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悪い男

Penulis: 相沢蒼依
last update Tanggal publikasi: 2025-10-25 09:51:36

今日は聖バレンタインデー。女のコが好きな男に、想いを込めたチョコを渡す日。そんな大切な日なのに本命の彼女のところに顔を出さずに、俺の家にひょっこり現れたこの男は――。

「あっ、あっあぁっ!」

ベッドの上で俺の腰を抱えながら、バックでめちゃくちゃにしていた。ちなみに男には、一目見ただけで心を奪われてしまうくらいの、すごくかわいい彼女がいる。

「おまえ、相変わらず感度いいよな。感じるたびに、ナカがよく締まる」

男は喉の奥で笑いながら、背後から筋肉質な二の腕を胸元に伸ばした。そのまま乳首を指先で転がす。とことん俺を感じさせるように、肌をなぞる手の動きや腰使いだけで、今まで散々遊び倒してることが、嫌なくらいにわかった。正直に言えば大好きだった元カレ相手では、こんなに感じたことがない。

「はぅっ…あっ…あっ」

激しい腰の動きに合わせてベッドがギシギシ軋んで、ヤっていることをまざまざと思い知らされる。挿入されただけでイキそうになるのは、この男と寝てからだった。それだけ、お互いの躰の相性がいいのだろう。

「ちょっと触っただけで、乳首をこんなに固くして。しかも感じるたびにナカが痙攣して、ぎゅんぎゅん締まる。やべぇな、相変わらずエロい躰して、那月」

背中でいやらしく笑う感じが、吐息にのって伝わってきた。

「んっ…きもちぃい…ょ。もっとし、てっ…ンンっ!」

喘ぎ混じりに、淫らな啼き声をあげる。するとリクエストに応じた男は、さらにストロークをあげた。

「うっ、くっそ、腰止まんね。気持ちよすぎ……」

男の動きと比例するように卑猥な水音と、互いの荒々しい呼吸音が部屋の中に響き渡る。

「あっあっ止め、ちゃ、やあっ…いっぱぃ突けよ……もっとぉ!」

興奮する材料になるギシギシという大きな音に合わせて、俺も負けじと腰を振りまくった。

「わかってるっ、これ以上ナカ締めんな…っぅうぅ」

胸元にあった腕がふたたび腰に添えられ、これでもかと男のモノが出し挿れされる。激しく貫かれるたびに太ももにまでローションが滴って、お互いの下半身を淫らに濡らした。

ずっと我慢している熱が分身にじわりじわりと集まり、吐き出したくて堪らなくなる。

「あっ…んんん、またっ!」

「ん、イけよ、っ俺も…」

最奥を強く突かれた衝撃で、頭の中にぱっと綺麗な火花が散った。躰がトロけそうな快感を引き出そうと、内奥にあるものを押し出す。

「アアッ!」

「うぅっ……!」

俺が弓なりに腰をしならせたら、男はナカでどくんどくんと脈を打ち、背中に抱きつきながら痙攣する。中でイッた男の感触を確かめながら、自らも欲をシーツに向かって放出した。

(俺の中で盛大にイったあとに、これから彼女と逢ってヤるんだろうな……。受け取ったチョコのお礼をすべく、彼女を感じさせるために念入りに愛撫して、俺みたいにとことんまで感じさせるのか。ここで一発抜いてる分だけ、余裕ありまくりだろ……)

絶頂した快楽にずっと浸っていたいのに、一気に覚めていく頭の中で、このあとおこなわれるであろう男の行動を、自動的に思い描いてしまった。本当はそんなこと、ひとつも考えたくもないのに――。

うつ伏せのまま、ベッドの上で脱力している俺を尻目に、男は身を翻してさっさと身支度を整え、いつも着ているブルゾンを素早く羽織る。ヤることヤって満足したら、俺はお払い箱。どんなにヤっても妊娠する心配はないし、これって本当に都合のいい関係だと思う。

「藤原、もう行っちゃうんだ。もしかして、彼女と待ち合わせしてるとか?」

今日はバレンタインデーなんだから、そんなことを聞くだけ野暮かもしれない。野暮なことだってわかっているのに、聞かずにはいられない俺はバカだ。

「まぁな。これやる」

ブルゾンのポケットから薄っぺらい箱状の物を取り出し、枕元に投げて寄こした。なにかくれるのなら、『せめて手渡ししてほしかった』なんて俺がワガママを言ったら、間違いなく藤原の機嫌を損ねて、なにも貰えなくなるだろう。

「なんだよ、これ?」

枕元に投げて寄こされた箱状の物を横目でしっかり確認してから、俺を見下ろす藤原に視線を飛ばす。するとなぜか、顔を思いっきり背けられてしまった。

「知らない女からもらった、チョコらしきもの……」

俺から顔を逸らすという素っ気ない態度や、感情のこもっていない返事のせいで、だだ下がりしていた俺のテンションが、さらに落ちていく。知らない女からのチョコを俺に寄こすという藤原の神経の太さに、唖然とするしかない。

それでも俺はこれに対して、冷淡な応対ができるわけがなかった。好きな男に逃げらないように、精一杯の作り笑いを頬に滲ませる。

「アハハッ。これから彼女と逢うのに、知らない女からもらったチョコなんて持ち歩けないもんな。しょうがない、俺がいただいてやるよ」

あくびを噛み殺しながら起き上がり、チョコらしきものが入ってる小箱を手にした。

「そういう那月は、これから誰かとデートするんだろ?」

俺が笑ったことにより空気が変わったのを感じたのか、藤原がこっちを向いて問いかけた。しかしながら相変わらず口調が淡々としていて、らしくない感じだった。

「予定が入ってたら、いつまでもこんなふうに、ダラダラしてないって。誰かに呼び出されて、チョコを貰うなんていう奇跡なんか、俺には絶対に起きないしさー」

「案外ビッチな那月とヤりたくて、チョコを用意してる奇特な男がいるかもよ?」

いつものようにヒラヒラと右手を振って出て行く、藤原の大きな背中をベッドで見送りながら、部屋の中に響くような大きな声をかける。

「ビッチな俺よりも、バレンタインに浮気するアンタのほうが、充分悪い男だと思うけどー!」

本当は行くなと言って、彼女のところに行かせないように抱きつきたい。でもそんなことして藤原を困らせたら、この関係は間違いなく破綻する。

(だから俺は我慢して、ここから見送るしかないんだ――)

本音を漏らさないように、こみ上げてくるものを抑え込んだら指先に力が入り、持っていた小箱が少しだけ変形した。

「悪い男なんてセリフ、おまえに言われたくないよ。またな!」

顔だけで振り返り、颯爽と出て行った藤原。愛しの彼女を待たせないように、さっさと出て行ったのだろう。いつもの彼なら、ベッドの中で俺と一緒にひとしきりゴロゴロしたあとで、今みたいに出て行くのに。

「藤原を想う女のコから貰ったチョコを、浮気相手の俺に寄越すなんて、マジで悪い男だ。超最低だろ……」

小さな呟きは、静まりかえった室内に溶け込む。藤原には絶対に聞かせたくない俺の本音。壁打ちに似たそれに、やるせなさを感じた。

(あーあ。俺から藤原にチョコをあげたらきっと迷惑がって、同じように誰かの手に渡るんだろうな。そんな考えがあったから、チョコを買わずに済んだけどさ)

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