」 「セイラ。ゲームなら」 そんなだから、ミワちゃんたちも。 「分かってる、でも」 カリンがセイラを制して、 「レイカ、今日、車あるから送るよ」 ありゃりゃ、まだ9時じゃん。ニーニーのいるあそこに戻るの、やだな。 「ゴメン。カリンち、泊めてくれないかな」 「え? いいけど。汚いよ」 「それなら、セイラも行く」 「PK?」 「なに?」 「PKってく?」 「パンツ買って行くでPKは無理あるよ」 うわー。ムラサキの軽自動車だ。これがカリンの車? ウチ、後ろ乗るー。おっと、横に開くのね、このドア。バスケのボール置いてある。わかるよ。女バス出身者の心のよりどころだもんね。ガーーバン。ふーん、中こんななんだ。わりと広いね。天井も高いよ。アタマ、ほれ、ほれ。届かない。座席もっふもふのふっかふか。気持ちいー。 「ナニあばれてんのよ。レイカ」 「ごめん。つい」 カリンが運転してる。コーコーの同級生が運転する車に乗るのって変な感じする。ってか、カリンの運転アライ。酔った、テキメンニ。 途中一回エチケットタイム設けてもらったけど、何とかたどり着いた。カリンの家は、東揚屋団地。お母さんと二人暮らし。 「入りなよ」 「おじゃましまーす」 「おじゃましまーす」(小声)。 「おかーさん、ただいま」 「夜分にすみません。お邪魔します」 「あら、カリン。おかえ……。ひいーーーーーーーー!」 おかーさん、奥に行ってドア閉めちゃた。 「あ、やっば。このかっこ」 そっか、「血塗られたJK」じゃやばいよね。 ゴリゴリゴリゴリ。 「すぎこぎごりごりもうすぐあさがごりごり……」 カリンのおかーさんてば台所の隅ですり鉢抱えて、
第2回女子会のお知らせ。場所、ひさご。時間、6時から。参加者、ミワちゃん、ナナミ、セイラ、ウチ。カリンは行けたらいくって、99パー来ないセオリー。 ナナミがゴリゴリゴリ。(ゴリゴリ以下、略)。 「レイカ、ココロに会ったんだって?」 「ホント? セイラしばらく会ってない」 「夏の制服着てたよ」 「「「それみんな知ってるから」」」 ってどぃうこと? 「シオネはみんな会ってる。ココロは会ったり会わなかったり」 「ココロは人を見るからさ」 ココロは前は誰とも仲良かったはずだけど。 「シオネなんかユニフォーム姿だもん。感じてないんだろーけど、やっぱ寒そーなときある」 バスケのユニフォームは基本ノースリーブに短パンだからね。冬は堪らんね。ん? セイラの金髪って。 「いなくなったの夏前だったからね」 「セイラ、先週シオネに会った」 「どこでよ?」 「役場の駐車場」 やっぱりあのカップル……。 「シオネって青墓周辺じゃなかった?」 「役場と青墓とじゃ、かなりの距離だしょ」 「シオネなら」 「「ありえるか」」 「ウチはいつココロに会えるだろ」 ミワちゃんが、 「あたしはヒマワリに会いたい」 なんかやばい。あの子たち、みんなのところにショッチュー来てるって。んで、返事すっと襲って来るとか、マジ怖い。カリンが今日来てないの襲われたかもだって。マジで? 「カリン、ハズすから」 「それなー」 「しかも、カンジンなとき」 「それー」 「4ピリ残り三秒、逆転のスリーポイントとか」 「そうだったー」 「あれは誰でもシビレるよ」 なんでか、楽しそーだな。 「レイカ、さっきから何やってるの? セイラの髪の毛束ねて」 「うん、ちょっと」 やっぱ、こうやってポニーテールにすると、あの時の彼氏さんだよね。金髪男くん。 酔った。ワル酔いした。ミワちゃんが勧め
湧き出た男が言う。 「必須グッズに山椒のスギコギがあるけど、辻沢のヴァンパイアがなんでも山椒に弱いってのは、半分本当で半分うそ」 こういうマンスプレイニング男には教えてちゃんになるのが一番。 「ど、どういうことですか? だって、山椒の木にはヴァンパイアは寄り付かないって」 辻沢の常識だ、そんなことは。 「マニュアルどおりにやってちゃ、命幾つあっても足りないってこと。ヤツラには刀とかの金属製の武器は首以外効かないから、みんな山椒で作ったスリコギを持つんだけど、向うさんは怯む程度。でも山椒の古木の武器は一突き出来れば麻痺させられる。そうしておいて首を刈る」 「え! 首を刈る?」 オーゲサなリアクション。 「あ、今のは言葉のあやだよ。首が弱点だからそこを狙うって意味」 なるほど。 「僕たちさ、ついこの間、返り討ちに遭ってね」 あ、後ろの方たちお仲間さんですか? こんばんわ(無声)。まー、Tシャツお揃いで。ウニクロで作ったのかな? 左奥の人、腕に包帯してる。 「いないはずのツレに不意を突かれてさ。けど、この古木の木刀のおかげで死なずに済んだ。これ僕の佩刀」 なに? 先っちょ見ろって? 赤黒い染みがついてる。なるほどあんたの勲章ってことか。 「死地からの生還デスカー。すごいですねー。それでツレっていうのは?」 「ヴァンパイアはシンとツレでセットなんだよね。辻沢のヴァンパイアは女だけだからヴァンパイアの女をシン、他は眷属でツレ。つまり手下の人間。こいつは男女分けず複数いる場合があるから厄介」 ふーん、どっからの情報なんだろ。そういうルールってことかな。 「ツレの方も殲滅するんですか?」 「まさか。僕たちは殺人鬼じゃないよ。あくまでもヴァンパイアスレイヤーだからね」 そうだよね。いくら裏ゲームだって殺人はないよな。あれ、上の方にある黒い木刀、同じやつ町長室にあった。 「こっちの黒い木刀は? 他の3倍の値段しますけど」 「それ? 黒古木刀。樹齢を重ねた山椒の木は稀に芯が黒くなることがあってそれは超堅い。その芯だ
とは言うものの。何から手を付ければいいか? 位置情報が駄々洩れになってるのは最近になって会長に気付かれて行動追えなくなったらしいし。会長の案件は、町長と繋がってる。町長の案件は、お師匠さんの案件に繋がってるっポイ。どれも闇の匂いプンプンさせて。どうしよ。とりあえず、子ネコちゃんにミルクあげに行こ。 仕事のこと考えながらミルクあげてたら、子ネコちゃんにミルクたんまりこぼされた。ミルク飲みながらげっぷするから着てるものドロドロになった。 セイラから電話だ。「はい。いいよ。大通りのヤオマンに行くところ。うん、行けそうにない。え、そうなんだ。『出会い系蛭人間祭』? エンカウント率がいつもの3倍。わかった。女子会終わった頃合流しよう。うん。じゃ」合流するにしても、この格好はちょっとまずいな。 着替え買うつもりで遅くまで開いてるカイシャの系列ショップ来てみたら、なんなのこのコーナー。コスプレ充実度の異常さ。カイシャもいろいろ手出してるんだな。どれがいいかな。おっと、セーラー服だ。たまにこんなの着るのもいいか。辻女っぽいのはないかな。あった、まんま辻女の夏服じゃん。あれ? 何これ、血がプリントされてる、べっとりと。ま、いっか。今着てるのよりはちょっとはましだし。「これください」「『血塗られたJK』ですね。サイズはMでいいですか? 3400円になります。お支払いは?」「これで、お願いします」 ゴリゴリーン。さすがプラチナカード。店員さん受け取るとき一瞬のけぞった。 えっと、どこで着替えようか。トイレはあっちか。「お客さん。スレーヤさんですよね」(ささやき声)「え? あ、はい。そーです」(ささやき声) うそこいた。細かいこと言って悪いが、スレーヤでなくスレイヤーな。大丈夫か? この店員。「なら、奥の別室に専用のショップありますから、見て行かれませんか?」(ささやき声)「そうなんですか? 行ってみたいです」(ささやき声)「ではお連れします。あの、スレーヤカードを一応」(ささやき声) 財布探すふり。「忘れました。また出直します」(大