「ねえ、お隣って買い手決まったの?」
「帰るなり何? もう遅いんだから早く夕飯食べちゃってよ」ただいまの挨拶もせずに尋ねた私に、母は呆れたように声を上げた。気のせいだったのだろうか。もしかしたら空き巣とか……。
母が用意してくれた食事を食べながら、ずっとそのことが頭をよぎった。「彩華、もう遅いから先に寝るから、食器ぐらい洗っておいてよ。お父さんもとっくに寝てるからお風呂は静かにね」
母の言葉に適当に返事をしつつ、私は食事を食べ終えるとそっと家を抜け出した。昔からどうしても気になると確認しなくては気が済まない自分の性格を呪う。
隣の家といっても、かなり遠い正門にはいかず、私はポケットからキーケースを取り出し、視線をそこに落とした。小さな一つの鍵。この数年一度も使ったことのないものだ。隣の屋敷の秘密の小さな扉。昔はお手伝いさんたちの入口だと聞いていたが、今は通いの人しかいなくなり、使わなくなったと聞いていた。
まだ小学生の頃、日向との秘密の通路。その小さな扉に鍵を差し込めば、カチャリと音がした。木の軋む音とともに、そこを開ければ広い庭に出るのだ。花が好きだった春子さんが大切にしていた薔薇園。しかしそこには薔薇はなかった。
枯れて花が咲いていない棘だけが確認できる花壇に近づき、人気のないその家にやっぱり勘違いだったと寂しくなる。「彩華?」
もうずっと聞くことはないと思っていた声が私を呼んだ。それがすぐに誰のものかとわかった自分に驚いた。
「日向……」
ほとんど無意識に漏れたその言葉に、ドクンと胸が音を立てる。誰かがいるかも、そう思ってここにきた。
空き巣かもしれない、と訳の分からない正義感をかざしつつ、心の中でもしかしたら日向がと思ったことは否定しない。しかし、ほとんど百パーセントといっていいほど、日向がいるなんて奇跡……。
奇跡? そこまで思って私は自分が日向と会いたかったことに気づいた。 自ら距離を取り、何も言わずに引っ越していったことを恨んだのに、私は心の中で彼を求めていたとでもいうのだろうか。自分の思考に唖然として、雲がかかり、仄かな月明かりの下立ちすくむ。日向の表情は見えないが、何も言わないことからいきなり家に入ってきた私に驚いているのだろう。
「大きくなったな」
その言葉の後すぐ、雲が晴れ、一気に満月の月明かりが私たちを照らす。そして、庭に一本だけあった桜が風で花びらを散らし、パラパラと舞い散った。
その幻想的ですら感じる光景に、私たちはどれぐらい向かい合っていただろう。真っ黒のパンツに、ホワイトのカッターシャツ。シンプルな装いだが、紛れもなく日向だった。嫌味なほど大人の男性になっており、洗練された雰囲気に圧倒されてしまう。
昔から、綺麗な顔立ちで人気はあったが、今は大人の男性だ。色気すら感じる彼にクラクラしそうだ。「何年たったと思ってるの?」
そんな思いを隠すように、視線を逸らすとなんとか平静を装って声をかける。
「そうだな。彩華が俺を避け始めてからは……もう、八年? いや、九年か?」
十年だよ。そんなことを思うも、私は答えることをしなかった。確かに私から避け始めたかもしれないが、姿を消したのは日向だ。文句を言いたいのは私のほうだ。
そこまで思ったところで、どうして私が文句を言える立場にあるなんて思ったのだろう。そんな非難をできる立場ではない。
私にとっては日向はとても大切な存在だったが、日向にとってはそうではなかったということだ。「どうしてここに?」
その日向の当然の問いに、私は少しどもりながら答える。
「明かりがついていたから、空き巣だったらいけないと思って」
こんな説明信じるだろうか。そう思うも意外にも日向は「そうか」とだけ言った。
「どうしたの? こんな夜更けに」
今度は私が問う番のような気がして彼を見れば、日向はゆっくりと庭を歩き出した。真ん中には噴水があり、小道がある。その少し向こうには白亜の建物があった。
建物自体は昔のものだが、有名な建築家が手掛けたという屋敷は、ガラス張りのサロンに庭へそのまま降りられるテラスがあり、リビングはたくさんの日差しが入る明るい家だったことを思い出す。
そこにヨーロッパ調の家具が揃えられていて、そこで春子さんに、よく二人で本を読んでもらった。そんな懐かしい記憶を思い出し、慌ててそれを消そうと頭を振った。
しかし、日向は小道を歩いて家の方へと歩いていく。「彩華、お父さんたちは大丈夫なのか? こんな遅くに」
くるりと振り返ると、日向はまっすぐに私を見つめた。
「いくつだと思っているのよ。仕事でこれぐらいの日々は普通だし、もうとっくに二人とも眠ってる」
いつまでも小さい子を心配するような日向に、呆れたように答えれば何度か小さく頷いた。
昼下がり、いつもより人の少ない社員食堂の一角。俺は宮島人事部長に時間をもらい、向かい合っていた。彼は50代半ば。几帳面で冷静、誰に対しても一定の距離を保つ人物として社内では知られている。ただその一方で、現場社員の声に耳を傾け、理不尽な異動や評価には必ず疑問を呈する、硬派な“現場肌”の人間でもある。「副社長がこうやって人事の私に話を持ちかけてくるとはな。何かあったんだろうなとは思っていたよ」「正直に言えば……俺は社長と戦おうとしています。組織の流れを変えたい。そのために、宮島さんの力が必要です」単刀直入に切り出すと、宮島は眉間に軽くしわを寄せた。「戦う、か……。それはまたずいぶんと思い切ったことを」「宮島さんも気づいているはずです。ここ数年、会社の方針は現場を無視して突き進んでいる。社員の声は届かず、不満だけが溜まっている。でも、誰も声を上げられない」「それは、“お前の父親”が社長だからだ」宮島は静かに言った。「君自身が長年その“傘”の中にいた。その君が今さら“改革”を言い出したところで……本気だと、誰が信じる?」その指摘は、痛いほど正しかった。俺は今まで、父の庇護のもとで副社長という肩書きをもらってきた。それが現場にどう映っていたか、考えなかったわけじゃない。だからこそ、今、自分の足で立たなければ意味がない。「信じてもらうには、“行動”しかありません。社長が進めてきた無謀な人事や、実態のない外注プロジェクト。調査を進めて形にします。現場の声が、それを支える後ろ盾になる」「……具体的には?」「まず、“営業二課の統廃合”と、“関東支店の一部業務外注化”の件。あれは現場を混乱させただけで、何の改善にもなっていないと聞いています。社長直轄で進められた案件ですが、裏で高木家の関連会社が絡んでいるという情報もある」宮島の表情が変わった。「そこまで調べているのか」「ええ。ただ、俺一人では証明できません。宮島さん、あなたの立場で見えている“実際の社員の声”を、俺に貸してもらえませんか?」しばらく沈黙が続いた。そして――。「……お前、本気でこの会社を変える覚悟があるのか?」問われて、俺は迷いなく頷いた。「この会社で働いていることを、胸を張って言えるようにしたい。それができない会社なら、変えるしかないんです」宮島はじっと俺を見つめ、最後
今朝、彩華は早くに帰っていた。それでも、彼女と入れた時間は俺に気力を与えてくれた。副社長という肩書きは残っていても、もう何の意味も持たない。経営会議から外され、重要な案件の決定権も取り上げられた今、俺は社内で“お飾り”のような存在だ。それでも、まだ終わりだとは思っていない。社内には、父のやり方に不満を持つ人間がいる。数は少ないが、その中で一番のキーマン――坂本部長。かつては経営戦略を担い、社長とも対等に意見を交わせる存在だった。今では意図的に部署から外され、冷遇されている。夜の9時を回った社内。人気の少ない小会議室に、坂本部長と俺、ふたりだけ。「久しぶりですね、副社長」「会議に呼ばれなくなったから、名前を呼ばれることも減りましたよ」皮肉っぽく言ってみせると、坂本部長は薄く笑った。「……まあ、今の会議は聞くだけ無駄だ。社長とその腰巾着連中で、全部決まってる」それには同感だった。俺は黙ってカバンから一枚の資料を取り出し、テーブルの上に置いた。「これ、見てください。社長が極秘で進めている来季の組織案です」坂本部長の表情が変わる。資料に目を落とし、読み進めるにつれて、彼の眉間に皺が寄っていく。「……これは……“戦略室”を直属に? しかも、全権を委ねる構造? つまり、取締役会すら形だけにする気か」「はい。このまま進めば、社長の独裁体制が完成します。反対意見はすべて排除され、組織は完全に息のかかった人間だけで構成される」坂本部長がゆっくりと顔を上げた。「俺のチームがバラバラに異動されたのも……この布石か」「あなたの存在が、父にとっては目障りだったんです」それを伝えるのは少し心苦しかったが、事実だ。「だから、お願いがあります。……俺に力を貸してくれませんか?」一拍、間を置いてから、俺はまっすぐに言った。「社長を取締役会で退陣させます。そのための動議を起こす。証拠も、必要な根回しも始めています。……けど、俺ひとりでは難しい。だから、あなたの力が必要です」重い沈黙が落ちた。けれど、逃げるつもりはない。もしここで退いたら、それこそ全部無駄になる。彩華との未来も、瑠香を守る覚悟も――そのための戦いを、投げ出すわけにはいかない。「……本気なんだな?」坂本部長が低く言った。「はい。俺はもう、父のやり方には従いません」坂本部長が立ち
「帰らないでほしい」――初めて聞いた日向の弱い部分に触れ、思わず頷いてしまったけれど――。今からどうしていいのか、正直よくわからなかった。日向と私は、恋人でも夫婦でもない。けれど、まったくの他人……そういうわけでもない。そんな曖昧な関係の私たち。何かを話さなければ。そう思いつつも、結局リビングのソファに座り、日向が何気なく再生した映画を見つめるしかなかった。けれど、ストーリーはまったく頭に入ってこなかった。日向の気持ちは、こないだ少し聞くことができた。私のことが大切だったということもわかったし、彼にも事情があって姿を消すしかなかったこと。そして今、その原因を取り除こうとして、忙しい日々を送っていること。そんな彼に、私は何ができるのだろう。そう思う反面――泊まるということは、もしかしたら何かあるのかもしれない……そんなことも思ってしまう。……ダメだ、考えるのはやめよう。そう思って、私は映像に集中しようとした。日向も映画に集中しているのか、黙ったまま、目線だけを画面に向けていた。しばらく映像に意識を向けようと頑張ってみたものの――やっぱり無理。触れそうで触れないこの距離が、余計に緊張する気がする。『私はソファで眠るから、日向はベッドで休んで』そう言おうとした。けれど、そのとき――ふっと、右の肩に重みを感じた。「……日向?」思わず小さな声で呼びかけてみるが、返事はない。そしてその代わり、かすかな寝息だけが耳に届く。「寝てる……?」息をのむようにして、私は日向の方を見た。穏やかな表情を浮かべて、今、自分の肩にもたれかかって眠っている。心臓がどくん、と大きく跳ねる。見てはいけないものを覗き込むような気持ちで、私は彼の横顔をじっと見つめていた。長く伸びた睫毛。眠っているときだけが見せる、無防備な表情。昔から大好きだった彼――不意に、胸の奥がきゅう、と苦しくなった。いつも完璧で、誰からも尊敬される日向の、少し垣間見える弱さを知ってしまった今、どうしても彼の隣にいたい。少しでも支えたい。そんな気持ちになる。いなくなってしまった日向を信じるのは、やっぱり怖い。でも、だからといって日向から離れたいとは思わない。「日向のバカ……」そう呟いても、日向は夢の中だ。これで今までのことは許してあげるから、どうか頑張って。そう思
私は冷蔵庫を開け、缶ビールを取り出して、テーブルに置いたグラスと一緒に彼の前へ差し出した。そのとき――ほんの一瞬、指先と指先がふれた。ぴたりと、時間が止まる。一瞬の接触だったのに、体の奥がふわっと熱くなって、思わず視線をそらした。日向は何も言わず、ビールを受け取って、缶を開ける。「……いい匂いだな」温めたおかずから立ちのぼる湯気に、彼がそう呟いた。「冷蔵庫にあるものだけだから、たいしたものじゃないよ」照れくさくて目を合わせずにそう言うと、日向は苦笑しながら箸を手に取った。「そういうのが、いちばんうれしいんだよ」そう言って、一口、煮物を口に運んだ。「……うまい」その一言が妙にあたたかくて、私は思わず口元を緩めた。それからしばらく、食事の音とビールの缶が開く音だけが部屋に響いていた。日向が黙って、でも丁寧にごはんを食べている姿を見るだけで、なんだか安心する。「ちゃんと食べてなかったでしょ?」ふいに口をついて出た言葉に、日向は少し驚いたように箸を止めた。「……バレてたか」「見ればわかるよ。顔に“野菜不足です”って書いてあるもん」少しふざけたように言うと、日向ははにかんだように笑った。「やっぱり、彩華にはかなわないな」その笑顔は、ほんの一瞬だけ――心の奥に張りつめていたものが緩んだように見えた。そして次の瞬間、ふと真剣な表情に変わる。「……なあ」ビールの缶をテーブルに置きながら、日向がぽつりと口を開いた。「今、会社の中でいろんなことが動いてる。俺は、自分で選ぶって決めた。でも、その代わりに――失うかもしれないものもある」彩華、と彼は名前を呼ばなかった。でも、目がまっすぐに私を見ていた。「何かを選ぶって、何かを捨てることかもしれない。だけど……本当に捨てたくないものって、あるんだなって今さら気づいた」私は何も言わずに、ただ黙って彼の言葉を聞いていた。「俺、会社のこと、ちゃんと片付ける。終わらせる。そしたら、ちゃんと話したいことがある」その言葉が何を指しているのか、私はわかっていた。きっと、瑠香のことだ。私たちの未来のことだ。だけど、今はまだ、それを言葉にしなくていい。「……うん。待ってるよ」そう返すと、日向はゆっくりと頷いた。その瞬間、どこか張り詰めていた空気が、少しだけあたたかく溶けていった気がした。
どれくらいの時間、抱きしめられていたのかはわからない。かなり長かったかもしれないし、一瞬だったかもしれない。日向は小さく息を吐いたあと、そっと私から距離を取ると、少し困ったような表情を浮かべていた。「悪い。いきなり」そう言って、日向は私を見下ろした。「ありがとう。食事、作ってきてくれたんだろ?」いつも通りにふるまっているように見えたけれど、明らかに疲れがにじんでいて、私はただその顔を見つめていた。「これ? もらっていい?」私が持っていたバッグに手を伸ばし、それを受け取ろうとする。「あと、どうやって来た? 送っていこうか?」私が何も言わないままなのに、日向は一方的に話し続けていた。「日向」静かに名前を呼ぶと、私の言いたかったことがわかったのか、日向はゆっくりと首を振った。「ごめん」「どうしたの?」いつもの余裕のある日向なら、スマートに「ありがとう」って言って、私を家に招き入れて、「食べたら送っていくよ」なんて、さらっと言い出す気がしていた。なのに今日は、なんとなく避けるような言い方をしながら、突然抱きしめてきたりして、やってることと言ってることがバラバラだった。でも、本気で私がここに来たことを迷惑に思っていないことは、もう私にもわかっていた。きっと日向は、小さいころからずっと、自分の気持ちを隠して、飄々としたふりをして生きてきたんだと思う。でも今は、そんな彼の心の内を、少しは理解できる気がしていた。「正直、少し疲れてる。このまま家に入れたら、俺はきっとまたさっきみたいに、抱きしめたり、甘えてしまう」まっすぐに伝えられたその言葉に、私は思わず笑ってしまった。「いまさらじゃん。いきなり抱きしめておいて、よく言うよ」そう返すと、日向は少し驚いたように目を見開いた。「……それもそうだな」小さく何度か頷いたあと、日向はようやくいつも通りの表情を浮かべた。「瑠香ちゃんは? 大丈夫なのか?」「お母さんが見てくれてる」そう答えると、日向はひとつ大きく息を吐いた。「少し上がっていってもらっていい? 俺、これ温められるかわからない」本当か嘘かなんて、今の私にはわからなかった。でもたぶん、今の私たちには、お互いにとって何かしらの“理由”が必要だった。「わかった」そう言って、私は日向と一緒に部屋へ向かった。日向がバスルームへ
夕飯の時間、私はいつもどおり瑠香にごはんを食べさせていた。今日もよく食べるな、なんて微笑みながらスプーンを口に運ぶ。「もっとー」「はいはい。ちゃんともぐもぐしてね」お風呂に入れて、髪を乾かして、絵本を一冊読んで――瑠香がすやすやと寝息を立てるころには、夜の10時を回っていた。ベッドのそばに静かに腰を下ろし、小さくため息をついた瞬間、ふと日向の顔が頭をよぎった。ちゃんと食事はとれているのか、夜はちゃんと眠れているのか。そんなことばかりが次々と浮かんできて、どれだけ「信じてる」なんて言葉を口にしても、不安はなかなか消えてくれなかった。気がつけば、私はいつのまにかキッチンに立っていて、日向が食べられそうなもの、体力が落ちていても胃にやさしいものを思い浮かべながら、煮物を小さな仕切りに入れ、お弁当箱にそっと詰めていた。なんとなく色どりも欲しくなって、卵焼きを焼き、冷ましてから隣に添える。気がつけば、お弁当が出来上がっていて、私はそれをそっと保冷バッグに入れた。そのまま母の部屋へ向かい、扉の前で小さく声をかける。「ちょっとだけ、出てきてもいいかな」「……日向くんのところ?」母はすべてを見透かすようなまなざしで私を見つめたが、反対の言葉はひとつもなく、静かに頷いてくれた。「瑠香のことは心配しないで」「ありがとう、お母さん」私は小さく頭を下げると、バッグを手にして家を出た。夜の都心に足を踏み入れると、空気は静かで張りつめており、高級住宅街の一角にひっそりと建つ、あのスタイリッシュな低層マンションが視界に入った。そこを訪れるのは、あの夜以来のことだった。建物の入り口にたどり着いた瞬間、ふと以前のことを思い出した。このマンションは、コンシェルジュやセキュリティが非常に厳しく、たとえ宅配業者であっても、住人の許可がなければ中へ入ることはできない。誰にも会わずに玄関先に置いて帰るといったことは、この場所では通用しなかった。何をやってるんだろう、私。家に押しかけるわけにはいかず、勝手に料理を作り、勝手に来て、さらには勝手に置いて帰ろうとしている自分の行動が、思っていた以上に身勝手なものに思えてきた。「はぁ……」深いため息をつき、仕方なく踵を返そうとした、そのときだった。「……彩華?」不意に背後から聞こえてきた声に驚いて振り返ると、マン