Kelahiran Kembali Sang Tuan Muda

結婚十周年はちょうど息子の十歳の誕生日でもあるため、私は一か月前から計画を立て、夫と息子と一緒に家族旅行に行くことにした。

ところが出発直前になって、その父子ふたりそろって私から姿を消した。

ひとり残された私は、土砂降りの街頭に立って彼らに電話をかけた。

電話の向こうで、息子の幼い声は冷たくてうんざりしたようだ。

「パパはいま柳井お姉さんと食事中だよ。僕たち、旅行に行きたくない」

電話が切れたあと、私はブロックされた。

その父子はわざと私を家の外に締め出した。そのせいで、私は一晩中凍えて過ごした。

前夜の土砂降りも重なって、その晩私は高熱を出し肺炎になった。

それなのに、その父子は柳井麻沙美（やない まさみ）と旅行に出かけ、まるで三人家族のような記念写真を撮っていた。

今度こそ、私はこの結婚が完全に終わったのだと悟った。

……

目を覚ますと、私の鼻の奥は消毒液の匂いで満たされている。

全身どこもかしこも痛み、意識は朦朧として、とてもつらかった。

看護師に聞いて初めて、昨夜家の前で倒れた私を近所の人が運んでくれたのだと知った。

その瞬間、息子である周防晴実（すおう はるみ）の「柳井お姉さん」という言葉が頭に響いた。

麻沙美は夫の周防敬雄（すおう けいお）の初恋だ。

正午どき、病室ではほかの患者と家族の談笑が時おり聞こえてきた。

だが、私のベッドのそばには、誰一人いなかった。

長い沈黙の末、私は敬雄に電話をかけることにしたが、相変わらず出なかった。

インスタを開くと、彼が少し前に更新した投稿が目に入った。

【愛する人と一緒に、一生忘れられない家族旅行へ】

写真には、敬雄と麻沙美が左右から晴実を抱き寄せながら、指でハートを作り、甘く笑っていた。

まるで本物の家族三人のようだ。

私は口元に自嘲気味の笑みを浮かべた。心が冷えないわけがない。

だが、こんな瞬間があまりにも多かったから、もう慣れてしまったのだ。

しかも、私はその投稿に「いいね」まで押してから、スマホを置いた。

その後の数日、私が入院していた間ずっと、敬雄は晴実を連れて麻沙美と遊び回っていた。

退院の日になっても、私は一人で黙々と荷物をまとめ、家へ帰った。

家のドアを開けると、中から敬雄と晴実の楽しそうな声が聞こえてきた。

その父子はソファに座っている。周りにはさまざまな豪華なプレゼントが並んでいる。

私に気づいた途端、二人の表情は冷たく、私を敵のように見下すものに一変した。

以前なら私は何事もないふりをして、自分から声をかけて場を和ませようとしただろう。

しかし、今の私はもう心身ともに疲れ果て、何もしたいと思えなかった。

その時、敬雄は足を組み、不満そうに私を見下ろした。

「玉美（たまみ）、お前どこで遊びほうけてたんだ？

こんなに何日も連絡もよこさず、今になって帰るなんて、母親としてどうなんだ？」

私は訳が分からなかった。

彼は晴実と麻沙美と楽しすぎて、私の何十件もの電話が見えなかったのだろう。

いつもそうだ。彼に非があるのに、最後は全部私のせいにされる。

だから、私はもう争う気にもなれなかった。無意味すぎた。

私の反応を見て、敬雄は、また私がわがままに拗ねていると決めつけた。

彼は軽蔑するような目を向け、ゆっくりと言った。

「玉美、今度は何を騒いでる？

俺と晴実が一緒に旅行に行かなかったくらいで、そこまで怒ることか？」

怒るか？怒るに決まっている。

「あの日は麻沙美がたまたま俺と晴実を食事に誘ったから、飛行機に乗り遅れただけだ。彼女はこの街に身寄りがいないんだぞ？少し付き合って何が悪い。お前だって女だ。そのくらい理解できないのか？」

彼女が身寄りがないなら、私は？

私も両親を早くに亡くし、ずっとひとりぼっちだった。

長年愛してきた男を見つめながら、私はただ見知らぬ人を見るような気持ちになった。

十年の尽力は、本当に報われなかった。

晴実も敬雄に加勢し、私への嫌悪を隠そうともしなかった。

「ママって本当に心が狭いよ！柳井お姉さんみたいに優しくて気が利かないし。ほら、これ全部柳井お姉さんが僕にくれたんだ！

パパを怒らせるだけだし、晴実はママなんかもう好きじゃない！

柳井お姉さんをママにしたい！」

これは、私が宝物のように大切に育ててきた息子なのだ。

それなのに、晴実の中で私は他人以下の存在だ。

なんて滑稽なんだろう。

人の心は鋼でできているわけではない。何度も傷つけば、やがてボロボロになってしまう。

その父子がここまで私を見下すのなら、彼らの望む通りにしてやろう。

次の瞬間、私は迷わずカバンから離婚協議書を取り出し、敬雄の前に置いた。

「離婚しましょう」

そして口を尖らせている晴実に目を向けて言った。「そうすれば新しいママができるわよ」