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悪い男3

Author: 相沢蒼依
last update Huling Na-update: 2025-10-27 11:01:07

 こんな人目のつく場所で、キスするような派手なことをしやがってと思ったが、大柄な藤原が自分を隠すようにキスしていることに気づいた。空いている片手で目の前にある胸を連打したら、呆気なく唇が解放される。

「っ……。アンタ、なにを考えてるんだよ?」

 かわいい彼女持ちの藤原が、誰かと浮気しているのを目撃されないようにとった、咄嗟の配慮なのかもしれない。そんな考えが容易に導き出されてしまったのに、思わず訊ねてしまった。

「那月目当てのヤツに見られたら、ここぞとばかりに嫉妬されるかもしれないだろ。大学構内ではかなりの有名人だからさ」

 腰に手を当てながら俺の顔を見下ろし、得意げに豪語されても信用できるわけない。だってコイツは遊び慣れてる。さっきされたキスのうまさが、すべて物語っていた。

「自分の保身のために、やったんじゃないのか?」

「まさか! さっきのキスくらい、彼女に見られても全然かまわないし、その先もOKだって」

 飄々と言ってのけた藤原を、このときは穴が開く勢いでじっと見つめてしまった。遠くから見ていた印象とはまるで違う、この男の底の知れなさに、俺自身が沸々と興味がわいてしまったのである。

(気がつけば、クリスマスイブもヤっちゃったし、こうしてバレンタインにも寝てるなんて、まんま愛人みたいな関係だよなー)

 そんなことを思いながら、しっかりベッドから起き上がり、手にしている物に視線を落とした。

 クリスマスプレゼントはなかったくせに、他人から貰ったバレンタインのチョコを横流しするような悪い男に、まんまと手懐けられてるみたいだった。

 躰だけじゃなく気持ちも散々翻弄されて、いつしか藤原の傍にいることに、居心地の良さを感じている始末。遊び慣れたアイツの手腕なのか、俺を押さえるポイントをきっちり見極めて行動されるせいで、どうしても求めずにはいられなかった。

「マジで悔しい! 本命になれなくてもいいやとすでに諦めてるのに、なんだろうな、このムカムカする気持ちは。藤原のことが好きな女のコから貰ったチョコを俺に投げて寄こした、酷い男だって言うのにさー」

 女子受けしそうなかわいらしい包装紙を苛立ちまかせにビリビリ破り、自分が変形させた箱を開ける。すると中からハート柄で装飾された、一枚の小さなカードが出てきた。

【好きな相手に、あなたの想いが届きますように】

 多分、洋菓子店がサ
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