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悪い男2

Auteur: 相沢蒼依
last update Date de publication: 2025-10-26 05:19:03

好きなヤツの行動を、簡単に導き出してしまう自分を嘲笑いながら目を閉じると、彼女に向かって優しくほほ笑む藤原の顔が、まぶたの裏にしっかりと映り込む。

1年前はこんなふうに元カレが笑ってくれたらいいなと、何度も思った。ヤるだけヤって、気に食わないことがあれば、容赦なく暴力を振るう元カレにほとほと嫌気がさして、自分から別れを切りだしたのは必然だった。

すると別れた腹いせに、元カレが大学構内であることないことをでっち上げた噂を広めやがった。

『那月は誘えば簡単に跨ってくる、ビッチなヤツだぜ』なんていう、信じられないことをあちこちに吹聴しまくったせいで、大学内にいるときはベッドのお誘いが絶えなくなったのである。

もちろん、すべて断った。ただひとり、藤原を除いて――。

あれは半年以上前のこと。青空が眩しく見えるのに、そこまでも暑さを感じない気候的には最高の環境下、大学の中庭にある大きな木の下で、俺はひとり読書にふけっていた。

ありもしない噂をバカな元カレが方々に流したことで、ベッドのお誘いと同時に、みんなから奇異な目で見られることにほとほと疲れきってしまい、人との付き合いを極力避けて
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    「おまえさ……」「はい?」「いや、いい」「言いかけてやめないでくださいよ、気になります!」 瞬時に今後の展開を悟り、言葉を飲み込んだというのに、宮本は橋本の耳元で騒ぎたてた。「陽さん、そうやってわざと意地悪して、俺の気を惹こうとしてますよね?」 橋本を見つめる宮本の視線は、言わないと何かするぞという、脅しのようなものを感じさせる。「別に意地悪じゃねぇよ」「だって好きな人の言葉は、どんなものでも気になるのに。俺が同じことをしたら、知りたくて堪らないでしょう?」「どうだろうな」 言いながら視線を逸らして宮本から逃げると、わざわざ耳元に顔を寄せてきた。「もういいです。意地悪な陽さんなんて知らない!」 宮本は大声で叫ぶなり、握りしめていた橋本の手を放り投げ、ぷいっと背中を向ける。 そこまで怒ってる感じは伝わってこなかったものの、直前までイチャイチャしていたので、余計に寂しくなった。「雅輝……」 逸らしていた視線をもとに戻すと、大きな背中が目に留まる。その肌には自分がつけたらしい、爪痕がくっきり残っていた。散々感じさせらて、しがみつくように宮本に抱きついた記憶がある。「…………」 宮本を傷つけないようにすべく、きちんと爪を短く切ったはずなのに、残ってしまったひっかき傷は、橋本の中にある黒い部分を引き出すものになった。「今の愚痴、江藤ちんに報告するんだろ?」 恋人を傷つけたくないのに、言いたくないことをわざわざ告げてしまう、自分の不器用さに、イライラが増していく。「どうでしょうね」 橋本の言葉を真似したのか、同じ対応をされてしまった。「あのさ、俺……」「――なんですか?」「ふざけていないと、つい口走りそうになってさ」 渋々橋本が話しかけたら、ちょっとだけ顔を向けた宮本。見つめられるその視線に耐えられなくて、まぶたを伏せながら言の葉を紡ぐ。「雅輝が好きだって言いそうになるんだ。その……変なタイミングで気持ちが込み上げるってゆーか、脈略もなく言いたくなるときがあって、すげぇ困ってる」 橋本は一気に言い終えたあとに、ぶわっと頬が熱くなるのを感じた。

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    「陽さん、はじめてですよ。こんなにイったの」「はじめて?」「すごくないですか、これ」 ニコニコ微笑まれながら、目の前に差し出されたものは、宮本自身につけていたゴムだったのだが――。「……ずっと、イってるなとは思っていたが。その量、半端ねぇな」「陽さんにたいする、愛情も含まれているせいですけどね」「あ~はいはい……」 いつものようなやり取りに橋本は照れて、ぱっと視線を逸らしながら、自身の汚れを手早く拭っていった。 宮本は手にしたゴムを捨てて、橋本の傍に寝転んぶ。「ねぇ陽さん」「あのさ、雅輝」 妙な間のあと、同じタイミングで話しかけたふたり。互いの顔を見合わせながら、唇を動かそうとしたのに、そのタイミングも同じで、あまりの仲の良さに吹き出した。「やべぇな、俺たち」「まるで、鏡合わせみたいでしたね」 クスクス笑いつつ額をくっつけて、どちらからともなく手を握る。「雅輝と同じことを考えてるって自信、俺にあるんだけど」「俺も。だから一緒に、せーので言ってみません?」 宮本が触れるだけのキスを橋本にしてから、ふたたび見つめ合う。「わかった。せーの!」「「指輪っ!」」 部屋に響いたふたりの短い言葉は一瞬でなくなったのに、不思議と耳の奥に残った。「俺としてはモテモテの雅輝に、付き合ってる相手がいることを知らしめるべく、指輪をしてやりたいんだけどさ」 橋本は繋いでいた手を目の前にかざし、宮本の左手の薬指に反対の手ですりすり触れた。その感触がちょっとだけくすぐったくて、宮本は笑いをかみ殺しながら口を開く。「俺だって陽さんが他の人に目がいかないように、指輪をしてほしかったりするんですけど」「いかねぇよ、そんなの」「今日行ったレストランでも、会計のときフロアを歩いたら、女性だけで食事していたグループに、熱視線を飛ばされていましたけど!」「それはおまえにだろ」「違いますって。俺があげたネクタイピンがキラッキラ輝いていて、陽さんの男前度があがったせいです」 異様に自分を持ち上げる宮本に、橋本は辟易した。「雅輝、今日はやたらと俺を持ち上げてるけど、何か思うことでもあるのか?」「ないですけど。ん~やっぱり、俺の家族に陽さんが認められたのが嬉しかったからかなぁ」 言いながらくすぐったい原因の橋本の手を取り、同じように薬指に触れてから、宮本

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    ☆ ⌒Y⌒Y⌒Y⌒ ベッドの上で仰向けになっている橋本は、喘ぐ呼吸もままならない状態だったが、懇願せずにはいられなかった。抵抗すると、それ以上に責められることがわかっているので、シーツを握りしめて我慢する。「ううっ、頼むから雅輝、恭介にメッセする気力っ…くらいは残してくれ、よっ」 橋本の自宅に到着後はじまった行為は、いつも以上にネチネチしたもので――。「だって陽さんがカッコいいせいで、俺の性欲が高まりつづけて止まらないんです」「勝手に高まるな! しかもっ、俺の躰がおかしくなるような責め方をするなって」「でも気持ちいいんですよね? さっきから中がヒクヒクして、俺のを気持ちよくしてます」 あきらかにつらそうな顔の橋本を見ながら、宮本は腰をゆっくり前後に動かしつ、意味深な笑みを唇に湛えた。「それはおまえが狙い撃ちするからだろ、変になるっ、ンンっ」「だって陽さんが気持ちいいと、俺も同じ気持ちになるし。もっと変になって」 橋本の両膝を易々と持ちあげるなり、そこを狙ってぐいぐい突っついた。「やめっ、そこばか、りっ」 下半身を捻って宮本の動きをやり過ごそうとした橋本に、自身の肩に橋本の片膝をのせて腰をぐいっと奥に進めた。もう片方の足はベッドに戻すと、フリーになった手で胸の頂きを摘む。「ぅ、んっ!」 ぴくんと跳ねる橋本の躰に連動するように、宮本も上半身を震わせた。「ヤバい、自分で自分の首を絞めてるのがわかるのに、陽さんをどんどん追い詰めちゃう」「おいつ、める、なっ」「追い詰める、よっ、一緒にイこう?」 我慢できなくなったのか、もう片方の宮本の手が橋本自身を激しく扱きはじめた。「あぅっ、あ、ぁあっ…もぅダメっ、イ、くぅぅっ」 快感に身を任せた橋本が宣言通りにイくと、宮本も後を追うように中で爆ぜた。「ま、雅輝っ…あっん…」 達したばかりだというのに、宮本自身から注がれる熱が直に伝わり、妙な高揚感を与える。「おまっ…いつま、でイってる、んだっ」 ドクンドクンと脈を打つようにいつまでも注入されるせいで、どうしていいか全然わからない。先にイってる関係で、先に橋本の躰が冷静になりかけていた。

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    橋本は片手を使って、顔をぱたぱた扇ぐ。そんな恋人の顔を、宮本はきょとんとしたまま見つめた。「剛速球なんて、投げつけてないのに。俺の素直な気持ちを言っただけですって」「おまえの気持ちがピュアすぎて、腹黒い俺には衝撃が半端ねぇんだよ」 言いながら橋本がテーブルに突っ伏しかけた途端に、グランドピアノのほうから拍手喝采が聞こえてきた。「あ、恭介の演奏、全然聞けなかった」 しまったと思ったときにはすでに遅し。グランドピアノの周りにいは、いつの間にか人だかりができていて、その中にいる榊は苦笑いをしつつ何かを言いながら、和臣のほうを見ていた。「俺はキョウスケさんの演奏のお蔭で、陽さんにプレゼントを渡すことができました。話をしながらでしたけど、素敵な演奏に耳を傾けていましたよ」「アイツら、このまま帰るっぽいぞ」 人だかりの中から和臣の手を引っ張った榊が、出口に向かって歩き出した。名残惜しそうな顔した和臣がコチラに振り返る。橋本は遠くから見てもわかりやすいように、大きく右手を振り、宮本はニッコリ微笑みながらピースサインを作った。「あとでメッセしておくか」「俺の分までお願いします」 榊たちが去ったあとは、蜘蛛の子を散らすよう席に戻っていく。しかしピアノを演奏する者がいず、人々の囁き声がそこかしこから聞こえてきた。「キョウスケさんの素敵な演奏のあとだと、やっぱり弾きにくいのかもしれませんね」「そうだな。ずっとピアノを弾いてたヤツに比べて劣るところはあるのに、勢いというか聞き入ってしまう何かを、恭介はもっていたと思う」「陽さんってば、ピアノの音の違いなんてわかるんですか?」 宮本は顎を引きながら、目を瞬かせる。「若い頃はジャズやクラシックなんてジャンルにとらわれずに、いろんな音楽を聞いていたし。耳はいいほうかな」 橋本の説明を聞いた宮本は、嬉しさを表す感じで瞳を細めた。「やっぱり、陽さんの引き出しは大きいなぁ。今度教えてくださいね」 喜びに満ちた弾む声を聞きながら、橋本はネクタイピンを手に取り、締めているネクタイにつけてみる。スーツの隙間から覗くそれは、ギリギリのラインでスターサファイアが見え隠れした。「……似合うか?」「男前二割増っス! ますます惚れちゃいそう」「ああ、そう……」 またしても宮本に直球を食らった橋本は対処に困り、視線を右往

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    「ゆ、指輪!?」「やっ、いきなりそういうのは重いと思って、やめたんですけど」 赤ら顔の宮本を見ていうちに、橋本の頬も赤く染まっていった。「俺は別に、重たいなんて思わないけどさ」 本心を言いながら置かれたままのケースを素早く手に取り、静かに蓋を開けた。「これは……」 中に入っていた物の輝きに、目を奪われる。フロアの天井にぶら下がっているシャンデリアの光を受けて、瞬くように輝いているそれを、瞬きを忘れて見入ってしまった。「ネクタイピンです。それなら仕事で使えるかなって」「このくっついてる石はなんだ?」 橋本は恐るおそるそれを突っつきながら、宮本に訊ねた。ネクタイピンについている石は大きくないものの、青く輝く色合いと中に浮かび上がっている星模様で、高価なものだというのが見てとれた。「……スターサファイアです」「っていうことは、このシルバーはプラチナでできてるんだな?」「ご明察通りっス……」 ネクタイピンが落ちないように、ボタンに引っかけるチェーンがついているが、何かの拍子でチェーンが切れたりしたらと思うと――。「仕事でこれを付けるには、かなり勇気がいるな」 ハイヤーの運転手として、ただハンドルを握るだけじゃない。お客様から預かった大きな荷物の運搬など稀にあるので、躰を動かすこともしばしばある。「そんなこと言わずに、付けてほしいです。なくなったら、また買ってあげますから」「また買ってあげるなんて言ってるけど、ほいほい買える代物じゃねぇだろ。おまえの趣味を封印してまで買ってることくらい、俺にはわかるんだぞ!」「スターサファイア、石の意味知ってますか?」 宮本のお財布事情を知っていたので、あえて口にして指摘したというのに、いきなり話題転換されて、橋本の頭がパニくる。「博識の恭介じゃあるまいし、そんなの知らねぇよ」「運命です。俺にとって陽さんは運命の人で、その星の輝きと同じように、陽さんはキラキラしている俺の憧れの人なんです」「ぶっ!」 臆することなく真顔で説明した宮本に対し、橋本は顔だけじゃなく、全身が火照ってしょうがない状態に陥った。「雅輝てめっ、よくもそんなこと、素面でペラペラ言えるな。俺のどこがキラキラしてるのか、全然わからねぇよ、まったく。プレゼントつきで、剛速球投げつけてくるな。対処に困ってしょうがねぇ……」

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    「恭介のヤツ、なにか弾く気だ。和臣くんのために、カッコいいところをみせようって魂胆だな」 橋本が笑いながら説明したら、宮本も遠くにいるふたりに視線を飛ばした。「キョウスケさん、すごいですね。ピアノも弾けちゃうなんて」「外資系の証券会社にお勤めの、仕事ができる超イケメンで、なにをやらせても器用にこなす男を、絶対に俺は敵に回したくはないな。っていきなり難易度の高そうな子犬のワルツを弾くって、やっぱりすげぇ……」「二匹の子犬が、仲良くじゃれあっているように聞こえます。楽しそう」 そのまま演奏を続けると思ったのに、変なところで音は鳴りやみ、榊が両手を膝に置いたまま、橋本たちを見る。それにつられるように、和臣も自分たちを見て、なぜかピースサインを送った。「陽さん、俺たちを見てますよね?」「そうだな。これから、なにかあるのかも……」 視線をピアノに戻した榊は、深いため息をついてから細長い指で力強く鍵盤をたたく。高音から低音にメロディが流れるその前奏は、アレンジされたものだとすぐに気がついた。「これって、恋人はサンタクロースって歌ですよね。なんか原曲よりも、すごい迫力がある感じ……」「なんつーか、雅輝の運転に似てる気がする」「へっ? 俺の運転ですか? こんなに激しくないですって」「おまえはそう思っていないだろうが、隣で乗った俺の印象がそのまんま、演奏でうまく表現されてる。恭介は乗っていないのにこんな表現ができるということは、和臣くんから聞いた感じを、ああやって音楽で表しているんだな」 一音一音が弾んでいるだけじゃなく、軽快でリズミカルな雰囲気は、宮本がコーナーを駆け抜けるときに見せる表情みたいだと、橋本はつけ加えた。「あのね、陽さんっ」「なんだ?」 曲がちょうど、サビの部分に突入したときだった。それを耳にしながら、宮本の顔を見る。(恭介のチョイスした歌が『恋人はサンタクロース』だからか、雅輝がサンタクロースに見えなくもない)「これ、受け取ってください」 宮本は橋本のデザートが置いてあった場所に、濃紺のビロードの箱をそっと置いた。見るからに宝飾品が入ってますというそれと、宮本の顔を交互に眺める。「安心してください、指輪じゃないんで」 橋本が問いかけようとした矢先に、たたみかける感じで告げた宮本の顔は、耳まで真っ赤になっていた。

  • BL小説短編集   チェンジ The デート

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    *** 目が覚めて隣を見たら、自分が横たわっていた。口を開けて涎を垂らしながら寝ているアホ面を目の当たりにして、微妙な心境になる。(雅輝だと、こんな寝方をしていても可愛いなで済むのに、自分だと冷めた目でしか見られない……) これは夢の中の出来事――そのことに含み笑いをしつつゆっくり起き上がってから、うーんと伸びをしてみる。 いつも感じる、年齢による躰の重ダルさがまったくなく、むしろ爽快感しかなかった。 宮本としては中折れ後にうまいこと復活し、半日イチャイチャして過ごしたお蔭もあるだろう。夢の中だけどメンタルと躰がばっちりな状態なのを、橋本はしみじみ体感した。意味なく右腕を曲げて、力

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