LOGIN不機嫌そうに悠さんが言うと、そのおばあさまはようやく私の存在に気付いたようだった。「まあ!こちらのお嬢さんが坊ちゃんの?可愛らしいお嬢さんだこと!私、ここに長年お仕えしております、トミ子と申します。ささ!皆様お待ちですよ!」「なかなか来ないと思ったら。トミ子さん、悠が来たらすぐ案内するよう言ったでしょう?」これまたお上品なマダムが。恐らく悠さんの育てのお母さまだろう。「初めまして。結城美咲と申します」「お待ちしてました。悠の母です。トミ子さん、話が長いわよ。さあ、行きましょう」姿勢良くスラっとした、映画に出てきそうな素敵な方だ。悠さんのお母さまとトミ子さんの案内で、応接間へと入った。立派な応接間に通された。社長の邸宅なのだから当然なんだけど、テレビとかでありそうな「社長の御宅訪問」みたいな番組で見たことあるような、あの、応接間だ。天井がシャンデリアの家に訪問するのは人生で2度目だ。1度目は水無瀬にいた頃に生徒の家庭訪問で通された応接間だった。その家も、やはりお父さんが社長だった。「失礼します。初めまして。結城美咲と申します」「こんにちは。そちら、お座りください」応接間にあるソファは複数箇所座れる所があって。そちらって、どちらですか?って聞きたくなるぐらいなんだけど。困って悠さんの顔を見たら、先に彼が座ったのでその隣に座った。「今日は、遠いところからありがとうね」「こちらこそ、お時間作ってくださり、ありがとうございます」悠さんの声を更に低くしたようなバリトンがよく響く。どこかで聞いた声かと思っていたら、居酒屋の大将と声がよく似ているのだった。ああ、面接みたい。いや、これは紛うことなく面接だ。それも、人生最大の。「悠は、その…あれだ。我が家の家庭事情は、聞いたかい?」「はい、悠さんから伺っております」視線を真っ直ぐに向けられ、黒目までじっと見つめられている気がする。権力者特有のものかもしれないけど、悠さんと付き合い始める前後にも、彼から同じ視線を受けたことがある。お父さん譲りの仕草なのだろうか。「それなら話は早い。会社は悠の兄の隼《はやと》が継ぐことも聞いているかい?」「はい」斜向かいのソファに座った、悠さんによく似た方が、お兄さんの隼さんなのだろう。目が合い、会釈をした。「悠と結婚しても社長夫人にはなれないが、それでも良いの
水はもう飲み干して、これ以上流れてくることは無いのに、口づけは終わらなかった。「ん…悠、さん…?」膨らみをそっと包まれる。先端を弾かれ、また甘い声が出る。肌に直接当たる彼自身が硬くなっているのを感じた。「待って…」「ん?何?」不機嫌そうに動きを止めた彼は、また唇を重ねようとした。「ねえ、待って!もう沢山、したでしょ?」「俺まだしたい」「私はお化粧落として、もう眠りたいの」「じゃあ、風呂に入ればいい」「え?」「お湯が溜まるまで、美咲の身体洗ってやるよ。隅々までな」言葉を失う私の手は、今度はお風呂場へと引かれていった。「ねえ、悠さん…私、もう、限界…」「しょうがないな。今日はここまでな。ベッドでは眠らせてあげるよ」言葉通り、本当に隅々まで身体を洗われた。素手で触られるのとは違って、ボディソープの滑りが加わると、また違った刺激に翻弄されてしまった。ぐったりと悠さんの鎖骨に頭を預ける。「悠さん、なんでこんなに元気なの…?」「美咲に言われたことが嬉しかったから、かな」ふにふにと私の双丘の感触を楽しむ悠さんの声に振り返ると、彼は破顔していた。その、少年のような笑顔が可愛くて、愛しくて。思わず彼の首に腕を絡めて頬に口付けた。一度では満足できなくて、頬に、首筋に、何度も。「美咲…俺、これでも我慢してるんだけど…」あっという間に硬度を取り戻した彼は私に立ち上がるよう促した。「ふう…」「美咲、その溜め息、何度目?」運転する悠さんは苦笑いだ。今日は遂に、悠さんの実家に挨拶に行く日で。手土産は彼のお母さんの好物を事前にリサーチしていたから、きっと大丈夫。パステルカラーのワンピースに、髪型はハーフアップにした。毛先は巻いていない。わかりやすい「彼の実家への挨拶」スタイルだ。「ガッチガチだな」「は…は、るかさんだって、うちの実家行った時はガッチガチだったよ?」「ガッチガチでも、俺はクリアできたからな」「いや我が家と悠さんのおうちとは、緊張度は訳が違…」「変わんないって。そんなに緊張するような家じゃ無いから大丈夫」何言ってんのこの人は。庶民の家と社長の家を一緒にしないで頂きたい。「あなたみたいな地味な子が付き合える子じゃない」悠さんの産みのお母さんの言葉は、棘のように、私をじわじわとずっと痛めつけていた。地味と言われても。
「は、るか、さん…」「ん…?」床に崩れ落ちそうな私の腰を手で支えながら膨らみの先端を味わっていた彼が顔を上げた。「早く…挿れて欲しい、です…お願い…」目を見開いた彼はまた唇を何度も重ねた。「早く、挿れてくれない、と…焦らされ過ぎて、私の身体、おかしくなりそう…」唇が離れた隙に言うと、横抱きにされた。「簡単には、挿れてあげない。俺の腕の中で、沢山、おかしくなればいい」眼先で囁いて唇を奪うと、彼は寝室に向かった。寝室のベッドに優しく降ろされた直後、身に付けていたものは全て引き剥がされた。全身にゆっくりと、でも丁寧に口づけを落とされる。口付けている間も敏感な箇所を攻め立てられて、何度か意識が飛んだ。さっきので、もう何度目なんだろうか。彼の立てるリップ音と、潤ったそこに触れられる度に聞こえる卑猥な水音。聴覚までもが性感帯になったようで、私の意識はどこかに行ってしまいそうだ。硬く屹立した彼自身に布越しに手を触れる。この、硬さが欲しくてたまらない。そんなことを思ってしまう私は、何てはしたないのだろうか。ピアノの鍵盤を触れるように、弱い音を出す時のようにそっと指先で触れる。何度も触っていると、更に硬くなった。「美咲…そんなこと、したら…」「欲しいんです、はやく…」悠さんの身に付けているものをそっと脱がせる。彼の裸体を目の当たりにして私の先端が硬くなったのを感じた。攻撃の手は止むことはない。快感に襲われる度に言葉を紡ぐことはできずに、壊れたラジオのように同じ文字の羅列しか口にできない。ぼんやりした意識の中、彼の胸に手を伸ばした。 そっと、愛しい人の胸の先端に手を触れた。「…っ…!」悠さんの顔が一瞬歪んだ。「きもちいい、ですか…?」その直後、熱く硬い彼の質量を感じた。激しい律動に、頭がくらくらする。荒い息遣いと、喘ぎ声と卑猥な水音だけが聞こえる。自分の声なのに、喘ぎ声は違う誰かの声のように聞こえる。私の意識は、最早自分の体内には無いようだ。愛しい彼にしがみついて、ただ腰を振って喘ぐだけの生き物を、私の意識は冷静に見ていた。何度も達して意識を手放しても尚、彼の律動が私の意識をこちらに呼び戻す。その硬さは変わることなく、それどころか更に硬度が増した。繋がっているそこで増した硬度に気付いた私は、また達してしまった。時折、悠さんが掻き回すような動
慌ただしくお会計を済ませ、店を出る。店を出る直前、悠さんが少し不満げな顔をしていたのが気になるけど。白井先生は地元の人しか出さないであろう、公には言えない速度で車を飛ばし、無事時間内に職員室に戻ることができた。「なあ美咲」夕食を終えて食器を片付けていた。スポンジに洗剤をつけて洗い始めた私を腕で包むこの体勢は、何度言ってもやめてくれない。本当に食器が割れないと彼はやめないだろう。あれから音楽準備室の整備をしていた。柿小の音楽準備室には和太鼓が大量に鎮座している。地域伝承の太鼓に全校で取り組んでいる為だ。それ故、本来音楽の授業で使用する楽器は音楽準備室の隅に申し訳程度に収納されている。まず、どの楽器がどこに収納されているのか。それを把握するところから始めた。一学期の音楽の授業は、音楽準備室に入りきらなかったマリンバやビブラフォン、子どもたちが持参したリコーダーや鍵盤ハーモニカで事足りていた。「悠さん、いつも言ってますけど。毎日言ってますけど。この体勢、食器洗いずらいです」「美咲、俺と結婚する決め手、何だったの?」白いお皿がつるりと私の指を滑る。「わっ」反対の手で制止して、何とか割れるのを防いだ。「悠さん…」「ねえ、何だった?」耳元で囁くように問う彼の吐息が耳に当たる。洗い物の途中だというのに、力が抜けてしまう。声が漏れそうになるのを何とか堪える。「早く答えないと、もっと触るよ…?」サマーセーターの裾から悠さんの大きな手が侵入した。下着の上から、いつもよりゆっくりと揉みしだかれて、|焦ったい。先端が硬くなるのを感じた。でも今日は、なかなか触ってもらえない。「ね、悠さん…食器、洗えない…」「なあ、早く言いなよ」彼の反対側の手がスカートを捲り上げて内腿を執拗に撫でる。そこから手が上に移動することは無い。なのに、お尻に押し付けられている彼自身は硬く、下腹部の奥が疼き出す。それでも少しずつ食器洗いを進める。通常の、何倍もの時間をかけて。その間も悠さんの攻撃が止むことは無かった。吐く息は荒くなり、段々とくらくらしてきた私は、更に作業能率を落としてしまう。「悠さん…」振り返ってキッと睨んだつもりが、力が入らず、ただ乞うような顔になってしまったのがわかる。「言わないと止めないし、これ以上のこともしない。ずっと焦らされたいの?」不敵に笑う彼は、また
「どうも。俺、日替わりで。かっちゃん、今日の日替わり何?」「エビフライだよ。すぐ作ってくるよ」勝雄さんはすっと立ち上がるとキッチンに向かった。「…結城先生だって、何か言うことあるんじゃないの?」ずっと頬を染めていた安達先生が私に矛先を向ける。これは、勝雄さんから聞いているな。「えっ?結城先生も何かあるんですか?」目を丸くした白井先生は、すぐにワクワクした顔に戻る。「美咲、まだ言ってなかったのか?」いつもの習慣でスマホを弄ろうとした悠さんは、スマホを座布団の隣に置いた。「管理職に伝えるのが先かなって思ってたから…。でも、安達先生と白井先生だったら黙っててくれそうですね」「え?何ですかその黙っていないといけないミッションは?もしや…」もう既に白井先生、楽しそうだし。「勝雄さんが戻ってきたら言うよ」「いやここまで言ったら言おうよ」安達先生が言いたくてしょうがない、という顔をしていた辺りで勝雄さんが悠さんの日替わりランチを手に戻ってきた。「日替わりお待たせ」「エビフライ、ここでは初めて出てきたな」トメさんと同じことを言う悠さんは、本当にほぼ毎日ここにお昼ご飯を食べに来ているのだろう。「ん、美味い。かっちゃん、エビフライ珍しいな」「友香ちゃんがエビフライ好きだって言ってたから。仕入れてみたら思ったより美味しく仕上がったんだよ」照れ臭そうに語る勝雄さんと、またしても頬を染める安達先生はお似合いだと思う。「安達先生がラブラブなのはめでたいんですけど。私、結城先生の話が聞きたいんですけど。もう白状してもらっていいですか?」もう言うタイミングか。「ええと、私、悠さんと結婚することに…」「ええっ…!」驚いた白井先生は、大して驚くことなくにこにこしている安達先生カップルの顔を見た。「なんだ、知らなかったの私だけですか?」白井先生は唇を尖らせて不服そうな顔をした。「私、勝雄くんから聞いてたの。でも、ご本人差し置いて私が言う訳にいかないし…」「そっかあ…でも素敵!おめでとうございます!」満面の笑みで祝福してくれる白井先生。ずっとにこにこしている安達先生カップル。この人達は私達を純粋に祝福してくれている。その事実が、とても嬉しかった。「あの、彼氏さん…のお名前って…悠さんってお呼びするのもアレなんで、名字教えてもらえます?」白井
「お待たせしました。日替わりと天蕎麦二つね」勝雄さんが私達3人分のランチを持って来た。うん、これが食べたかった。日替わりを置いた直後に勝雄さんと安達先生の視線が絡んだのを私は見逃さなかった。「エビフライ、美味しいでしょう」不意にトメさんに声をかけられた安達先生は身を固くした。「は、はい。カラッと揚がって歯応えもいいです」目が泳いでいる。挙動不審過ぎてツッコミたい衝動に駆られる。ああトメさん、貴方が会ってみたいと話していた勝雄さんの彼女はその、安達先生ですよ。「この店でエビフライを食べたのは今日が初めてだったのよ。店長さんの彼女の影響かしらね?」「はは…」だから安達先生、もうバレバレだってば!ふと白井先生を見れば、必死に笑いを堪えている。ポーカーフェイスを保つのが上手な白井先生だが、今回は口角が上がるのを止められなかったらしい。一連のこのやり取りで色々と悟っているのは間違い無い。「トメさん、そろそろ…」今日のトメさんのお連れ様は物静かなおじいさま一人だけだった。静かに席を立つと、先にレジに向かった。「ご主人ですか?」私が問うと、トメさんは少女のように頬を染めた。「彼氏なの」「「「ええっ!」」」3人とも大きな声が出てしまった。「主人はね、数年前に亡くなってるの。シゲさんとはお付き合いしてるの」「そ、そうですか…」そういえばトメさんをさん付けしていたものね。そうか、彼氏か…。「じゃあ皆さん、またね」ひらひらと手を振ってトメさんはレジに向かった。会計を終わった2人は、ドアを開けた瞬間に手を繋いだ。「うわぁお」白井先生が目を丸くしている。「トメさんとシゲさん、手を繋いでましたよ。お熱いなあ……。で?」「で?…とは?」「安達先生、まだ逃げられるとでもお思いかしら?」やっと安達先生を追及できる。この時を待っていたのだ。「さあ、吐いて頂きましょうか、安達先生?」白井先生もノリノリだ。「安達先生、彼氏出来ましたよね?」「う、うん…」3人ともランチを食べ終えていた。勝雄さんを呼んでも問題ないのだけど。どうしようかな?「彼氏、どんな人ですか?」白井先生、分かってて斬り込んでるな。「えっ…えっと…」「説明しずらいなら呼んじゃいましょうよ。すみません、コーヒーお願いします!」勝雄さんがキッチンからやって来た。「はい